DESIGN WORKS Vol.36
7/36

Interview05います。これは竹中がやったのだとかこれは他社がやったのだとか。実際に設計している側から見て竹中らしさを感じていますか。   昨今はその違いが小さくなってきていることを実感します。これからの組織がアイデンティティを見出していくためには何が必要でしょうか。磯 大手の建設会社や設計事務所の場合、あらゆる種類の建築を手がけます。そして現在では、「ウチのやり方はこうですから」とクライアントに押し付けることもできません。なので組織として明解なアイデンティティを打ち出すことは難しいと思うのです。それが現れるとしたら、組織に属するひとりひとりの建築家の作品群においてかもしれません。村野藤吾は「自分の作品は、99%において施主の言うことを聞いてつくったもの」という意味の言葉を残していますが、その残りの1%に自身のこだわりをいかに高度なレベルで発揮できるかどうか、その積み重ねがアイデンティティというものを生んでいくのだと思います。組織の総体として、それは見えなくなってしまっても構わない。一般に竹中工務店の設計施工作品というと、「丁寧につくられた端正な建築」という印象がありますが、そのことが主目的化してしまい枷になっているなら、それを超えた建築のあり方を個人が組織の中で志向する。そこに挑戦すべきフロンティアがあるのではないでしょうか。   本日はどうもありがとうございました。(聞き手:米正太郎・関谷和則・吉田直弘・鎌谷潤)※1 ロバート・ベンチューリ1925年 アメリカ・フィラデルフィア生まれ。モダニズム建築を“Less is bore”と批判し、ポストモダンを提唱した。1991年にプリツカー賞受賞。代表作に「母の家」(1963年)、主著に「建築の多様性と対立性」(1966年)、「ラスベガス」(1972年)がある。※2 ポストモダニズム近代的なデザイン(モダニズム)に反発して、1970年ごろから始まった、歴史上のさまざまな様式を引用するデザインの考えかた。※3 大髙正人1923年 福島県生まれ。1960年に川添登、粟津潔、菊竹清訓、槇文彦、黒川紀章、浅田孝、栄久庵憲司らと共にメタボリズム・グループを結成。1962年 大高建築設計事務所設立。代表作に坂出人工大地(1967年)、広島市営基町高層アパート(1976年)などがある。磯 達雄(いそ たつお)1988年1988年2000年2001年-2002年-2008年-共著書名古屋大学工学部建築学科卒『日経アーキテクチュア』編集部フリーランス桑沢デザイン研究所非常勤講師株式会社フリックスタジオ共同主宰武蔵野美術大学非常勤講師『昭和モダン建築巡礼』(日経BP社、2006)『ぼくらが夢見た未来都市』(PHP新書、2010)『ポストモダン建築巡礼』(日経BP社、2011)ほか

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る