プロジェクト・ストーリー

キャピタグリーン CapitaGreen

既成概念を超えていく “呼吸する”超高層ビルに
託した想いと技 — キャピタグリーン。シンガポールで花開いた、    環境性能と建築技術の新境地 —

2014年12月、シンガポールのビジネス街に地上階40建て(高さ242m)の超高層ビル「キャピタグリーン」が誕生した。その特徴は何と言っても、外観の55%が壁面緑化されたことなどが示す環境性能の高さだ。後に数々の賞を受賞し、高層建築と都市環境の新しい姿を提示したこのビルの誕生には、技術者たちの数々の挑戦が潜んでいる。

  • 施工期間中に工法を変更。前例がなくとも、「必要なことはする」!

    地下と地上。キャピタグリーンの建築において、双璧をなす難易度の高い工事が行われた場所だ。それはすなわち、建築施工の浅場英介が担当した工事でもある。

    シンガポールは独特の地盤を持っている。マリンクレイと呼ばれる地表に近い部分は、杭打機をのせるだけで地盤が動くほどの軟らかさ。その下のボルダークレイは、巨大な石がごろごろと混ざっている。しかも両者の境目は傾斜になっているため、杭打ち工事には細心の注意が必要だった。データを集めては分析し、適切な工事方法を検討する日々。おかげで地下工事は無事に完成したが、新たな問題が生まれた。
    」 「予想以上に時間がかかってしまったんです。しかもキャピタグリーンは、屋上に巨大吸気口・ファンネルを設置するという大工事が待っている。工事計画の見直しは避けて通れませんでした。」

    ここで浅場が導き出した打開策が、屋上の構造を当初予定のRCから鉄骨に変更するというもの。施工期間中に構造を変更するなど、通常ではあり得ないことだ。提案した浅場自身、「会議ではたまらなくドキドキした」と話す。しかし、作業所長をはじめ、プロジェクトのメンバーは浅場の背中を押してくれた。
    「たどり着くべきは、納期通りに妥協なき品質の作品を生み出すこと。そのゴールに向けて、前例や常識は関係ないのです。『どうすれば目標を達成できるか』を、常に全員が考え抜いたプロジェクトでした。」

    こうしてスケジュールは前倒しされ、ビルの顔とも言えるファンネルの工事が始められた。

  • 地上200mの巨大吸気口「ファンネル」は、誰も経験したことのない未知の領域

    ファンネルの高さは45m。超高層ビルの屋上に、さらに10階建てのビルを建てるようなものだ。この巨大構造物は、外気を取り込み、建物内部に送り込む役割を持っている。キャピタグリーンが「呼吸するビル」と呼ばれるゆえんだ。ファンネルが地上200mから取り込む清涼な空気は空調に活用され、ビル全体の省エネ性能を高める。それはつまり、シンガポールの環境評価ラベリング「Green Mark Platinum」をキャピタグリーンで取得するというミッションを抱えていた設備の伊勢田元にとって、工事の大きな山場がやって来たことを意味した。
    「ファンネルは開口部が大きいほど空気をたくさん取り込めます。それは同時に、雨水まで取り込んでしまい、内部にカビや苔を発生させるリスクを高めることにもなります。この矛盾する条件をクリアするために、技術研究所などと連携しながら技術開発に努めました。」

    開発は、雨水を「入れない」ことだけでなく、「入ってもカビや苔を発生させない」という観点からも進められた。そこから生まれたのが、防カビ性の高い塗料や冷却設備の導入だ。さらに、清掃のしやすさを高めるという、シンプルながらも効果的な対処法も盛り込んだ。
    「予算や工期の制約があるなか、誰もが前向きに議論していたことが印象的です。あきらめることなく、あらゆる観点から可能性を探っていく。そのことが周囲を巻き込み、難工事を実現するエネルギーになったように思います。」

    伊勢田をはじめとするメンバーの想いは、当初の狙い通り、Green Mark Platinum取得というかたちで結実する。さらに、世界的な賞であるCTBUHでも最優秀作品賞の受賞に至った。

  • BIMを大規模建築に初めて活用。「できる方法」を誰もが考え抜く

    ファンネルは巨大なだけでなく、三次元の複雑な形状をした構造物だ。このような構造物を短期間で正確につくり上げることは、ひと昔前なら不可能とされたかもしれない。しかしプロジェクトチームはやり遂げた。そこには、BIMと呼ばれる先端の建築技術が用いられていた。

    BIMは、3Dモデリングやシミュレーションをはじめとしたデジタル技術を建築プロセスに取り入れていき、生産効率を高めようという技術。すでに活用が進められていたが、キャピタグリーンほどの大規模プロジェクトで全面的に採用されたことはなかった。担当した建築設計の石澤宰には、「BIMを用いた新たな仕事の仕方を確立する」という役割が任された。
    「設計から施工、引き渡しまで一貫してBIMを用いました。三次元の設計、さらに3Dプリンタや3Dスキャナを用いたコミュニケーションは、今までに経験したことのない円滑なものでした。新たな時代の仕事の仕方が生まれていく様子を、まざまざと体験することができました。」

    もちろん、最初からスムーズにBIMの導入が進んだわけではない。試行錯誤を重ねながら、「BIMによる生産性の向上」という目標を目指していった。それはゆっくりとした歩みだったが、石澤は手応えを感じていた。
    「誰もが、『どうやったらできるだろう』という前向きな姿勢で議論していたんです。そこが、とても竹中らしいなと感じました。」

    実はキャピタグリーンの建築にあって、プロジェクトメンバーの間では「ミラクルを起こそう」という言葉が合言葉になっていたという。それぐらい、困難を極めるプロジェクトだったのだ。しかし、ミラクルは決して祈っているだけでは起こらない。持てる限りの知恵と技、情熱を注ぎ込むからこそ起きるものだ。それこそが、人が指摘した「前向きさ」「あきらめない姿勢」のことだ。

    今、キャピタグリーンはシンガポールの新たなランドマークとして、豊かな緑をまとって街に佇む。それは、ミラクルを起こすべく、人事の限りを尽くした技術者の想いと技の結晶でもある。

Employees Message

真摯に建築に取り組み、議論を尽くす会社

入社前、竹中工務店に対しては「まじめに建築に取り組んでいる会社」というイメージを持っていました。その通りの会社だと、このプロジェクトを経験することで改めて思いました。「良いものを作る」という目標を共有し、そのために役職や年齢、キャリアの壁を越えて活発に意見交換ができることも、竹中ならではだと感じました。

建築施工
浅場 英介

夢の実現に向けてステップアップしていける

世界の技術者と同じ舞台に立って議論し、競い合っていきたいと思ったことがプロジェクトに参画したきっかけです。ここで得た経験を土台にして、現在はアメリカに留学中。建築と環境技術という分野で世界をリードするアメリカの取り組みについて学んでいます。夢に向かって、着実にステップアップすることができています。

設備
伊勢田 元

“デザイン”に対する新たな視点を得ることができた

設計にはデザイン以上の要素があります。多くの人の様々な考えをまとめ、プロジェクトをマネジメントすることが設計には求められます。
これによってデザインはより優れたものになる。このことを海外のプロジェクトでは強く感じるようになりました。新たな仕事、新たな自分と出会いたいなら、ぜひ、海外でのプロジェクトに挑戦してください。

建築設計
石澤 宰