※木のイノベーションで森とまちの未来をつくる 1回目記事 「木造・木質建築への取組み」はこちら

当社は2011年、耐火性能を持つ木材「燃エンウッド®」を開発し、国土交通省認定を受けました。当社が社会課題解決に向き合うなかで、どのようにして燃エンウッド®の開発に至ったのか、また技術開発を通して描く将来の森林グランドサイクルについて、紹介していきます。

あまり知られていない「木の特性」

皆さんは、「木=燃えやすい」というイメージをお持ちではないでしょうか。
実は、木は熱に強い材料なのです。
木は260℃を越えないと炭化・燃焼が始まりません。また燃え進むスピードは1分間に1mm程度のゆっくりしたものなのです。

当社はこのような「木の特性」を活かし耐火性能を持った木の構造部材を開発できないか研究を重ねました。 木材の中に「燃え進むのを止められる材料」を埋め込み、柱や梁の部分を火災時の熱から守ることはできないか…? このような考えから、耐火集成材「燃エンウッド」が開発されました。

耐火集成材「燃エンウッド」

「燃エンウッド」は、積み重ねられた板(ラミナ)を接着剤で一体化した集成材と呼ばれる「荷重支持部」に、耐火性能を付与するための「燃え代層(もえしろそう)」と「燃え止まり層」を表面に貼り付けた耐火集成材です。火災が発生した場合には、最外層の「燃え代層」が断熱性能の高い炭化層になり、内部への燃焼進行を抑制します。また、「燃え止まり層」のモルタルで熱を吸収しながら完全に燃焼を停止させ、部材の中心部にある「荷重支持部」を火災から安全に保護します。燃エンウッドは、集成材メーカーの齋藤木材工業のご協力のもと開発され、日本を代表する樹種であるスギ、カラマツ、ヒノキに対応し、14階建てまでの木造建物を建てることが可能となりました。

動画コンテンツ「スペシャルムービー」で、燃エンウッドについての動画「スミツボじいさんの建物教室〜燃エンウッド篇~」が掲載されています。ぜひご覧ください。
動画コンテンツ「スペシャルムービー」ページへ

VOICE  齊藤木材工業株式会社 代表取締役会長 齊藤廣様

私たちは、「割れる、狂う、ねじれる、ヤニがある」等欠点ばかりのカラマツを有効活用するべく、昭和50年代後半に大規模木造建築物へ使用される信州カラマツ構造用大断面集成材の製造に着手し、カラマツ材を大量に利用できる体制を確立しました。
そのノウハウによって、お客様の木造建築物の建設において「地域木材の活用」を推進・実行しております。
木材活用推進の目的は「お客様の木材を利用したいという要望」に応えることに加えて「地域の木材を有効活用し、地域に還元することで地域経済を活性化させる」という循環型社会の構築を実現させることにあります。

現在、森林を取り巻く課題は
・森林所有者の経営意欲の低下、素材生産に携わる担い手の不足
・所有者不明の森林の増加、境界未確定の森林の存在
・森林整備体制の弱体化による、二酸化炭素吸収能力低下(環境問題)
など多数存在していますが、当事者(林業経営者、木材加工業者等)が解決するには問題が大きすぎることもあり、対策が行き届いていないのが現状です。
平成31年度に森林環境譲与税(※1)が創設・スタートされますが、素材丸太の生産量増加が見込まれるのみであり、森林課題を解決するきっかけになるに過ぎません。出口対策である木材の有効利用・活用が必要です。
つまり、これらの問題を解決するには、地域の森林における「循環型社会」の構築が求められます。竹中工務店さんの「森林グランドサイクル」の考えと同様、森林の適切な管理・木材の適時伐採・木材の有効活用・元の森林への還元をサイクルで行うことにより、環境の貢献、地域産業活性化に寄与するのだと考えます。

この「循環型社会」を構築するために、私は竹中工務店さんのような企業に、山を知ってほしい、山元と対話をしてほしい と思っております。

現在木材を活用したイノベーションは、木造中高層建築物を実現する技術開発、木材におけるBIM/CAM技術の開発による生産時間短縮の実現(※2)、セルロースナノファイバー関連技術の開発等、著しい進化を遂げています。しかしこれらの技術を開発・進化させるにあたっても、「山元の活性化に還元されているか」「どの木材を伐採し使用するのが適切か」を把握することが、更なるイノベーションを生み出し、進化させるために必須となります。つまりは「山をコーディネートできる・山を知る」ということが、木造木質の推進には欠かせないのではないでしょうか。
そこで私は、構造設計・意匠設計とともに、「山のアドバイザー」を存在させることにより、経済設計できる、我々と近い感覚を持つ人材が育成されより木造木質推進の加速化・イノベーションの創発がされると考えます。

今後、竹中工務店さんが木造木質を推進・燃エンウッドの更なる開発・さらには森林グランドサイクルを構築していくために、これらを実行されることを、私たちは期待しています。

※1 出典:「森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)の創設」
林野庁HPより 林野庁HPへ

※2 当社は、燃エンウッド生産・燃エンウッドを用いた設計過程においても、更なる木材活用イノベーションを図り、BIM/CAM技術を導入しています。
なお本件について、「竹中コーポレートレポート2017」では、斎藤木材工業(株) 取締役部長の齋藤潔様よりご意見・ご感想を頂いております。
コーポレートレポートページへ


「燃エンウッド」の活用で目指す未来

燃エンウッドを活用することにより、都市部での木造建築の推進が大いに期待できます。
またこの推進が、森林再生・林業の復活に加え、地域経済の創生・振興、さらには地球温暖化といった社会的な課題の解決の一助となると考えています。

しかし、燃エンウッドの活用だけでは、課題解決には至りません。
パリ協定で定められた日本の2050年時のCO2排出目標について、「CO2排出量=森林等による吸収量」と定められていることからも、森林管理・保全が課題となっている日本において、この問題に着手しなければならないことを意味します。



だからこそ、「植える」→「育てる」→「収穫する」→「上手に使う」→「植える」…の「森林サイクル」とともに、このサイクルを活用した経済と資源の大きな循環である「森林グランドサイクル」を進める必要があるのです。

私たちは、より多くの木材利用を促すために、燃エンウッドの技術の一部を公開しています。

2018年3月に竣工した、東京都江東区有明の有明西学園では、「森林グランドサイクル」を展開すべく、長野県産カラマツを使った燃エンウッドの柱・梁をはじめ、全国の様々な国産木材を用いました。

江東区立有明西学園で使われているさまざまな国産木材

木の回廊ほか壁部分 北海道産カラマツ
壁(準不燃)部分 静岡産スギ
昇降口の天井(小学校) 宮城県産スギ
昇降口の天井(中学校) 兵庫県産スギ
バルコニー軒天井 秋田県産スギ
床フローリング 北海道産カバザクラ

そして当社のこれらの取り組みが林業・製材各団体から評価されて、2018年4月に「日本の森林を守るため共に行動する企業」の認定を受けました。
2018.04.16 「日本の森林を守るため共に行動する企業」に認定されました

当社は今後も、国産材利用促進などにより「森林グランドサイクル」を展開し、地域経済・環境双方に貢献して参ります。