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わが国初の鉄道高架下ホテル「ホテルドリームゲート舞浜」が完成
~東日本旅客鉄道、竹中工務店が開発した「吊り免振工法」の第1号プロジェクト~

2004年2月26日
東日本旅客鉄道株式会社
株式会社ジェイア−ル東日本建築設計事務所
株式会社 竹中工務店
鉄建建設株式会社

東日本旅客鉄道株式会社は、わが国初の鉄道高架下のホテル「ホテルドリームゲート舞浜」を、東京ディズニーリゾートの玄関、JR京葉線舞浜駅隣りに2月29日オープンします。「ホテルドリームゲート舞浜」は同社と株式会社竹中工務店が開発した「吊り免振工法」により、毎日400本以上の電車が往復する駅高架下に、騒音・振動の影響のない高品質のホテルを実現したものです。今、鉄道高架下活用の新モデルとして注目を浴びています。

ホテルドリームゲート舞浜 ホテルドリームゲート舞浜

■ 建築概要
建物名
ホテルドリームゲート舞浜
建築地
千葉県浦安市舞浜26-5
建築主
東日本旅客鉄道(株)
設 計
東日本旅客鉄道(株)、(株)ジェイア−ル東日本建築設計事務所、(株)竹中工務店
施 工
竹中・鉄建建設工事共同企業体
工 期
2003年4月16日~2004年2月11日
構 造
ホテル棟・鉄筋コンクリート壁式構造(吊り免振工法)、共用棟・鉄骨ラーメン構造
規 模
地上2階
延床面積
5,599.92m²
建物用途
ホテル(客室80室)、店舗

詳細情報

Ⅰ. 技術開発の経緯(東日本旅客鉄道・竹中工務店)
□ 鉄道高架下の活用に向けた技術開発ニーズ

駅周辺の鉄道高架下は立地では一等地にありながら、振動や騒音のため、駐車・駐輪場、倉庫、飲食店などに利用形態が限定されていました。そのため、「静寂さ」を要求されるホテル、病院、オフィスなどへの活用は困難と考えられてきました。資産の有効活用を模索していた東日本旅客鉄道は、騒音や振動など鉄道高架下特有の課題を克服するために研究を進めていました。竹中工務店は、防音・防振及び免制振建物などにおける先進的な技術開発を積極的に行ってきた実績があり、両社でこの難問の解決に取り組みました。

□ 鉄道高架下特有の難題克服がカギ

鉄道高架下では、建物の居室としての「静寂さ」を阻害する要因として
空気を通して伝わってくる「空気音」
列車振動が伝わる事による「振動」その振動が原因で壁や天井等から放射される「固体音」
の2つがあげられます。「空気音」は、気密性の高い防音サッシュを使う、躯体コンクリートを厚くする、などで比較的容易に解決できます。
「振動」と「固体音」は地面と建物の間で、振動を吸収する柔らかな防振ゴムを挟み込むことで解決できます。 しかし、柔らかいが故に
地震に対して弱い
という特性があり、建物を支える高架柱の耐震性能を低下させるという問題がありました。
既存の技術の組み合わせでは、この「振動」、「固体音」の解消と「耐震性」の確保という2つの課題を同時に解決することが出来なかったため、東日本旅客鉄道と竹中工務店は全く新しい発想に立った技術の開発に取り組みました。

道のり


□ “建物を吊る”ことで「騒音・振動の低減」と「耐震性の確保」をともに満足

「振動」および「固体音」を解消し、「耐震性」を確保するためには、建物(構造物)を地面や高架柱と絶縁する、つまり切り離せば良いのですが、建物を空中に浮かせることはできません。そこで、クレーンでモノを吊り下げるように、点で建物を支えて接触面を極力小さくし、この部分に「振動」、「固体音」の解消、および「耐震性」の確保に対策を集中させる事で、解決が図られると考えました。

□ 「吊り免振工法」の概要

建物を吊る既存の高架柱の側面に、逆さL字型にのばした支柱を新設します。次に支柱上部の短い梁部分に建物を吊るための鋼製の吊り材を鉛直方向に取り付けます。さらに吊り材の上部と下部に、高架柱からの振動を吸収するための防振ゴムを取り付けます。あらかじめ“受梁”として設計された建物底部の鉄骨に吊り材を取り付けます。建物荷重は、高架柱と新設したそれぞれの支柱で分担します。
また、建物を吊り下げることで、建物自体の耐震性は著しく向上(=免震効果により建物の損傷が少ない)しますが、地震時に建物がブランコのように大きく揺れて高架柱に接触する可能性があるため、やはりオイルダンパーをフーチング(=高架柱の下のコンクリート基礎)の上に付設し、揺れ幅を小さくします。


□ 「吊り免振工法」の誕生

実際にそのような建物が本当に実現できるのか、さらに検討が加えられました。97年末から翌年春にかけて、JR舞浜駅東側高架下で延べ床面積140m²、重さ220tの構造物を作り、高架柱に取り付けた支柱から吊り下げる実験が行われました。最初の実験では、オフィス並みの室内騒音レベルしか実現できませんでしたが、支柱や吊り材の改良、防振装置の改良、壁材や床材などの室内仕上げの仕様変更ほかディテールの改善を積み重ねた結果、最終的にはホテルに要求される室内騒音レベルを満足させるグレードを実現しました。「吊り免振工法」の誕生です。


Ⅱ. JR京葉線舞浜駅高架下でのホテル建設を発表(東日本旅客鉄道)

JR京葉線舞浜駅は、東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、イクスピアリなどによる東京ディズニーリゾートの玄関口です。東日本旅客鉄道は02年12月、舞浜駅高架下にファミリーや若いグループをターゲットとしたホテルを建設することを発表しました(後に「ホテルドリームゲート舞浜」と命名)。


Ⅲ. 家族、グループの宿泊を意識した設計プランニング(東日本旅客鉄道・ジェイアール東日本建築設計事務所・竹中工務店)

宿泊建物の設計は東日本旅客鉄道、(株)ジェイアール東日本建築設計事務所、竹中工務店の3社が担当しました。このホテルは、高架下という制約から2階建てで、「吊り免振工法」を採用する客室部分と、在来の工法からなるロビー・レストラン・ホールなどの共用部分で構成されています。客室部分は、全80室で、中央の廊下を対称軸としてほぼ対称に設置されています。一部屋の大きさは36m²と広めで、家族、グループ3~4人がゆったりと宿泊できるプランになっています。また、洗面所、トイレ、浴室を独立した配置にすることによって、各人が同時に水まわりを使用できるようにしています。外観も東京ディズニーリゾートに相応しい、アースカラーをメインに、海を連想させる青いサッシュ、水色のタイルなどを配色しています。


Ⅳ. 前例の無い構造設計課題への挑戦(東日本旅客鉄道・ジェイアール東日本建築設計事務所・竹中工務店)
□ 44本の高架柱に設置した支柱が約4500tの客室を支える

吊り免振工法今回の「吊り免振工法」では、長さ80m、幅25.5m、高さ6.7m、重さ約4500tの躯体(客室部分)を支える44本の支柱をいかに高架柱に付設させるかが構造設計上のハイライトとなりました。種々な検討の結果、柱断面1m×1mの高架柱に、直径24mmのアンカーボルト24本を打ち込んで支柱を取り付けることとしました。


□ 前例の無い「吊り免振工法」を巡る許認可

しかし、今回の工法では、高架柱という土木構造物に取り付けた支柱で建物を支えることから、土木分野と建築分野の区分けを巡って、国土交通省との綿密な折衝を必要としました。この結果、高架柱とそこに打ち込んだアンカーボルトまでを土木構造物とし、付設する支柱からが建築基準法の適用範囲とされました。
また、吊り免振装置に使われている防振ゴムは、建築基準法上は「構造体」として使用できる材料として認められていませんでした。このため、千葉県との折衝を経て、構造体全体に関する性能を構造解析によって検証し、建築センターの性能評価を受け大臣認定を取得した後、建築の確認申請が受理されました。


Ⅴ. 画期的な「吊り免振工法」をわずか10カ月の工期で実現した施工計画・施工技術(竹中工務店・鉄建建設)

03年1月、東日本旅客鉄道から、「ホテルドリームゲート舞浜」建設工事を竹中工務店および鉄建建設(株)による竹中・鉄建建設工事共同企業体が受注、4月に着工しました。97年に技術開発に取り組んでから7年目のことです。

□ レーダー探査による高架柱へのアンカーボルト打ち込み

アンカーボルト打ち込み44本の高架柱内部の鉄筋の位置をレーダー探査で調査し、鉄筋に接触しないようにアンカーボルトを打ち込みました。アンカーボルトと支柱をつなぐベースプレートは、それぞれの高架柱によってアンカーの位置が異なるところから、全て形が違うオーダーメイドとなっています。また、主要なアンカーボルトについて、引き抜きの耐力試験を行って施工性能の確認を行いました。


□ 44体の吊り免振装置に一斉に躯体荷重を移動

高架柱に取り付けた支柱の梁中央に、防振ゴムや鋼製の吊り材などを取り付けた後、免振建物の底部となる格子状の受梁(鉄骨基礎梁)を仮受け台の上に施工しました。次いで、この受梁を44本の支柱上部の梁部分から鉛直方向にそれぞれ1本ずつ取り付けられた鋼製の吊り材につなぎます。この鋼製の吊り材を支柱の上からジャッキアップ方式で引張り上げ、鉄骨基礎梁を地上から浮かせます。
ジャッキアップは、鉄骨基礎と2階床までの躯体が完成した時点で行いました。建物を水平に保ちながら引張り上げるべく、司令室でコンピュータ管理しながら一斉に行われました。特に吊り部分に用いている防振ゴムは変形しやすいため、建物にネジレや亀裂などの問題が発生しないように慎重な作業が行われました。支柱上部の梁と建物底部の受け梁との距離(振り子の長さ)は地震発生時の揺れ幅も考慮して3.5mに設定されました。

□ 入念な防音・防振の検査体制

実際施工した建物が実際に設計性能を満たしているかどうかを確認するために、吊り免振装置に荷重を移し替えた時点、内装施工完了時点(特定の部屋を先行して内装施工)、工事完了時点など、エポックとなるそれぞれの時点で、防音、防振の性能試験を実施しました。
これらの検査で、室内騒音も日本建築学会の「建築物の遮音性能基準」におけるホテル・住宅レベル(3級)をクリアしていることを確認し、「吊り免振工法」の有効性が改めて証明されました。また、通常の列車より大きな騒音を発して軌道の検査を行う「強力軌道整備機」が通過した際も、基準はクリアされ問題はありませんでした。

□ わずか10カ月の短工期で完成

未知の工法であったにもかかわらず、03年4月に着工し、04年2月に竣工しました。建物を吊るので杭工事が不要であった、あるいは高架の南側県有地をバックヤードとして占有できたというプラス要因もありましたが、毎日400本の電車が走る高架下という狭隘空間での作業、電車通過時のクレーン作業の制限、個々の高架柱の状態に合わせたアンカー取り付け、高い精度が求められる鉄骨建方など、作業効率を阻害する要因の多い中、建築主、設計者、施工者が「吊り免振工法」の実現にむけて一丸となって取り組んだ結果、わずか10カ月という工期を実現しました。
高架下にホテルをつくりたいという「夢」を、先進的な技術開発に取り組んで実現する…。「夢」の入り口、東京ディズニーリゾートに相応しいストーリーといえます。

関連サイト 吊り免振工法
http://www.takenaka.co.jp/engi_j/c07/c07_6.html