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錐(きり)

“片手で錐は揉まれぬ” これは、錐を揉むには両手が必要であるように、力を合わせなければ物事が遂行できないということをたとえたことわざです。
このように、ことわざにも使われる身近な錐ですが、その一方で、「一錐、二鉋、三釿」と昔から道具使いの難しさには表現されてきました。錐を使う仕事は、穴を開ける作業が肉体的にきついというだけでなく、有効な釘留めをするために穴の位置、大きさ、深さ、方向を決めなければならないという力学的な判断力が必要であることからこのようにいわれているのです。

さまざまな錐

錐(きり)は、鋭く尖った刃を回転させて部材に穴を削り出す道具です。三つ目錐、四方錐といった錐は、刃の軸部に沿って角ばった稜線がありこれが回転によって穴の周辺を削りとります。鼠刃錐、壷錐などは、刃先先端で穴を切り出していきます。

■揉み錐の刃先


三つ目錐


四方錐


鼠刃錐


壷錐

明治になって建物にボルト接合が使われるようになると、釘より太くて深い穴をあける道具が必要になってきます。ボールト錐、ハンドル錐などが、このために使われるようになりました。これらの錐の刃は、今までの錐と違い、一方向に回転運動をします。刃の先端で穴を削りだし、スパイラル状に加工した刃の軸部に沿って切り屑を排出するという2つの機能を同時に行なえるようになっています。


ボールト錐


ハンドル錐

錐をつかう

錐で穴を開けるには、尖った刃を取り付けた柄を、両手に挟み交互に摺りあわせ(揉むという)ながら刃先に往復回転運動を与え部材に押しつけていきます。
また、一人前の大工の条件としては、錐を砥ぐことができる必要があります。たとえば、三つ目錐、四方錐では、先端が回転の芯にあり、正三角形、正方形に研げなければなりません。
ヨーロッパ、中国では回転運動に慣性力を利用した舞錐や、また回転軸部に紐を巻つけてこれを交互に引くことによって回転させる弓錐などがよく使われています。


揉み錐をつかう


舞錐


弓錐と刃先

歴史的な背景

比較的柔らかく薄い材料は先の尖った刃物を突き通したり、叩いたりすれば簡単に穴が開きますが、硬い材料、深いあなを開けるには少しずつ削り出すことが必要です。
一方、人類は棒状回転運動の摩擦熱で火を起すという知恵を早くから持っていたことから、尖った刃物を回転させて削ることが考案されたと思われ、石や骨に穴を開けるために錐のような道具が存在したと考えられています。
古い木工具としては正倉院に納められている奈良時代の揉み錐、打ち込み錐があります。

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