「子どもと築く復興まちづくり」は、当社が、2012年より公益財団法人日本ユニセフ協会、山形大学と協働で実施している、東日本大震災による被災地の子どもたちの成長支援を通じた復興カリキュラムです。
東日本大震災を受け2011年7月に実施された社内コンペ(環境シンポジウム2011)で、本カリキュラムが従業員から提案され、社外発信されました。それをきっかけに、同年8月、こども環境学会主催の被災地支援国際コンペで最優秀賞を受賞し、同コンペの協力者である日本ユニセフ協会から委託を受けて活動を開始しました。

2011年7月に開催された環境シンポジウムの様子(左:基調講演、右:発表の様子)

子どもと築く復興まちづくり 誕生背景

東日本大震災の大津波により、多くのまちが壊滅的な被害を受け、長期にわたる復興・まちづくりを強いられることとなりました。
当社は「子どもたち」も復興事業の主役だと考えます。
一見元気そうに見える子どもたちも、進まない復興や仮設での生活により、『カラダの居場所』を失っています。また、子どもたちには「自分たちも、ふるさとの復興・まちづくりに参加したい」「将来暮らしていくふるさとを、こんな風にしたい」という想いが強くあり、これらの想いを尊重することで、『ココロの居場所』をつくってあげることも大切です。子どもたちが復興のプロセスに参画し、自分たちの声を反映させることができれば、『カラダとココロの居場所』の再生につながり、ふるさとへの愛着・未来への希望が育まれます。そして、成長しておとなになった子どもたちが、まちづくりの力となり、ふるさとの復興を牽引してほしい ― そのような期待を込め、「子どもと築く復興まちづくり」は誕生し、現在も支援活動を行っています。

東北地方での活動概要

「子どもと築く復興まちづくり」は、全ての学齢の子どもを対象とした4つの支援メニューを用意しています。
幼児には「復興・冒険遊び場」としてプレーパークなどの外遊びができる居場所を提供します。小学生(児童)には「復興・子どものまち」での職業体験イベントや、「復興・まちづくり学習」のワークショップを通じて、新しいまちの姿を考える機会を提供します。そして、中学生(生徒)には、ワークショップ等で描いた自分たちのまちの姿を、実際の復興事業に提言・反映していく「復興・ふるさとワーク」の機会をつくっていこうとするものです。
学齢が上がれば、新しい支援メニューに参加してもらえるようにしており、多くの子どもたちの継続的な成長支援、復興参画を目指しています。
2012年以降、震災で大きな被害を受けた岩手県大槌町、宮城県石巻市、仙台市において、各支援メニューごとに地域のニーズに即したプログラムを立案し、実施してきています。

1-① さとやままるごとプレーパーク(岩手県大槌町)
    活動期間:2014年~(活動継続中)

震災直後に深刻化した子どもたちの“遊び場”の不足。2014年から2015年にかけて「子どもと築く復興まちづくり」の支援メニューの一つである「復興・冒険遊び場」の一環として、思い切り体を動かせて、自ら遊びを考えるプレーパークを3回開催しました。その後も、大木にわたしたハンモック等の手づくり遊具を残したままで開放しており、ふるさとの自然を全身で感じながら「なんにもないけど、なんでもできる」子どもたちの居場所になっています。

2-① 子どものまち・いしのまき(宮城県石巻市)
    活動期間:2012年~(活動継続中)

「子どものまち・いしのまき」は、宮城県石巻市の津波で被害を受けた商店街を舞台に、地元とボランティア団体が主催する職業体験イベントです。有志の子どもたち自らが、子どものまちでの “お仕事” を企画し、子ども店長として運営も担います。当日参加した子どもたちは、やりたい仕事を選んで、もらった “お給料(独自通貨)” で買い物ができます。
いわば、大掛かりな「ごっこ遊び」ですが、実際のまちや経済の仕組みを、楽しみながら学ぶことができます。震災の翌年から毎年10月に開催しており、今年(2017年)で6回目を迎えました。リピーターの子どもたちが多く、天気がよければ千人以上が参加する、地域の恒例行事になっています。

3-① 未来の教室を考えよう(岩手県大槌町)
    活動期間:2012年

大槌町の中心部は、津波で壊滅的な被害を受けました。町内の4つの小学校も被災し、小学生は仮設校舎で一緒に学ぶ環境を強いられました。そこで、大槌町は小中一貫校「大槌学園」の新設を決定。
これを受け、4校の小学5年生を対象に「未来の教室を考えよう」ワークショップを行いました。大槌町に働きかけることで、子どもたちが模型で表現した、新しい学校への想いやアイデアを、新設校の設計に反映してもらいました。新校舎は2016年に完成しています。
なお、私たちの活動を知った作家が、ワークショップに参加した子どもたちを丁寧に取材した児童書「ぼくらがつくった学校 ~大槌の子どもたちが夢見た復興のシンボル~」(著者:ささき あり、佼成出版社)が出版されており、2017年度の児童ペン賞(ノンフィクション賞)を受賞しています。

撮影:日本ユニセフ協会

3-② 未来の七郷まちづくり(宮城県仙台市)
    活動期間:2012年~(活動継続中)

仙台市も、沿岸部が津波による被害を受けました。七郷小学校は大きな被害を免れましたが、子どもたちは、様相の一変したまちを目の当たりにしています。また学校周辺では、震災前から土地区画整理事業が進んでおり、一部は防災集団移転促進事業の移転先となりました。
そこで、実際にまちづくりが進むこのエリアの将来像を、七郷小学校の6年生に考えてもらう「未来の七郷まちづくり」ワークショップを行っています。完成した模型は、発表会で保護者や地域の方に披露しています。担当の先生からは「5年生以下の子どもたちは、6年生になって、このワークショップに参加することを楽しみにしている」と伺っています。
また、毎年、当社東北支店のギャラリーで、市民向けの模型展示会も開催しています。2015年には、仙台市で行われた国連防災世界会議に合わせた特別展示を行い、外国人を含む多くの来訪者に対して、子どもたち自ら、まちづくりへの想いやアイデアをプレゼンテーションしました。

3-③ 新門脇地区公園づくり(宮城県石巻市)
    活動期間:2015年~2017年

復興土地区画整理事業が行われている石巻市新門脇地区に新しくつくられる、3つの公園計画に、子どもたちの意見を反映する取り組みです。
津波に伴う火災で全焼し、2015年3月に廃校となった門脇小学校。その卒業生が通う、門脇中学校の1年生約80名に「新門脇地区公園づくり」ワークショップを行いました。子どもたちは、当社従業員を含むまちづくりの専門家からのレクチャーや、自らの調査を通して、自分たちの想いやアイデアを模型で表現し、発表会で保護者や行政(国土交通省、石巻市等)の方々に披露しました。
この成果を単なる提言で終わらせないように、当社が協力して、子どもたちの考えを反映した基本計画を策定し、事業を進めている都市再生機構の理解と協力をいただきながら、実際の公園整備に反映しました。

中学2年生になった2016年には、ハンギングバスケットづくりと花壇の色彩デザインを学びました。中学3年生になった2017年には、3つの公園の中で最初に整備される「かどのわき西公園」で、新しいまちの住民の方々と一緒に、自分たちの手で花壇づくりを行いました。同年8月には公園の完成披露会が開催され、自治会長さんから「子どもたちが考えてくれた公園は居心地がよく、ばらばらの仮設住宅から集まってきた住民たちのコミュニティの場になっている」との言葉をいただきました。
中学3年間を通じて生徒たちの成長を支援した本プログラムは、子どもを対象とした建築や都市環境の優れた教育活動に送られる、JIA日本建築家協会 ゴールデンキューブ賞2016/2017(学校部門)を受賞しています。

2017年8月19日、子どもたちが考え、花壇づくりも行った「かどのわき西公園」が、地域住民にお披露目されました

VOICE  東京本店営業部 岡田暁子 / 開発計画本部 岡田慎

前を向き、歩き始めているこどもたち(提案者からの謝意と今後の抱負)

2011年3月11日(金) 14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震は、沿岸部を中心に未曾有の被害をもたらしました。本活動は、東日本大震災を受けて行われた従業員が対象の社内コンペにおける、私たちの提案内容を実践させていただいたものです。

震災の発生当時、私たちは東京の自宅で、次々に報道されるまちの姿に言葉を失っていました。そして、子どもたちが避難所でみせる無邪気な笑顔が、自分たちの子どもの姿と重なり、さまざまな思いがこみ上げてきたことを覚えています。

一見元気にみえる子どもたち。でも胸には大きな不安を抱えているだろう。
そして、ふるさとの何たるかも実感できずにすべてを失った子どもたちは、これから大きな喪失感に襲われるのではないか。
いま私たちおとなたちがすべきことは、被災地の子どもの気持ちを思い、彼らの元気を取り戻し、新たなふるさとづくりを牽引できるように成長の手助けをしてあげることではないか。

そのために、まちづくりの専門家である私たちには、なにができるだろうか。そんな自問の中から生まれた支援カリキュラムが「子どもと築く復興まちづくり」です。提案内容に共感いただいた日本ユニセフ協会から依頼を受け、山形大学の佐藤教授と一緒に、被災地の子どもたちの成長に寄り添ってきました。このことは、私たちの小さな誇りではありますが、行政やNPO、企業、地元団体といった多くの方々の賛同、協力をいただかなければ実現できなかったことです。改めて、心より感謝を申しあげます。

喉元過ぎれば熱さを忘れる ― 風化という言葉自体も風化するほど、多くの方は、目の前のあわただしさに忙殺され、あの日のこと、あの時の気持ちに思いをはせることもなくなっているかもしれません。しかし、被災地の子どもたちにとっては、つらい現実を小さな体で受け止め、なんとか立ち上がり、そして前を向いて歩き始めた6年間でした。本特集を通じて、そんな子どもたちの姿が伝われば嬉しく思います。

本活動には、年を追うごとに、多くの当社従業員が参加するようになりました。それぞれの想いや専門性を活かして協力することで、活動に広がりがうまれていきました。大げさかもしれませんが、当社の「総合力」が発揮されてきたのです。試行錯誤の連続でしたが、皆が知恵を出し合って乗り越えていくことで、新しい知見も得られたと思います。

引き続き、子どもたちの成長とまちの復興に寄り添っていくことはもちろん、本活動で得られた知見を社内で共有し、広く市民参加型の都市再生プロジェクトや、将来予測されている大規模災害からの復興支援プロジェクトにも活かしていきたいと考えています。

最後になりますが、本特集をご覧くださった皆様が、「まちづくり総合エンジニアリング企業」を目指す当社の、目に見える“技術” の根底にある “こころ(従業員たちの想い)” の一端を感じていただけたならば、幸いです。