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1998年9月29日

広島グリーンビルで「居ながらできる制震補強工事」に着手
「極低降伏点鋼を用いた制震アンボンドブレース工法」を採用

(株)竹中工務店

竹中工務店(本社:大阪市、社長:竹中統一、資本金:500億円)は、広島グリーンビル(広島市、(株)竹中不動産所有)の耐震補強工事を受注し、「制震アンボンドブレース」を用いた「居ながらできる制震補強工事」を実施します。

「極低降伏点剛を用いた制震アンボンドブレース」実物大モデル
実物大モデル

広島グリーンビルは、1965年に旧耐震基準によって設計された、SRC造9階建のオフィスビルで、現在25社がテナントとして入居しています。耐震診断の結果、壁量の少ない東西方向において耐震性能が不足していることがわかり、大地震に備えて耐震補強工事を行うこととなりました。 補強工法の選定には、耐震性の向上はもちろんのこと、採光などオフィス環境の低下を防ぎ、工事中も建物を使用できる「居ながらできる補強工事」の実現性などテナント各社への影響を最小限にすることを考慮して、「極低降伏点鋼を用いた制震アンボンドブレース工法(後出)」を採用しました。 アンボンドブレースによる制震補強では初の建設大臣認定を取得し、耐震改修促進法に基づく認定を取得しました。また、テナント各社には全体及び個別に説明会を開催し、工事への理解を頂いています。工期は、98年10月~99年7月(10ヶ月)の予定です。


◆制震補強架構の概要

制震補強架構図

耐震改修計画にあたり、建物の耐震性能の向上はもとより、テナントへの影響を最小限にとどめ「居ながらできる補強工事」を行うことを前提として、各種補強工法の検討を行いました。一般的な工法で耐震補強を行うと、2階~9階の1/4の窓を鉄板耐震壁で塞ぐため採光面が減り、オフィスの環境が悪くなり、ビルの美観も損なわれます。
また、免震レトロフィットや外部で補強する外殻フレーム工法は敷地の余裕が無いため採用できないことがわかりました。
今回採用した制震補強架構は、制震ブレースを2階~9階の建物四隅の窓に沿って垂直方向に設置する工法です。設置場所が建物四隅に限られ、窓を塞がないので採光が確保できるなどオフィス環境への影響が小さく、ブレースは室内側に設置するためビル外観にも影響がありません。 また、工事面でも、建物四隅を仮設遮音壁で囲い、外から工事を行うため「居ながらできる補強工事」が可能で、今回の計画に最適な工法として採用しました。
制震補強架構は「制震アンボンドブレース」を、南面・北面の2階~9階までの外壁両端部のすぐ内側に配置します。さらに屋上階で、制震架構の頂部をボックス型梁(梁成1500㎜)のハットビームで連結することにより、全体として門型のメガストラクチャーを構成します。ハットビームは、地震時に生ずる制震架構の曲げ変形を拘束することによって、制震ブレースがより大きく軸変形し効果的にエネルギーを吸収する働きを有します。
この工法の採用により、大地震時における耐震性能を現行の耐震基準以上に引き上げることができます。 また、建物の地震時の変形が約30%軽減されるため、2次部材への地震の影響も軽減されます。


◆「極低降伏点鋼を用いた制震アンボンドブレース」について

制震アンボンドブレースは、二重構造のブレースで外側に座屈補剛材として鋼管を、内側に芯材として極低降伏点鋼(注1)を用いた制震ブレース材です。座屈補剛材と芯材は摩擦抵抗なし(アンボンド)の状態に保たれています。芯材の極低降伏点鋼が地震による振動エネルギーを効率よく吸収し、座屈補剛材が極低降伏点鋼の挙動を安定させます。このため、小さな部材断面で、建物の剛性をほとんど変えずに地震による振動エネルギーだけを吸収して建物の変形を抑えることができ、高い耐震性能を得られます。
今回の補強工事では、ブレース交点を上部に移動させることにより、地震時の微小な変形からも制震効果を発揮するように設計しています。

(注1)極低降伏点鋼:通常の構造用鋼材よりも降伏点が低く、優れた伸び性能を持っており、かつ安価で信頼性が高い鋼材。制震用の材料として注目されている。

制震アンボンドブレース

◆「居ながらできる制震補強工事」の概要

工事は下記の手順で、ブレースを設置する四隅の窓近辺だけを仮設遮音壁により完全に区画した上で、「居ながらできる制震補強工事」で実施します。工事箇所が限定されているので、工事に伴う引越しやオフィスレイアウト変更などを最小限に止めることができます。また、作業員の動線もすべて外部足場からとし、工具についても低騒音・低振動の公害対策ドリルを採用するなど、工事期間中もテナント各社への影響を最小限にできるように工夫をしています。

1. ブレースを設置する四隅の窓近辺を仮設遮音壁で完全に区画する。
2. 工事範囲内の既存の内装仕上げ等を撤去する。
3. 屋上から2階までの外壁のすぐ内側にブレース設置のために各階床に開口を設ける。
4. ブレースを1層分ずつ屋上から差し込み、既存躯体と一体化する。
5. 仮設開口の復旧、内装仕上げ、仮設遮音壁解体を行う。

1995年の阪神大震災以降、「耐震改修促進法」の制定を受け、耐震診断・耐震補強工事のニーズが高まっています。最近では特に耐震補強工事を、オフィスレイアウト変更や移転をすることなく、ほとんど従来同様に建物を使用したまま行う「居ながらできる耐震補強工事」が注目を集めています。
竹中工務店では、居ながらできる耐震補強工事に対応する技術として、「炭素繊維成形板工法」、「鉄骨ブレース接着工法」、「外殻フレーム補強工法」などを開発し、適用実績を重ねています。「制震アンボンドブレース工法」についても、居ながらできる耐震補強工法の一つとしてラインナップに加え、積極的に提案していきたいと考えています。


◆「広島グリーンビル」耐震補強工事の概要

建築地 広島市中区中町8-12
建築主 ㈱竹中不動産
建物用途 事務所ビル
構造規模 SRC造、地下2階、地上9階、塔屋3階
延床面積 11,130.26㎡
設計施工 ㈱竹中工務店
工  期 98年10月~99年7月
(建物は1971年に竣工)
イラスト

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