1998年11月27日
木質壁の燃え方を解析する
「火炎伝播シミュレーションシステム」を開発・実用化
壁に木を使ったコンサートホールなどの避難安全性評価に力を発揮
(株)竹中工務店
当社では、このほどコンサートホールやアトリウムといった大空間の内装壁に採用した「木(無垢の木材)」の火災時の燃え方を解析予測する「火炎伝播シミュレーションシステム」を、開発・実用化しました。
「木」をコンサートホール等の内装壁に用いるためには、大掛かりな燃焼実験で防火安全性を評価し、建設大臣の認定を取得することが必要です。今回開発した「火炎伝播シミュレーションシステム」は、この燃焼実験をコンピュータで解析するもので、ホール内で万一火災が発生して「木」の内装壁が燃焼した場合の燃え方や燃え止まり(燃焼した木材の炭化した表面が耐火被覆のような働きをして一時的に延焼が止る状態)の位置と時間を高精度にシミュレーションできるシステムです。これにより、実験にかかる費用や時間が大幅に削減されます。
また、「火炎伝播シミュレーションシステム」に、当社保有の「煙性状シミュレーションシステム注1」と「避難シミュレーションシステム注2」を組み合わせることで、内装壁に「木」を用いた大空間内で火災が起こった際の避難安全性評価の手法が確立しました。
当社では、コンサートホールやアトリウムなどの大空間の新築やリニューアル時にこの評価手法を用い、内装に「木」の特性を生かした質感と音響効果を持つ大空間の実現に役立てていきます。
○注1:火災発生からの煙の流れを解析するシステム。
○注2:在室者の避難状況を解析するシステム。
◆「火炎伝播シミュレーションシステム」開発の背景
コンサートホールやアトリウムなどで「木」を内装壁に用いることで、木の持つ温かい感じの空間が実現し、さらにコンサートホールではより自然な響きを持たせることができるなど音響面でも優れた効果があります。海外では、このようなホールが数多く存在し、日本でも「木」の内装へのニーズが高まっています。しかし、日本の建築基準法ではホールやアトリウムなどの大空間の内装壁には原則として不燃材を用いることが定められています。現在、木に見える内装壁の多くは、石膏ボードなどの不燃材の表面にごく薄い木板を貼りつけたものです。
国内において、可燃材である「木」を大空間の内装壁材として採用するためには、万一火災が発生しても在室者が安全に避難できるか、火災が拡大しないかなどの安全性の面から検討した上で、建設大臣認定を取得する必要があります。中でも、内装壁の燃え方に関しての検討には、実物模型を用いた大掛かりな燃焼実験により防火安全性の評価を行う方法が一般的で、大変な手間と費用がかかっていました。
◆「火炎伝播シミュレーションシステム」とは
「火炎伝播シミュレーションシステム」は、ホール等で万一火災が発生して内装壁の「木」が延焼した時の燃え方を解析するシステムです。
内装壁に使用する「木」の種類・厚さ・比重・燃焼特性とホール等の大きさ・壁の高さ・椅子の位置、などのさまざまなデータを大型コンピュータに入力して解析し、「木」の内装壁が在室者の安全が確保される位置や時間で燃え止り、火災が拡大しないような計画を立案していきます。大型コンピュータを用いるため、実物模型を用いて燃焼実験を行うよりも、安く、短期間に、様々な検討をすることができます。
近年、「木」の燃焼性状が解明されてきたこと、当社でも「木」の実大燃焼実験を繰り返してデータを蓄積し、これらから様々な知見を蓄積したことから、「火炎伝播シミュレーションシステム」の実用化が可能になりました。
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