プロジェクト・ストーリー

PROJECT1 大阪木材仲買会館 OSAKA MOKUZAI NAKAGAI KAIKAN

環境保護や森林資源の維持・活用の視点から、近年、木造建築が脚光を浴びつつある。竹中工務店でも耐火性に優れた集成材「燃エンウッド®」を開発し、耐火木造建築物への対応を進めてきた。そして2013年春、燃エンウッド®を用いた初の作品である大阪木材仲買会館が竣工した。木材のプロである施主がこの建物に要望したことは、「“木の殿堂”を作り出してほしい」というもの。燃エンウッド®はもとより、ふんだんに木材を用いた大規模建築物へ挑んだ2人は、その挑戦の先に、木と建物がもたらす理屈を超えた魅力と出合った。

  • 傷めず、汚さず。部材を慈しむことで木の持ち味を活かし尽くす

     燃エンウッド®は「現しの構造材」だ。通常、鉄筋コンクリート造の建築物では、構造材であるコンクリート面は壁や化粧材などで隠してしまう。対する燃エンウッド®は表面の木そのものがデザインの一部として機能しており、むき出しの状態で使うことが前提となっている。まさに“木の殿堂”に適した構造材なのだ。

    しかしこのことが建築施工の平池拓美を悩ませた。「隠す」というプロセスが発生しないということは、燃エンウッド®の運搬や施工中に一切の傷や汚れを付けてはいけないことを意味するのだ。木はコンクリートに含まれたアルカリ性の水に弱いうえ、鉄筋に比べてはるかに表面が繊細だ。ほんのわずかな衝撃などが、建物そのものの見た目の美しさを損なってしまう。平池は工程ごとに作業条件に適した養生計画を立て、燃エンウッド®を守っていった。その過程では、モックアップを用いた検証実験も行った。これらはすべて、竹中工務店にとっても初めての試み。こうして平池は木の美しさを守り抜くとともに、燃エンウッド®を用いた施工ノウハウを確立していった。

  • 傷めず、汚さず。部材を慈しむことで木の持ち味を活かし尽くす
  • 検証を重ねて認定を取得し、耐火性と美しさを両立する

    都心に建つ従来のビルで構造体や外装材・仕上材に木材が使用されることはあまり多くない。なぜなら、耐火性や防火性が弱まってしまうからだ。木材を構造体に使う場合は内部構造も含めた耐火性の検証を行い、認定を受けた部材・工法を用いなければならなかった。この手間を省くために、「木目調」をプリントした壁紙を貼り付けることもある。

    しかし大阪木材仲買会館を“木の殿堂”たらしめるために、設計の白波瀬智幸は構造体をはじめ建具や壁など、随所に木を用いた設計を施した。そのことは、膨大な検証を行い、耐火性の問題をクリアしなければならないことを意味した。そこで白波瀬は社内のエンジニアリング本部や技術研究所を巻き込み、数々の検証実験を行っていった。実寸大のモックアップを作成し、燃焼実験も行った。相手は自然の素材である木。ときには予測とは違う実験結果も出てきた。しかし粘り強く検証を繰り返すことでデータを整理し、安全性を備えた木材の活用方法を見つけ出していった。その結果が、まるで木に包み込まれるような、大阪木材仲買会館ならではの温かい空間だ。

  • 検証を重ねて認定を取得し、耐火性と美しさを両立する
  • ぬくもり、味わい、肌触り。心へ訴えかける木の魅力

    木を理解し、木を活かすために平池と白波瀬はさまざまな実験や検証を行い、データやノウハウという「理屈」を得ていった。しかし、竣工した建物を前にして、2人は理屈では説明のつかないものも感じていた。木のぬくもりや味わい、肌触り、そして、そこから得られるやすらぎだ。入社以来いくつもの建物に携わってきた2人だが、今回得た感覚は、過去にないものだったと言う。

    木は自然の素材だ。自然に対しては、人間が積み上げた理屈などときとして通用しないのかもしれない。しかし、それでも自然を知ろう、自然を学ぼうと試行錯誤して理屈を積み重ねたからこそ、都心に木の殿堂が現れ、自然は人間に対して恩恵をもたらしてくれた。白波瀬は言う。「通りすがりの人など、想定していなかった人にまで建物を喜んでもらえています。こういう建物こそ、後世に遺っていくような気がします」と。2人が木と向き合った日々。それはまさに、人々の想いをかたちにし、作品を生み出す時間だったのだ。

  • ぬくもり、味わい、肌触り。心へ訴えかける木の魅力

Employees Message

燃エンウッド®の施工方法を確立

「燃エンウッド®を用いた初めての設計施工プロジェクト」とあって、施工は手探りな状態でした。そこからノウハウを蓄積し、施工技術の確立を目指しました。木という独特の部材、さらに意匠性に富んだプロジェクトということもあり、設計思想を理解することは非常に重要でした。そこで、設計担当者と一緒になって「現地現物」をいつも以上に徹底しました。

建築施工
平池 拓美

都心部に大規模な木の空間を生み出す

これまでは困難とされていた都心部での木造建築の実現を、設計という立場から推進していきました。設計にあたっては、木材のあたたかみを活かしながら、オフィスとしての機能性などを損なわない計画を心がけました。今回のプロジェクトは、建築への木材の活用、その結果としての環境保護や循環型社会の実現に貢献するものだと感じています。

設計
白波瀬 智幸