DESIGN WORKS Vol.36
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Interview02近年、都市のストック利用を含めた商業施設が、人々の流れを大きく変え、賑わいを生み、都市の在り方をも変容させる重要なファクターとなってきています。本号では、竹中工務店設計部の近作の中から、大規模商業施設をはじめ、歴史的建造物をリニューアルした店舗や集客施設を特集しました。そこで近現代建築、建築史、都市論など幅広いテーマで執筆されている磯達雄氏をお招きし、これからの商業施設、都市のストック活用の在り方と可能性についてお話を伺いました。都市と建築の関係性 今回は商業施設とリノベーション施設の特集です。まず都市と建築との関係を考えたときに、何らかの空間的・時間的影響を都市の文脈から受けて建築が出来ていると考えられます。それと同時に建築が立ち上がることをきっかけとして都市が再編されていくという、それらが相互的に影響し合いその均衡が現代の風景を作っていると考えられます。それらの関係性を軸として本特集の商業施設・リノベーションの今後の在り方と可能性を探っていけたらと思います。まずは、「枚方T-SITE」(以下 T-SITE)、「東京楽天地浅草ビル」(以下 楽天地)、「通天閣レトロフィット」(以下 通天閣)をご覧いただいてのご感想をお聞かせください。磯 T-SITEは駅前という都市の中心に対して建築が全面的に開いた建ち方をしており、それによって内部の活動、モノ、ヒトの流れが視覚的にも実質的にも都市と連続していく印象を覚えました。百貨店のようなこれまでの商業施設は概して壁で閉じてしまい、内部での体験は楽しいかもしれないが、その楽しさがなかなか街の人に伝わってこない印象がありましたが、T-SITEの建ち方を体験して、商業施設と都市がこのように有機的に結びつくデザインができるのだと改めて発見できました。また建ち方だけでなく内部のコンテンツのレイアウトも印象的で、どこまでが本屋で雑貨屋でカフェなのか、境界線が曖昧で、それらがずるずるとつながりあいながら展開しています。そこでは誰もが自由に場所と時間を使える。商業施設ながら、モノを提供する場所というより、出来事や経験・体験を提供する場所という印象を受けました。それによりこの建築に、引いては都市に参加しているという実感を覚えました。新しい商業施設の在り方だと思います。また、楽天地においても、歴史ある浅草の繁華街と浅草寺へ向かう通りのスケール感に合わせてヴォリュームや広場を構成しており都市との関係の取り方が印象的でした。道に向かってどうやってアクティビティを開いていくかが重要だったと思いますが、道から直接アクセスできる飲食店が連続し、道にまで飲食を楽しむ市民がいたりと、都市に対して賑わいを意識的に繋ぐことを図っている印象を受けそれが効果的に働いていたと思います。通天閣はもともとの建ち方として、交差点の上に巨大な構築物をつくるアイディアのインパクトがあります。都市と構築物の関係を維持・更新しながら、その関係を免震という先端技術を使い継続させていくことは都市にとって有効なあり方だと思います。下部の構造体の改修で完結させることで遠景ではかつての姿を保持することに成功しており、大阪の人だけでなく世界中の人に愛されていくランドマークとして、使い続ける方法を設計者の立場からうまく提案し、実現できています。 これらの3作品は異なるアプローチながら都市との関係の取り方が特徴的だと思います。都市と建築の関係のあり方について重要なことは何でしょうか。磯 ハルカスの展望台も見せて頂いたりして感じたことですが、街を見晴らす場所というのがすごく重要なことなのではないかと感じました。そこから街を見ることで自分の街を知り、好きになるきっかけになり、もっとよくしていこうと思うきっかけにもなる。街を俯瞰して見ることができる場所というのをどれだけ作られるかが今後の都市を良い方向へ更新していく上で効果的ではないかと思います。今回の通天閣ももちろんそうですし、T-SITEも中で寛ぎながら枚方の街を見晴らすことができる。さらには見る見られるの一定の緊張感をもった相互的な関係も生まれており、そこが新しさに繋がっていると思います。信用を失いつつあるデザインの力 商業施設には今回掲載している、EXPOCITY等のショッピングモールというビルディングタイプがありますが、どのようにお考えでしょうか。磯 ショッピングモール批判のようなものは言われていますが、ある種テーマパークに通じるところがあって、全てがデザインされた空間に囲まれた場所で時間を過ごすというのは一つの楽しさとして肯定できるのではないかと思います。しかし、効率化やコスト磯達雄氏に聞く都市を更新・再生する商業施設Interview枚方T-SITE写真:ナカサ&パートナーズ 中道淳
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