竹中工務店(本社:大阪市、社長:竹中統一、資本金:500億円)では、音の方向と視覚を一致させて自然で臨場感あふれる音響空間を創出する新システム「音方向制御拡声システム OZ−T10(オズティ10)」を、東北では初めて東北学院大学泉キャンパス礼拝堂に導入しました。「OZ−T10」は、話者の方向から自然な拡声音が聞こえるような音響空間を実現した音響システムです。
東北学院大学泉キャンパス礼拝堂は、大学などの教育施設に設置されているなかでは全国最大規模を誇るパイプオルガンや讃美歌の響きの美しいホールとして定評があります。しかし、音響設計において響きの豊かさを最優先したため残響時間が長く、礼拝の説教や講演の声が聞き取りにくいという課題が残っていました。
今回は、パイプオルガンや讃美歌の美しい響きをそのままに、建物の内装にはほとんど手を加えることなく、「OZ−T10」を採用して音響改善工事を行ないました。
これにより、礼拝の説教や講演のときにあたかも話者の口から拡声した声が出ているように聞こえ、話者の声の明瞭度が向上しました。
◆ 東北学院大学泉キャンパスの音響改善工事について
今回の音響改善工事は、大学などの教育施設における礼拝堂としては、全国最大規模を誇るパイプオルガンと讃美歌の豊かな響き、そして礼拝における説教の明瞭性を共存させる目的で行われました。礼拝堂の設計者である日建設計のご協力を頂き、礼拝堂の形状や仕様を極力変えずに、音響改善に取り組みました。
まず礼拝堂の音響測定を行なった結果、残響時間が3.2秒と長く、説教を行なうには明瞭度の確保が技術的に困難であるなど不適切な点があることがわかりました。しかし、残響時間を短くすればパイプオルガンの音響的美しい響きを損なうばかりでなく、建築意匠的にも変更が必要になります。
このため、建築と電気音響の両面から検討を重ね、残響時間をほとんど変更することなく説教のときの明瞭度を向上させるため、「OZ−T10」を導入し、建築の音響特性に最も適合するようにスピーカの新設・再配置を行なうことになりました。
これにより礼拝のとき、ホール内に配置した9台のスピーカから発する音は、音量や到達時間が制御され、まるで舞台上の説教者の口から発せられている声のように聞こえます。また、パイプオルガンの音響や讃美歌の美しい響きはそのままです。
◆ 「音方向制御拡声システムOZ−T10」について
「OZ−T10」は、話者の方向から自然な拡声音が聞こえるような音響空間を実現する音響システムです。
このシステムは人間の脳が音の方向を知覚する時の特徴の一つである先行音効果(自分の耳に最初に到達する音によって音の方向を知覚し、音の方向と大きさなどをイメージしそれを“音像”として捉える)とよばれる性質を利用し、どの座席にいても話者の方向から拡声音が聞こえるように音方向を制御するものです。
従来の拡声システムでは、ステージや客席の側面などに設置されている観客に一番近いスピーカからの拡声音が最初に耳に到達して、そのスピーカの方向に音像ができるため、ステージ上の話者の“実像”と拡声音の“音像”とが必ずしも一致していませんでした。
「OZ−T10」により、マイクで集音した音を先行音効果回路を通じて最初にステージの上の話者に近いスピーカから拡声音として出すことによって、話者の“実像”と拡声音の“音像”の方向が一致し、あたかもその人の口から自然に拡声した声が出ているように聞こえます。
このシステムで講演を行なうと、舞台の方から聞こえる音方向と話者をとらえる視覚が一致し、話者への注意力が高まり、講演が聞きやすくなります。
工事は、既存の拡声設備システムの調整卓とパワーアンプの間に、「OZ−T10」の本体機器である先行音効果装置を接続し、スピーカの数や位置を少し変えるだけで、音像定位による拡声に変更することができます。音響改修工事が大がかりなものでないため、新設ばかりでなく既存の施設にも容易に設置可能です。
「OZ−T」シリーズは、小規模な体育館や講堂、学校の教室を始め、ホテルの宴会場・劇場・多目的ホールなど広い範囲に導入可能なシステムで、臨場感溢れる音響環境を実現できます。今回の講演会を主目的にしたシステム「OZ−T10」の他に、複数の舞台上の話者を追尾して、移動する話者に音像を定位させ、その方向から常に自然な拡声音が聞こえるシステム「OZ−T100(手動で話者を追尾)」と「OZ−T1000(複数話者の識別・追尾をサンサー技術により自動化した)」があります。