プロジェクト・ストーリー

PROJECT9 やわらぎ 森のスタジアム YAWARAGI MORI NO STADIUM

憧れを超えていく 受け継がれる「ドームの竹中工務店」の譜系 — やわらぎ 森スタジアム。夢が現実になったとき、新たな夢が生まれた —

愛知県豊田市。豊かな緑に囲まれた山あいに2013年秋、「やわらぎ 森のスタジアム」が誕生した。延床面積12,480m2、4,820席を有する大空間は、膜構造の屋根で覆われている。そう、「ドームの竹中工務店」のノウハウが遺憾なく発揮されているのだ。自然と調和し、利用する人たちにやすらぎを提供するこの場所。誕生までには、他でもない、ドームに魅了された技術者たちの挑戦があった。

  • デジタル技術をフル活用した新たな建築の手法を構築

    建築技術の林が入社した1999年といえば、日本5大ドームの最後の1件がまさに建設工事の真最中だったころ。「ドームに憧れて当社に入社した」という林にとって20代~30代前半の日々は、いつかやって来る次のドーム建築に向けて、技術と知識を蓄積する時間だった。実際、ジョブローテーションで配属された生産本部では、東京ドームを手掛けた技術者たちと人脈を築き、膜構造に関する知識を得ていった。  

    そんな林が満を持してドーム建築に挑むことになったのが、「やわらぎ 森のスタジアム」だ。夢の実現に気持ちが高ぶるいっぽう、林は冷静に自らに課されたミッションを見つめていた。
    「名古屋支店で検証が進められていた3次元CAD/CAMをこの規模のプロジェクトでも活用し、有効性を証明するという役割を担いました。成功すれば建築工事の効率化やスピードアップに大きな貢献ができるものでした。」  

    現在、設計や鉄骨など使用する部材の図面作成には、BIMが幅広く利用されている。当然のことながら、BIMはデジタルデータ。加工や他のデータとの連動性に関して大きな強みを持つ。そこで、建物全体の設計から施工部分ごとの設計、さらに部材の設計や施工図まで、連動したデータで貫いてしまおうというのが竹中工務店の取り組む3次元CAD/CAMだ。
    3次元ならではの「見やすさ・わかりやすさ」を全工程に展開できるだけでなく、同種の図面を2度、3度と作成するムダを省いていくことができるのだ。また、他のデータとの関連付けを行なっておくことで、使用する鉄骨などの量や費用を川上段階でいち早く算出することが可能になる。  

    この目標に向かって林が取り組んだのが、「パラメトリックデザイン手法」と呼ばれるもの。部材の配置方法などをすべてルール化し、そのルールを元に3次元モデルの作成を自動化する仕組みだ。いわば、技術者が自身の頭の中にだけ入っていた知識や知恵を、客観的なデータにしていったのだ。
    「大変な作業ではありました。でもこれにより、1つの数値を変えることで、影響のおよぶ部材の量や施工方法などがすべて瞬時に算出されるようになりました。効率の向上という点では計り知れない効果を生み出しました。」
    ※Building Information Modeling

  • デジタル技術をフル活用した新たな建築の手法を構築

細部の納まりまで「見える化」し、高品質と超短工期を両立する

構造設計の鶴ヶ野は、野球少年だった。初めて野球を観戦したのはナゴヤドーム。その大きさに驚いた。高校時代にはドーム見学に参加。グラウンドから全体を眺め、改めて大きさに驚かされた。そして、「自分もこんな建物を作りたい」と思うようになった。  

チャンスは意外にも早く訪れた。入社2年目、ジョブローテーションの一環として配属されたのが、当プロジェクトの作業所だったのだ。
「ドーム建築に関われるという喜びはもちろんありました。でも、工事の手順や品質の確保など、ハードルの高さも印象的でした」  

プロジェクトの中で鶴ヶ野を鍛えたのは、BIMだった。やわらぎ森の作業所では、鉄骨図や躯体図の作成を外注せず、工事担当者がBIMを活用し、自ら作成を行っている。 それはすなわち、作業所で日々、鉄骨や躯体と向き合っている鶴ヶ野に図面作成という役割が回ってきたことを意味した。 「施工管理を行いながら図面作成を行うことは、想像以上に大変でした。しかし、BIMを活用し、自分で図面を作っているからこそ、部材の適切な納まりや施工上の注意すべき部分がよくわかりました。
それが9カ月という超短工期で納得の品質を生み出すことにつながったと思います。憧れていた建築物に携われたというだけでなく、将来に向けた大きな財産を得ることができたプロジェクトでした。」

  • 大空間への憧れは、2020年へとつながった

    林は今、活躍の舞台を東京に移している。取り組んでいるのは、2020年に開催される世界的競技会で使用されるスタジアムの新築工事。もちろん、3次元CAD/CAMをフル活用して効率的な工事を指揮することが林に求められている役割だ。林は言う。
    「国家規模とも言えるプロジェクトに出合えるのは、人生に一度あるかどうかのチャンスです。メインスタジアムに携わりたいですね。」  

    この言葉は、鶴ヶ野の言葉とピタリと重なる。ドームに憧れて当社に入社した2人は、ドームに携わることで、新たな目標を見つけた。
    建物はときとして、人の人生に大きな影響を与える。そんな力を持った建物を、当社では「作品」と呼ぶ。次は、2人が生み出す作品が、誰かの人生に影響を与えていくことだろう。

  • 大空間への憧れは、2020年へとつながった

Employees Message

思い切った計画の変更・改善ができるのは、設計施工ならでは

このプロジェクトは、当初の計画から設計内容などが大胆に変更しながら、より良い建物の実現を目指しました。限られた期間で、生産性にも配慮しながら対応可能なのは、設計と施工の両方を担当しているから。 さらに一貫体制は、互いの想いを理解し、協力し合って実現するという風土につながっています。すぐれた建物は、設計と施工、ひいては関係者全員の熱意の集合体だと改めて感じました。

建築施工
林 瑞樹

相手の期待を上回る提案の積み重ねが、作品へとつながる

当社では、お客さまの要望をその通りに実現するだけでは誰一人として満足しません。要望通りは当たり前。「もっといいものにするには」という提案をどんどん行なっているのです。それが積み重なり、「当社にしかできない」という仕事が生まれている。そのことを目の当たりにしたプロジェクトでした。

構造設計 
鶴ヶ野 翔平