本文へジャンプ

1997年7月15日


白い大陸に挑んだ40年前の建築技術
第一次南極観測隊の南極観測用建物が「南極展」に展示


(株)竹中工務店

南極観測用建物

日本の南極観測が開始された40年前、当社が総力をあげて取り組んだ小さな建物があります。当時は「今日、月面基地の建設を考えるより遥かに遠いところの話だった」南極観測用の建物です。

1956年11月に出発した第一次南極観測隊用に準備された建物は全部で5棟。そのうち4棟は木製パネルの組立式家屋、1棟はパイプ骨組に断熱天幕を張った発電棟です。大きさは居住棟、本屋棟、無電棟、それぞれ41.11m2(12.44坪)、同じく観測棟29.35m2(8.88坪)で、ともに構造はパネル型平屋建。そしてパイプ構造の発電棟は55.19m2(16.70坪)です。当時の最高の技術を結集した「極限環境に住むための機械」ともいえるこれらの建物の一つが、南極での40年間の風雪に耐えてこのほど日本に帰ってきました。


◆日本初のプレハブ建築

今年の4月13日、東京港晴海埠頭に入港した現在の南極観測船「しらせ」により、第一次南極観測隊によって昭和基地に建設された建物のうちの1棟が持ち帰られました。この南極観測用建物を始めとする4棟のパネル組立式家屋は、1957年の第一次南極観測隊のために、日本建築学会南極建築委員会の基本設計により、当社が実施設計と製作を担当して開発した、日本で初めてのプレハブ建築です。
精選された材料を用いて日本で製作した建築部品を、当時の南極観測船「宗谷」で南極まで輸送し、建設工事には不馴れな観測隊員の手で組み立てられるということで、部品が軽くて丈夫なこと、組み立てが簡単なこと、そして南極建物として最も大切な役割である雪や強風・寒さから観測隊員を守ることが要求されました。設計時は昭和基地周辺の気象データが十分でなく、設計条件として、最大積雪量2m、最大風速80m/s、最低気温-60℃に耐えて居住性を確保できる建物性能が要求されたのです。
日本初の高性能のプレハブ建築は、こうして第一次南極観測隊のために日本建築学会南極建築委員会と当社が中心となって開発されたのです。外壁・屋根・床に利用したパネルは厚さ10cmで、桧の枠材の両側に樺材の合板を張り付け、間に断熱材として西独製の発泡スチロールを挟んだものです。サイズは、1枚121cm×242cmに統一され、隊員2~3人で組み立てられるようにしています。また、パネルの繋ぎ目は、雪風が入らないようにゴムを間に挟み、締め付け金具で簡単に組み立てられます。


◆外装は全く手を加えず、内装は建設当時の形に復元して展示

今から15年前の1982年にも、建設後25年を経過した居住棟が持ち帰られました。その時は当社技術研究所で組み立て復元され、関係者に公開されるとともに、性能試験が行なわれました。結果は、外部の塗装がかなり傷んでいたものの、強度や断熱性などの性能劣 化はほとんどなく、建物は健全でした。
今回持ち帰られた南極観測用建物は、15年前の居住棟よりも外見的にはかなり傷んでいました。壁パネルの中には、塗膜がほとんど無くなっているものもあります。特に床パネルはアルミ板仕上げになっていますが、アルミ板の下の合板は、水を含んでかなり傷んでいました。これは観測船「宗谷」の老朽化により、昭和基地が1962年2月から4年間閉鎖された間に水が流れ込み、床パネルは完全に氷浸けの状態になっていました。その後、観測が再開されるとともに使用され、40年間風雪に耐えてきた建物なのです。
一方、壁や天井のパネルの性能を竹中技術研究所と日本大学理工学部で調査しました。その結果、塗装などは傷んでいましたが、壁や屋根材の強度・断熱性などの性能については、建設当初の性能からほとんど劣化していないことがわかりました。また、同じ素材・部品で建設されて、南極の過酷な自然環境下で25年間耐えた居住棟と40年間耐えた南極観測用建物の強度や断熱性を比較しても、性能にはほとんど変化が見られないことがわかりました。これらのことから、当時の建築技術のレベルの高さがうかがわれます。

この南極観測用建物は、外装は全く手を加えず、内装は建設当時の居住棟の形に復元して国立科学博物館で開催される「ふしぎ大陸南極展」に展示され、一般公開されます。


◆国立科学博物館で開催される「ふしぎ大陸 南極展」

日本の南極観測が開始されて40周年を記念して、7月19日~11月16日まで東京上野の国立科学博物館で「ふしぎ大陸 南極展」(主催:国立科学博物館、国立極地研究所、朝日新聞社)が開催されます。
「白い大陸」「クリスタル・デザート(氷の砂漠)」などとも呼ばれる南極大陸は、アムンゼン、スコット、白瀬中尉などによる探検が行なわれたものの、1957~58年の国際観測年までは、科学調査に関する空白地帯ともいえるところでした。しかし、微生物生存説の根拠となった火星隕石をはじめ、南極は隕石の宝庫として地球科学研究においても重要な位置を占めています。こうした南極の特色とその重要性への認識を広めると同時に、特に青少年への南極をめぐる科学知識の普及と、環境問題への関心を高めることを目的として開催されるのが「ふしぎ大陸南極展」です。


◆日本南極観測40周年記念

  「ふしぎ大陸 南極展」開催概要
名称:ふしぎ大陸 南極展
会期:1997年7月19日(土)~11月16日(日)
会場:国立科学博物館(住所=東京都台東区上野公園7-20)
主催:国立科学博物館・国立極地研究所・朝日新聞社
協賛:アンリツ・竹中工務店・日本財団
後援:南極地域観測統合推進本部・防衛庁・外務省・文部省・海上保安庁
気象庁・郵政省通信総合研究所・建設省国土地理院
東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城の各教育委員会
主な展示品
   みる――――NASA発表の「太古の火星での微生物生存説」の根拠である火星いん石・タロとジロ・不凍魚 等
   さわる―――南極の氷・40億年前の岩石群・ハチの巣岩 等
   きく――――ブリザードの音・ホイッスラーの音
   体験する――氷点下20度の南極低温体験室、昭和基地初期の観測棟




[ホームページ]

戻る