デザイン

施設全景(鳥瞰写真)

「竹中技術研究所R-90」(1993年)は、幾何学的構成に基づき、建物本体と大地の関係、図と地の関係により、天界からの視線に応答する「風景としての建築」が意図されている。かつての丘陵地を甦らせるべく造成された人工の丘の内部に、建物を極力沈めて一体化するため敷地全面にわたって土と水と緑によるさまざまなランドスケープ的処理がなされている。

エントランスアプローチ

施設の基準となる直交グリッドに対して1:9の比率で振れた軸がつくる進入路は、大地を斜めに切り取った大きな池(大地を切り取って湧き出たような水が全面に張られている)と斜めに走る大スロープで構成し、遠近法の視覚効果を強調したアプローチゾーンを形成している。第一のアプローチである来客用乗用車や一般研究者は、西側メインストリートから遠近法を強調した池に沿って地上レベルから2階の人工地盤をもつエントランスレベルへと導かれる。

中央ガラスキューブ(プラッツ)

研究所の中枢である研究棟・管理棟は、基準となる直径153mの円の中央からわずかに東にずれて配置された中庭をもつ正方形平面の管理棟ブロックと、アトリウムやラウンジをもつシンボリックなガラスキューブを挟み、西側と北側へ向かってL型に延びる研究棟の2つのウイングによって構成されている。管理棟の中庭に面して高さ20mの吹抜けをもつアトリウムに浮遊する斜路は、対置された階段と動線的に呼応しながら中庭に“ずれ”と“動き”を与えている。

研究棟

研究室のある西ウイングは、ヒューマンスケールの細長い矩形の中庭を挟んで北と南にリニアに対面する長さの異なる2つのブロックからなる。研究者にとって必要な創造性を高めるため、平面的な広がりよりも空間容量を確保し、開口部からの奥行を浅くすることや、スカイライト・ハイサイドライトの多用、中庭からの反射光の利用などにより、自然光を重視した微妙な陰影と深みのある空間を創りだしている。

中庭

施設中央の中庭に面する東実験棟の西面ファサードは、基準となる直径153mの円環を現す巨大な1枚の曲面壁となっている。グリッドシティとなる東実験棟と施設の中枢である管理棟とが、眼前に広がる緑あふれる中庭を一気に横断する40m無柱スパンの超高強度コンクリートのスーパーブリッジによって軽やかに接続されている。

東実験棟

12m×12mの基準グリッドを田の字型に連結したグリッドとそれを支援する設備シャフトウォールの組合せを基本単位とするフレキシブルな24m×24mの正方形グリッド平面が雁行する東実験棟は、超精密クリーンルーム、磁気シールドルーム、大型空調、給排水衛生、温室、人工光型植物、メカトロニクス、建築材料といった小・中規模の実験室群を納め、設備幹線シャフトを床スラブ下、天井二重スラブ内に有する幅4mの通路空間によって接続される構成となっている。

東サービスゲート

第2のアプローチであるサービス用トラック及び乗用車の進入ルートは、敷地最東端からカツラの木が規則的に並列するプロムナードに向かって西進し、東実験棟の南面ファサードと南実験棟の北面ファサードに挟まれて、パースペクティブな視覚効果を持ち、1:9の斜行軸で管理棟に向かって延びる屋外大スロープによって、北・東実験棟への進入路と南・西実験棟への進入路へ分けられる。

南実験棟サービスヤード

西実験棟と連結するガラスキューブから東方向へ大型構造実験室、火災実験室、風洞実験室、耐火実験棟と続き、東側サービスゲートまで250mに及ぶ南実験棟は、スーパースケールの北側壁面と、傾斜芝に囲まれた外周とドライエリアからの二重のスキンエレベーションを持つ広大なリニアシティとなっている。

南実験棟

大空間の実験場には、全長162mのハイサイドライト・スクリーンが緑の傾斜面の最上部で垂直に立ち上がり、連続する帯状の自然光を場内に導入している。個室群を上下に連絡する階段が、傾斜面からシンボリックに突出し、ドライエリア上部に架かる鉄骨の雨樋のフライングビームの整列と相まって、長大な水平性に規則的なリズムを与えている。

耐火実験棟

世界最高水準の耐火実験と環境技術の検証実験を行う環境技術の実験棟である。 外壁に設置した庇・足場の機能をもつ鉄骨の「サステナブルフレーム®」は、当社が開発した先端的環境技術の検証実験場となっている。 フレームが壁に影を投げかけ、太陽光発電パネルや風車が光と風に応じて動き、ナツヅタの緑化外壁やカツラの樹林が季節の移ろいを明敏に映して街区に潤いを与えている。