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1998年10月29日

天井裏に納まるコンパクトな制震機構
「梁端ダンパー」を開発
鉄骨梁の端部にダンパーを組み込み建物の揺れを制御

(株)竹中工務店

当社では、地震による建物の揺れを吸収して耐震性能を向上させる制震装置として、鉄骨梁の端部にダンパー(振動エネルギー吸収機構)を取り付けた制震梁部材「梁端ダンパー」を開発しました。現在各種の制震ダンパーが開発されていますが、「梁端ダンパー」の開発は初めてのことです。「梁端ダンパー」は制震部材の設置場所が梁の端部に限られるため、ブレースなどで窓や室内空間をふさぐことが無く、かつ鉄骨造建物を低コストに制震化できます。

◆梁端ダンパー開発の目的

これまでの制震技術の多くは、柱と梁で囲まれたフレームの中にブレース、間仕切壁、間柱などを介してダンパーなどの制震装置を取り付けるものでした。このような取り付け方は制震装置に力と変形を集中させることができ効率的ですが、柱と梁で囲まれた空間をふさいでしまうために、動線を阻害したり美観に影響を与えたりすることがありました。

今回新開発した制震機構は、鉄骨梁の端部に極低降伏点鋼を用いたダンパーを組み込んだものです。ダンパーの設置場所が梁の端部だけに限られるので、柱と梁で囲まれた空間をふさぐような障害物はありません。また、内装仕上げをした後では、部屋内にダンパーが出ないため、見かけ上はダンパーがないビルと変わりありません。
梁端ダンパーは2種類の方式があり、構造計画における梁の役割や仕上げなどとの形状的な兼ね合いに応じて使い分けることになります。

(注・極低降伏点鋼:通常の構造用鋼材よりも降伏点が低く、優れた伸び性能を持つ鋼材。安価で信頼性が高い制震用の材料として注目されている。)

◆梁端ダンパーの制震性能

梁端ダンパーの制震性能は、当社技術研究所における部材実験や2分の1模型による架構実験によって効果を確認しました。また、30階建の鉄骨造高層建物モデルの数値解析結果によると、地震時の建物の揺れ(加速度)を約40%低減します。建物の損傷程度を把握する最大応答塑性率も2分の1程度に抑えることができます。

1/2模型による実験風景
30階建鉄骨造建物モデルの数値シミュレーション

◆梁端ダンパーの概要

今回新開発した梁端ダンパーは、用途に合わせて、「ハンチ式」と「置換フランジ式」の2種類があります。いずれも、地震時に柱や梁に損傷が出る前に、極低降伏点鋼が変形して振動エネルギーを吸収して、建物の被害を防ぎます。中層から高層の鉄骨造の建物で、中地震から大地震で効果を発揮します。大きな地震に対しても極低降伏点鋼部分の傷みが少なく、繰り返し振動を受けても極低降伏点鋼の性能は劣化しないので、ダンパーを取り替える必要はほとんどありません。
梁端ダンパーを用いた効果的な構造計画としては、例えば、コアが片側にあってねじれ変形が発生しやすい建物の、コアと反対側の面(開口部側)に取付け、建物の剛性や振動減衰力のバランスを取って、ねじれ変形を発生しにくくすることなどが考えられます。

1.ハンチ式梁端ダンパー
梁端部と柱との接点で、梁の上下に極低降伏点鋼のハンチ形状ダンパーを組み込んでいます。建物外周の梁、建物コアの耐震壁に接続する梁に適用すると効果的です。梁の長さ方向に生じる力の分布形とハンチの形状とを相似にできるため、ハンチ部分全体にわたってエネルギーを効率的に吸収します。

注・ハンチ:梁端部の抵抗曲げモーメントや抵抗剪断力を増加させるために、その部分の断面をスパン中央の断面より大きくしたもの。)


2.置換フランジ式梁端ダンパー
梁端部の鉄骨フランジの一部を欠き込んで、そこに極低降伏点鋼をはさみ込んだダンパーです。ダンパーの部分が梁本体と同じ高さなので、天井高さが梁下ぎりぎりのようなオフィス空間の上の梁にも適用できます。ダンパーの位置で損傷をコントロールできるため、大地震時に生じる恐れのある梁端部の亀裂発生等の被害を回避することができます。

注・フランジ: 型断面の柱や梁の上下部分の鋼材。主として曲げモーメントを負担する。)

◆今後の展開

梁端ダンパーは、窓や室内空間への影響を極力さけて耐震性能を向上させたいという建築主のニーズに合った制震技術です。また、梁端ダンパーを既存の制振技術と組み合わせて、建物毎に最適な制振システムを構築することもできます。
当社では、この梁端ダンパーを建築基準法の性能規定化に対応する技術の1つとして位置づけ、積極的に提案を行っていく考えです。



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