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竹中工務店

寒川神社 管理棟 休憩所 鎮守の杜「Koyo(紅葉)」

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設計担当者の想い

垣谷 伸彦竹中工務店 東京本店 設計部

初めて寒川神社に足を踏み入れた時に感じた、建物単体ではつくり得ない、神社総体として醸し出す空気感がいまだに忘れられません。いにしえから神職・大工がつくり上げた歴史と、代々の担当者から受け継いだ環境の重みを感じ、神社という日本固有の環境をいかに守り、人の憩う環境をどのようにつくるか、多くのことを考えさせられるプロジェクトでした。

プロジェクト概要

建築地 神奈川県高座郡寒川町宮山
建築主 (宗)寒川神社
設計施工 竹中工務店
建築面積 管理棟 420㎡ 休憩所 350㎡
延床面積 管理棟 1,217㎡ 休憩所 489㎡
構造/階数 管理棟 RC/B1,F2 休憩所 S/F2
工期 管理棟 2012.6~2013.10
休憩所 2013.9~2013.12

深い杜の環境を宿す境内

寒川神社は相模国一之宮と称され、1,500年以上の歴史を持つ式内社であり、八方除の守護神として信仰されています。当社は、2005年の「神嶽山神苑整備」(他社設計)から継続して境内周辺整備に携わってきました。

今回新築した「管理棟」は、これまで神社で長く使っていた管理業務機能を担う既存の木造建物群を統合し、併せて周辺のインフラ再整備を行う計画です。神社境内に隣接する駐車場内に設けられた「休憩所」は、お土産売場と軽食喫茶を持つ休憩施設です。今後も「宮司棟」の建替など、継続した境内周辺整備が計画されています。

式内社=平安時代に既に由緒がある神社として知られた社を選定した「延喜式神名帳」(905〈延喜5〉年に藤原時平によって編纂〈へんさん〉が始められた延喜式の巻九、十のこと)に記載のあるもの。

環境と対話した境内整備

当社は、境内周辺でのさまざまな整備を通じ、長い歴史に育まれた深い杜(もり)の環境と向き合い、環境を「まもり」、環境に「すまい」、環境に「憩う」ことに継続して努めてきました。

「太鼓橋周辺整備」では、境内入口に当たる神池の景観整備と併せて、新たに「神池橋」と命名された太鼓橋を架け直し、神社の顔となる環境をつくりました。「参拝者トイレ」(2009年「公共の色彩賞」受賞)では、緑豊かな境内環境の中に控えめにたたずむ建物の在り方を追求しました。「二の鳥居耐震補強」では、鳥居の姿形を維持し、当社初となる既存RC造鳥居の曲げ鉄板補強工事を実現しました。「納札殿」では、伝統建築群に寄り添う在り方として、総桧(ひのき)造りとするなど、神社の環境と常に対話してきました。

環境をまもる管理棟

「管理棟」は、神社の表の顔となる「客殿」や「本殿」などの伝統建築群による神社機能を守るための施設で、作業場・倉庫などの管理業務機能を持つ建物です。機能的に必要な内部ボリュームを確保しながら、境内環境の中で目立つことの無いように、軒高さを下げ、小庇によりボリュームを分節し、伝統建築群の背景となる端正な外観を目指しました。

外観を形成する要素として、1階部分は周囲の樹木と呼応する杉板本実型枠によるコンクリート打放し仕上げとし、2階部分は伝統建築群の白壁を意識した白塗装を施し、開口部や外部階段には御簾(みす)をイメージさせる格子の目隠しを設け、陰影による意匠に収斂(しゅうれん)させました。

環境にすまう休憩所

「休憩所」は神社に隣接し、その杜の豊かな緑を望むことができる環境の中にあります。その環境を生かして、建物内部からは神社の杜をインテリアとして取り込み、外部からは中の店舗機能を視認しやすいように、ガラス面を大きく取った構成としました。

1階のお土産売場及び2階の軽食喫茶など参拝者スペースは神社に対して開き、神社の杜を最大限に享受した心地良い環境にすまう休憩所を目指しました。

環境に憩う滞在空間

休憩所2階の軽食喫茶は3方をガラス面で解放し、緑豊かな環境に憩う滞在空間をつくりました。1階の庇を大きく延ばすことで、下への視線を遮り風景を切り取って、客席からは杜の緑だけを眺めることができます。

屋外テラスからは眼前に杜が広がり、春には桜、初夏には新緑、秋には紅葉を楽しむことができ一年を通じて花の香りや鳥のさえずりが感じられます。

環境をつなぐ軒下空間

休憩所1階のお土産売場の前に、神社とのつながりを意図して設けられた軒下空間は、緩やかな勾配に設えた多様な中低木から成る混ぜ垣が、神社境内との間にある前面道路と通行車の存在を消し、神社の杜と休憩所の環境をつなぐ役割を果たしています。秋には、休憩所の名称である「Koyo」の名の由来ともなっている紅葉(もみじ)が神社の杜に更なる色を添えます。