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竹中工務店

三井ガーデンホテル京都新町 別邸

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設計担当者の想い

小林 浩明竹中工務店 大阪本店 設計部

設計者間の密接な連携や、作業所の深い理解と協力によってデザインが進化することを改めて実感しました。また、建築主や事業主をはじめさまざまな立場の関係者全員に強い一体感が生まれたことは、このプロジェクトを進めるうえで大きな支えとなりました。担当した一人として、いつまでも人々に愛される建物であって欲しいと願っています。

プロジェクト概要

建築地 京都市中京区新町通六角下ル六角町361
建築主 (株)大丸松坂屋百貨店
設計施工 竹中工務店
基本構想 アーキテクツオフィス
設計監修 S&T FIVE STAGE
内装設計 竹中工務店+三井デザインテック
レストラン
設計
永山祐子建築設計
造園設計 荻野寿也景観設計
建築面積 1,200㎡
延床面積 5,528㎡
構造/階数 RC/B1,F5,P1
工期 2012.11~2014.2

歴史を継承・再生する

江戸時代から建築主によって継承されてきた京都・新町通の商家をホテルへ建替える計画です。呉服店の歴史を「保存・再生・復元」すること、そのために土蔵の保存活用、京町家の外観復元、小屋組や庭石など古材の再活用を盛り込んだ基本構想を尊重して設計条件に取り込みつつ、「京都らしさ」のある魅力的なホテルをつくることがテーマとなりました。
高層部の外壁は墨色のRC化粧打放し仕上げとし、切妻屋根とともにボリューム感を緩和し周辺へのなじみに配慮しました。忠実に復元した京町家に、街並みへの敬意と歴史継承の意思を込めました。

記憶を宿すエントランス

入口の暖簾(のれん)をくぐると木格子の自動扉が開き、小屋組と坪庭のあるエントランスホールが現れます。この小屋組は商家の「火袋」と呼ばれる部分を移築したもので、これを支える柱の1つはかつての大黒柱です。坪庭の庭石や石灯籠も古材を移設したものです。
ロビーに向かう前の一瞬、静かな空気の中に身を置くことで、この地の記憶を体感し、旅の高揚感がかき立てられることを意図しました。

「京の邸」としてのホテル

インテリアは全体的にシンプルでモダンなテイストとし、そこに日本建築を想わせる繊細なディテールを配しました。分節された空間が連鎖し展開する構成とすることで、ホテルらしい豊かさとともに、歩みを進めるにつれて邸(やしき)を訪れるような期待感や奥行き感、そして京都らしさを感じられることを目指しました。
1階のロビーと各階のエレベーターホールには、彫刻家・小清水漸氏制作のアートを配置しています。これは商家の古材を切り出し、そこに建築主所蔵の小袖の紋様を彫刻と彩色で転写したもので、京の「粋(いき)」を演出する要素として内部空間に彩りを添えています。

再生された土蔵

築100年を超える土蔵は耐震診断・構造補強工事を行った後、レストランの「はなれ」に再生しました。またこの土蔵へのアプローチは、茶室の露地に見立てて作庭することで「はなれ」を特別な場所として演出するとともに、客席から眺める「坪庭」としての役割を担わせ、レストラン空間に奥行き感を与えています。

現代の坪庭

このホテルには庭が点在しています。その中で最も大きい中庭は他の庭とは異なり「現代の坪庭」であることを目指すため、あえて古材を用いず、高さ15mの漆喰(しっくい)壁を背景に表情豊かな緑を配しました。造園家とともにさまざまな見え方やライティングなどの検証を行い、建物と庭との調和、一体感を追求しました。

「京都」の香る客室

客室は、ホテルとしての現代的な機能性・快適性だけでなく、「『京都にいる』と感じられる雰囲気」が付加価値として求められました。このため、障子窓や飾り棚など伝統的な意匠を取り入れながら、各所のおさまり形状を現代的に再解釈してシンプルなものとし、素材の使い分けを整理するなど、無駄な要素や線を排することで、京都らしくもモダンで上質な空間を目指しました。