DESIGNWORKS Vol40
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Interview04便利なので、資本主義的に考えてガラスは良い、経済的には良いということで選択されています。しかし環境的に考えると、すべてガラスというのは環境にはやはり良くない。だから彼らはガラスを使う事に対する環境問題としてどういうものなのかを根本的に考え直しています。つまり環境ということに対し室内的な環境なのか、建築主の安全・安心としての環境なのか、ある種国を超えた環境問題に対してのものが前提なのか、それによってコンピューターの使い方が変わってくるのです。少し話はずれるかもしれませんが、コンピューターをどういう風に位置付けるのかという意味では、解析があって、最適化があって、そういう工学的な手法の一環としてではなく、もうちょっと違った、人間工学ってあるけれど、もう少し文化的なスタイル、そういうところでのコンピューターデータが有用であることに、私は凄く興味があります。ギミックかもしれないけど、感性的な空想を沸かせるというか、そちらの方が、コンピューターの使い方としては、今の時代ではいいのではないかなと思います。工学的ではない使い方とは、気持ち良い=環境がいいという概念ではなくて、人間がどのような時に感激するのかや、わくわくするといった、人間の豊かさといった概念のようなものです。単一的で工学的に理論武装していくとすごく説得性があるんだけども、そのかわり結構欠けてしまうところがあって、最終的につまらない結果が出来てしまうことがある。例でいうと私がニューヨークのプリンストン大学在学時の先生であったジェシー・ライザー氏が建てたドバイのO-14 Towerでは、構造的にもいろいろ面白いんですが、面構造の壁にいろんなたくさんの穴があって窓が入っているんですけれど、最初全部コンピューター上でデザインしたんです。最適化を掛けながらいろんなソフトで。けれどもやっぱりダメだと。見た時にちょっとこれ変だねと、最終的には全部見て模型を作り、やはり人の感性的なところで全部判断したそうです。最適化と感性とパラメーター小渕 感性とはやはり人を中心として最終的にはパラメーターを決めていかないといけないと思います。BIMの凄いところって最適化するという事なので、もちろん経済的にも材料的にも最終的には環境に繋がってくるかもしれませんけど、とにかく最適化が出来る、けれども人間的な最適化と物理的なものとは必ずしも一致していないんですよね。そこをどういう風に調整するのかという事をやっておかないと、そろばん弾いて建築主は大喜び、だけれども使いづらいとかやはり居心地が悪いということがでてしまいます。だからどこで人のパラメーターが入ってくるのか、感性なのか、スパンが長い文化的なものなのか。いろんな人間の持つ難しいところを、コンピューターを使う時に注意しないと、簡単にそれらがどんどん失われてしまう。この間化学分野でのコンピューターの活用についての話をしていた際、まさしくAIに最適化される時に、将来的に何に可能性もしくは価値があるのかということについては、最適化できないそれらが今後出来てくるという話になりました。今は、最適化する事によって価値が上がるという観念から、最適化することが当たり前になってきた前提で、何が不合理であって何が矛盾しているものであって、というのも人間は根本的に矛盾してる生き物なので、そういった矛盾性や不合理性などコンピューターが苦手な所に価値がある事を、どういう風に今後考えなければいけないのかということだと思います。例えば人間味のある何かドロドロしたところを、どういう風に入れていくのがいいとのかいう話です。最適化によって要求される施工技術小渕 現地でも話をしましたが、伊東豊雄さんと仙台メディアテークが竣工して話す機会があった際、彼の中でコンピューターをいろいろ使って試みたプロジェクトで、当時コンピューターを使えば、設計も施工も簡単になるし、全てが上手く回るようになるという考えでデザインをしていましたが、実際は最適化を行うことによって今までに無かった仕事が生まれてくると言っていました。コンピューターを使えば使うほど、施工技術に求める水準が上がり、全部デザインされて納まっているけれども、実は専門職の人をそこに連れてくる必要があるといったようなことが起き、今までに出来なかったことをやらなければならないという新しい現場の問題が生まれてくるという事に、初めて気が付いたとのことでした。ということでコンピューターを使えば、施工の技術が要らなくなるとか、簡単になるのではなくて、全然違った次元での新しい職能の人たちがそこで生まれるというような話で、伊東さんは面白いという事に気が付いたとのことでした。拝見した2作品も、すべて同じような収まりで、ピシッとしているのだけれども、どういう風に施工したのか、新しい技術が生まれていたのかが気になりました。家具屋さんがつくるようなロンドンのシティ・ホールO-14 Tower写真:RUR Architecture DPC

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