DESIGNWORKS_Vol50
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Interview03ハイラインや神田の万世橋もそうですが、リニアな空間は都市の構造が変わると生まれる場所で魅力的なダイナミズムを感じます。全体を通してですが、今回3作品とも商業施設でしたが、セミパブリックなプログラムといえます。資本の価値に換算しにくい外部のパブリックススペースをどの作品も、それぞれのスキームの中で豊かに生み出していることが特筆すべきことで、都市全体の価値を上げることに貢献していると思います。アーバン・インターベンション 都市の持つ価値にパブリックスペースの豊かさが寄与するのではないかというお話がありましたが、その辺りをもう少しお聞かせください。小林 江戸時代では、街にパブリックスペースは橋のたもとぐらいしかなく、広場はなかったと言われています。槇文彦や丹下健三たちがそういうスペースの重要性を説いてきたけど主流にならなかった。その後、公開空地制度等が生まれましたが、オブジェだけで利用できないスペースが生まれたりとうまく機能してこなかった。最近、ウォーカブルな街というのを国交省が提唱し、気運が高まってきつつあります。やはり歩いて楽しい街というのがこれからすごく大事なことだと思います。パブリックスペースではエリアマネジメント※2が大事なのは変わりないですが、今回の3作品のように若い人たちやマダムが自然発生的に集まってきている姿をみると、それはマネジメントによる効果よりも、都市全体として周囲に自由に寛ぐことができる場所が決定的に不足していることが起因していると思います。近くの表参道では歩行者天国もありましたが今はもうありません。「MIYASHITA PARK」では、潤沢なパブリックスペースがあるにも関わらず、集まりすぎて私自身が座る場所もないくらいでした。(笑) それくらいパブリックスペースは求められている。さらに言えば、コロナ禍以降、大きなプレートのオフィスの必要性が揺らいでいると思います。家と都市中心部の間にサテライトオフィスのスペースが欲しいとの声が多く出てきていますね。家で働くのは公私が混同するので、家とオフィスの中間地点くらいの距離感がいい。長距離の通勤をやめて、少し家から離れた場所で働くということはこれからのワークスタイルになってくると思います。その受け皿としてパブリックスペースはさらに求められてくるのではないでしょうか。ですので、Wi-Fiや電源などそうしたインフラを整えていくことも非常に有効になると思います。また、私たちは「アーバン・インターベンション」と言っていますが、都市に介入して人の流れを変えたり、動きを加速させたりして都市を活性化する、都市に対する触媒のように機能する施設は今後さらに重要になってくると思います。例えばニューヨークのハイラインはそのパブリックスペース自体では、経済的な活動はそこまでないですが、その周辺地域ではアートギャラリーやコンドミニアムがどんどん増えたりと、周囲の地価を上げることに成功しています。具体的にはハイラインの端にはホイットニー美術館がありますが、両端に魅力あるものができることで人が往来する「ダンベル効果」が生まれ、不動産価値を上げていると思います。同じようにリニアな空間の「MIYASHITA PARK」でも同様なことが起こりうるのではないでしょうか。芦原義信のソニービルは銀座の一等地で一階の角をイベントスペースとして開放することをソニーの盛田さんに反対されながら実現しました。結果的に銀座のまちの人の動きを変えました。解体された後も、その思想は銀座ソニーパークとして受け継がれています。「WITH HARAJUKU」や「渋谷PARCO」でも、竹下通りへとつながる新たな動線を作ったり、廃道した道を有効活用していたりと、人の流れをうまく変えていて、まさに「アーバン・インターベンション」の実践をされていると感じました。その効果は数年から十数年かけてじわじわと周辺に波及すると思います。まちに開くこと/建築の複合性 先生が設計される上で強く意識されていることはありますか。小林 姫路駅北駅広場整備事業を進めていく上で実感しましたが、ポンピドゥー・センターのように建物はやはり外に開くべきだと思います。そこから広場や周辺建物とリンクさせていくところが非常に大事で、そういう場所で人が出会う。違う価値同士が出会い、新しいものが生まれてくると思います。そういうきっかけとなる場をつくることが重要だと思います。オンラインではなくオンサイトで出会うことが大事。それを捨ててしまうと建築をつくる意味、街を歩く意味はもうなくハイライン姫路駅北駅広場整備事業
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