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「名古屋 蝶の飛ぶまちプロジェクト」2010・11年度調査中間結果公表

~市街地のプランターが蝶を誘引し、繁殖に寄与することを確認~

リリース

2012年6月28日
株式会社竹中工務店

株式会社竹中工務店(社長:竹中統一)は、2010年4月から12年10月までの約3年間、名古屋市中区で「名古屋 蝶の飛ぶまちプロジェクト」として蝶の誘致に有効なミニビオトープとなる食草・食樹・蜜源植物を植えたプランターを設置して調査を実施しており、本調査の結果、都市域のプランター程度の小規模な緑地でも食草・食樹を植栽すれば蝶の繁殖に有効であることや、成虫の餌となる蜜源植物が蝶により好みが分かれたり花によっては蝶を誘引しないことなどが確認されました。
本調査では、プランターが蝶の生息域の拡大にどの程度寄与しているかの定量的な把握には至っていませんが、蝶の休息場所、採餌場所や繁殖などに利用されており、コア緑地間の中継地点になっている可能性が示唆されました。

プランターに誘引される蝶の様子
屋上プランターで成長する幼虫
名城公園の蝶

今回の分析結果は都市の緑地をつないで生物の移動を可能にする都市生態系ネットワークづくりに役立て、人と自然が共生できる都市環境づくりに向けて活用していきます。

【「名古屋 蝶の飛ぶまちプロジェクト」調査概要】

(調査開始時リリースURL:http://www.takenaka.co.jp/news/2010/01/03/index.html

■調査目的

都市の再開発やまちづくりにおいて、点在する緑地同士をつないで生物の移動を可能にする都市生態系ネットワークづくりが注目されています。蝶は種類により行動圏が決まっているため、遠くまで移動する際には生息場所、休息場所や採餌場所となる中継地点(飛び石となる地点)が必要です。今回プランターを設置することで、中継地点になるかどうかの可否を含めて調査を実施しました。

■調査方法

都心部の比較的まとまった緑地で蝶の生息場所(供給源)である名城公園周辺と白川公園の2つのコア緑地を中心に行います。両公園間の距離は約2kmあり、蝶の行動圏を考えると行き来しにくい環境でした。事前に行った生物調査や文献に基づき調査対象種を設定し、ミカンやアザミなど約20種類の食草や蜜源植物を植えたプランターを両公園からの距離が適度にばらつくような場所に設置し、蝶の飛来の有無を調査。

期間 毎年4月~10月まで
回数 毎月2回の調査 2010年度は計14回、2011年度は計13回実施
地点 プランター設置箇所 10年度10箇所、11年度11箇所+既存緑地(5箇所)
内容 食草・食樹・蜜源植物において、蝶類の種名、個体数、確認ステージ(卵・幼虫・蛹・成虫など)、行動(止まり、飛翔、吸水・吸蜜など)を目視により確認。
その他 天候は蝶が活発に動く主に晴れの日に行いました。
調査地点の回り方について、調査回毎に順番をずらし、調査時間帯が偏らないようにしました。

プランター設置場所

【調査結果分析】

■蝶の繁殖について

都市域の小規模な緑地でも食草・食樹を植栽すれば蝶の繁殖に有効であることが確認されました。
2010年度に卵・幼虫・さなぎなどの繁殖が確認された種数に着目すると、プランター設置箇所での確認種数は概ね3~5種でした。一方、既存緑地5か所での繁殖確認種数は多い緑地から順に7種、7種、6種、3種、0種でした。今回設置されたプランターの植物は、食草・食樹を重視して植栽し蜜源植物の割合は少なかったため、飛翔確認できた種類自体は多くなかったものの、既存緑地に比べて成虫の種数に対する卵・幼虫・さなぎの割合が多くなりました。

■都市域での蝶の移動・分散にプランター植栽が与える影響

蝶の移動・分散はコア緑地(名城公園や白川公園などの大規模な公園)から2kmの範囲内では飛び石効果によって分散するのでなく、全域にランダムに飛来し分散することがわかりました。また、プランターには蝶を誘引する効果はありましたが、確認された種構成の類似度の分析等からは蝶の移動を助ける飛び石としての効果の定量的な把握には至らず、今後引き続き飛び石効果の把握に取り組んでいきます。

■蝶が蜜源として利用した植物の種類

蝶の科によって利用される花にかなり違いがあることも、また花の中にもいずれの蝶種も利用しない植物もあることも確認されました。
プランター設置箇所では採用した蜜源植物の種類が限定されましたが、「ブッドレア」と「ランタナ」は蝶種を問わず広く利用されていました。一方、ヤマトシジミのみが、「カタバミ」、「シロツメクサ」、「アザミ」も利用していることなども観察されました。また、コア緑地では、草本類や木本類を問わず四季折々の極めて多様な蜜源植物や樹液が利用されていることが確認されました。

■蝶の出現種数

コア緑地の配置の影響が大きく、規模(面積)は影響しないことがわかりました。

【中間結果を受けた2012年度の取組】

12年度の課題としては、都市域での蝶の移動・分散に影響する要因のさらなる分析が必要であり、確認種と微細な環境(隣接するビルの高さや日照など)の関係なども引き続き分析していきます。また、2011年までの検討結果を検証するために、2012年は既存緑地から2km圏外にもプランターを設置して調査を継続していきます。

【調査結果】

■各調査点で確認できた蝶の種類(2年間の累計)   【凡例】○:飛翔を確認、◎:繁殖を確認

調査結果

【蝶を指標とする理由】

■蝶の種類別にみる植物との関係

蝶は成虫が吸蜜に利用する植物(蜜源植物)や、幼虫が食べる植物(食草・食樹)が種類ごとに決まっています。本調査では、名古屋市に飛来しうる約24種の蝶が好む植物を約20種類植えています。そこに飛来する蝶の種類や個体数と周辺の環境との関係を調べることで、どのような環境を整えれば周辺の生態系拠点から蝶の誘致が可能になるのかを明らかにします。

■蝶を指標にするメリット

蝶は、環境の豊かさの指標生物として注目されています。すなわち、蝶の種類が多ければ、その地域は環境汚染が少なく、自然が豊富で、環境が多様であるといえます。逆に、緑が多いのに多種類の蝶が確認できなければ、その地域は環境が単調で、多様さが少ないと予想されます。また、蝶がすみやすい多様な環境は、他の生きものにとってもすみやすい環境といえます。

■調査を実施するに至った背景

近年、生態系の保全や回復の取組が国内外で進展してきています。生態系サービス(自然の恵み)を多く受け取っている都市においても例外ではなく、持続的発展のためにも生物多様性に配慮した都市づくりに的確に取り組んでいく必要があります。名古屋で2010年に開催されたCOP10で採択された「愛知ターゲット」では、社会経済活動全体を通じ、多様な主体に広く効果的な実践が求められています。都市の自然環境の保全・再生に努力し、人と自然にやさしい都市環境づくりを行っていくことは、都市の持続可能性を高め、地球全体の持続可能性にも貢献すると考えられています。