DESIGNWORKS_Vol50
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Interview04なると思います。タイのチュラーロンコーン大学とオンラインでワークショップを6月に行い、敷地をストリートビューで見ながら進めましたが、文脈も読み取れず想像だけで進めていくというのはとても寂しいものでしたね。場所が求めているものというのはオンラインだけではやはり見出せませんね。あとは、様々な人が使え楽しめる建築の在り方を考えるということも大事だと思います。「オフィス」や「住宅」と、使い方をフレーミングして建築の多くは出来ていますが、それでつまらない街が多くなっていると思います。それは用途地域等の法規制の問題でもあると思います。やはりもっとマルチユースなものが生まれる法規にしていかないといけない。よく学生には「建築には複合性が大事だ」と伝えています。例えばバーナード・チュミがフランスの国立図書館のコンペで全然違うものをマッチングさせることを提案しましたが、そういう面白さが今の法規ではできないんですよね。これからの建築家がやるべき仕事はそういうビルディング・タイプを改革することかもしれません。そういう意味ではコロナ渦がいいきっかけになると思います。住まいで働けたり、ホテルが病院やオフィスに使われたり、用途に限らないで色んな事ができることが分かった。今までの建築計画学が図書館、学校など、専門家が用途毎に資料集成をつくって、それに従いなさいということで分断されていましたが、この機会に用途地域やビルディング・タイプなど、先人が便宜的に決めたフレームをもう一回見直す。違うものを掛け合わせて新しいものを生み出す。それは「用途のリノベーション」と呼べるかもしれません。用途のリノベーション 「用途のリノベーション」はとても印象的な言葉ですが、それを意識した上で建築はどうあるべきでしょうか。小林 様々な変化の機運が高まりつつある現代では、時間が経過していく中で、社会的、クライアント的要求が変化していくことも見据えて設計をする必要があります。近代の図書館や美術館は用途と空間が対応しすぎて、時代の要求により用途の変化があるとすぐ壊されてしまいます。例えば、赤坂プリンスホテルは20年で解体されてしまいましたが、あれは階高が影響したと思います。丹下健三の旧都庁舎もそうでしたが、もう少し高ければオフィスへのコンバージョンも可能でした。かえって骨格がシンプルで大らかな古典建築の方がすんなりと使いまわしができたりします。つまり時代変化を見据えた建築の骨格が重要です。変化に対応できるスケルトンとインフィルのシステムの構築、それは建築のあるべき役割だと思います。メタボリズムの考え方はそういう点で悪くはなかったと思います。マンションや住宅で、とても凝ってつくってしまうと、もう次の買い手がつかないなどそういう話がよくありますが、かといって普通のnLDKでいくらでも再販できるというのも無責任です。しっかりとストック型で生きながらえる新たな視点での建築を構築する必要があると思います。そのひとつの手がかりとしては、「サーキュレーションと平面組織」という授業をしたのですが、やはりツリー型の動線ではなくて、セミラティス型※3の回遊できる動線にすることで、建物の用途が変わってもリノベーションで利用することができることが分かりました。自由な動線を構築することは、そういう点では有効だと思います。また、建物単位ではなく、敷地周辺も含めた建築の骨格の在り方も大事で先ほどのアーバン・インターベンションも成熟した都市単位でのリノベーションといえますね。そういう2つの視座で廃れないサステナブルな建築の骨格を考えることが大事だと思います。渋谷駅再開発 渋谷駅中心での再開発が盛んに行われ、渋谷が変わってきています。今の渋谷についてどうお考えですか。小林 渋谷の再開発は、かなりのヴォリュームでオフィスビルを乱立させている風景は疑問です。一応ビルの側面を照明やサイネージ、パネル等で化粧していますがやはり表層的であることは否めず、結局電気装置頼みであるところも本質的ではないように見えます。立体的に展開した面白い都市の在り方もあり得たのではないでしょうか。ちなみにハーバードの学生に渋谷の建物でどれが好きか聞くと、多くの学生がヒカリエは面白いと答えていましたが、それが現実なのかもしれません。渋谷の再開発群をみると、外装のディテール・ワークの重要性を実感します。外装の肌理は都市の風景を決定づけていて、そこを疎かにすると都市全体の質に影響を与えます。ある意味その解像度の粗い在り方が渋谷的なのかもしれませんが、それぞれの敷地の持つ
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