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PROJECT10 通天閣耐震改修 TSUTENKAKU

願いを超えていく 大阪随一のシンボルを、“いつものまま”未来へ — 通天閣。止めない営業、変えない外観、高まる安全性 —

大阪屈指の観光地、通天閣。ここは、単なる「名所」ではない。初代通天閣が創建された当時の大阪繁栄への願い、二代目である現通天閣に込められた戦後復興への願い。それらを背負いながら、大阪に暮らす人々の心の拠り所として屹立しているのだ。そして今、二代目が誕生してから約60年を経て、耐震補強工事が進められている。より安全な姿で、大阪のシンボルを未来へと受け継いでいく。そこには、街と建物を愛するがゆえのチャレンジがあった。

  • 通天閣の姿は変えない!こだわりから生まれた独自の工法

    東日本大震災を契機に、各地の建物で耐震補強工事が進められている。新築工事に比べると耐震補強工事の規模は大きくない。しかし、「すでに利用されている建物に対して工事を行う」という点で、新築工事とはまったく異なる難しさがつきまとう。通天閣もそうだ。工事対象は年間100万人が訪れる観光スポット。周辺エリアはひっきりなしに人が行き来している。そして何より、通天閣は「大阪のシンボル」として人々の心に刻まれている。構造設計の松原が着目したのはそこだ。

    「一般的な耐震補強工法では、建物の上部に外観上の変化を伴ってしまいます。ただ、それでは大阪の方々が愛して止まない通天閣を別のタワーにしてしまうことになる。そこで、脚元部分を切断して免震ゴムを挿入する『脚部改修』という工法を考案しました。」

    建っているタワーの脚を切断し、そこに免震構造を差し込んでいく−。突拍子もない発想に思える。事実、この工法は世界的にも例を見ないという。しかし松原は技術研究所をはじめとする社内のさまざまな部署を巻き込み、技術的裏付けを積み重ねていった。結果、松原が考案した脚部改修が実行されることに。こうやって、これまでと変わることのない通天閣の姿が未来へと受け継がれることになった。

  • 通天閣の姿は変えない!こだわりから生まれた独自の工法
  • 地上8mに工事用ステージを設置。

    耐震補強の工期は約9カ月。この間、仮に通天閣の営業を止めるとしたらどうなるだろう。通天閣自体はもとより、周辺地域や大阪全体への経済的影響は図り知れないはずだ。さらに、「通天閣が営業していない」という心理的ダメージもある。これは想像以上に大きいはずだ。それぐらい、通天閣は特別な存在なのだ。大阪で生まれ育ち、作業所の所長を務めることになった永野が危惧していたのもその点だ。

    「基本計画では通天閣の営業を止め、さらに周辺店舗にも営業中断の協力を仰ぐことになっていました。でも、何とかしていつもの賑わいある通天閣エリアを守りたいと思っていました。そのために技や知恵を発揮できるとしたら、これ以上の技術者冥利なことはありません。」

    そう語る永野が考え出したのが、地上8mの位置に工事用ステージを組むこと。通行人が行き交う頭上で工事をしてしまうのだ。周辺エリアは昼間は車両の進入が規制されているため、資材などはすべて夜間に搬入する。時間帯に応じて作業内容を細かく設定した綿密な工事計画が立てられた。もちろん、落下物防止などの安全対策は何重にも施された。

    「この工法には建築主も驚かれました。驚きは、期待以上のことに対する喜びや満足につながります。私たちは常にこの『驚き』に向けてチャレンジしているのかもしれません。『期待通り』ではなく、『期待以上』を実現したいのです。だからこそ、新技術や難易度の高い工法にひるまず挑戦するのです。」

  • 地上8mに工事用ステージを設置。
  • 「あるべき姿」を妥協せず追求するのが、棟梁精神

    外観は変わらない。営業も止めずに済む。多くの関係者が工事後の通天閣に夢を膨らませていた頃、計画設計の植田は未解決の課題に頭を悩ませていた。

    通天閣は入場ゲートや展示スペースなどが設けられた低層階と、展望台である高層階の言ってみれば二層構造になっている。そして低層階は、地上から続くエレベーターが設置された別の棟と、渡り廊下によって連結されている。脚部切断による免震工事は、低層階の下で行う。つまり、タワーそのものは免震工事が施されるが、エレベーター棟は従来のままなのだ。このことが植田の悩みの種だった。

    「地震の際、タワーとエレベーター棟の揺れ方が異なるという問題が起こるのです。その結果、建物に不自然なひずみが生じてしまう。これを解決する方法が必要でした。」

    植田は過去の事例や情報をかき集め、答えを探していった。社内外の関係者にもアドバイスを求めた。そんななかからふと思い立ったのが、電車の車両連結部分に用いられているジャバラ。自在に伸び縮みすることで揺れの異なる2つの車両をスムーズにつなぎあわせている仕組みが、今回の課題と共通していると感じたのだ。
    「考えて、考えて、考え抜く。その範囲は建物だけにとどまらない。だからこそ得られた答えだと思います。当社らしい仕事だと言えますね。」

    実はこのジャバラ構造は、永野いわく、「脚部切断の工事より難しい」とのこと。しかし、やはり永野をはじめとした施工メンバーは実現方法を考え出した。永野は言う。「どんなに難しくても、それが建物にとって最適な工法であれば、私たちは何があっても実現してみせます。『あるべき姿』は譲れませんからね。」

    この言葉は、通天閣の外観という「あるべき姿」を守り抜いた松原にも共通する。誰一人として、「工事をする以上、これぐらいは仕方ないだろう」とは言わなかったのだ。

    人々が通天閣に、周辺エリアに、さらには大阪全体に寄せる想い。それを受け止め、建築のプロとしてあらん限りの技と知恵を投入したプロジェクトメンバーの想い。それらの結晶として、工事が進む今も、そして工事完了後も、通天閣は「あの」通天閣のままでいつもと変わらずたたずみ続ける。

  • 「あるべき姿」を妥協せず追求するのが、棟梁精神

Employees Message

「想い」まで共有できることが設計施工の強み

当社では入社1年目を全員が寮で過ごしますが、この体験は想像以上に貴重です。根本で同じ価値観を共有できるようになるからです。それが仕事上の「頑張りどころ」に対する理解や共感、そしてサポートにつながる。今回のプロジェクトで発案したジャバラはその典型的な例です。 このプロジェクトでは、関わる人みんなが信念を持って「あるべき姿」を追求している。プロの仕事だな、と誇らしく感じています。

計画設計
植田 道則

社内の連携が強固だからこそ独自技術の性能を引き出せる

今回の工事にはエンジニアリング本部が開発したジャッキ&ロックダンパーが用いられています。この装置の性能を最大限に引き出すためには、開発陣との連携が欠かせません。社内で技術開発から設計、そして施2工までを一貫して担当できるからこそ、独自技術や最新技術をより良い状態で建物に活かすことができるのだと感じました。

構造設計
松原 由典

価値観を共有できる仲間とともに作品に情熱を注ぎ込む

地上8mのステージで工事を行うことができたのは、設計施工一貫体制だからこそです。コミュニケーションが緊密で、なおかつ、同じ想いを共有できるからこそ、難しい施工方法を実現することができたのです。人のつながりこそが建築の仕事であり、その点において、竹中は大きな強みを持っていると改めて感じました。

作業所長
永野 顕

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