DESIGNWORKS_Vol50
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Interview05魅力を、これらの建築群がどれくらい掘り下げて引き出しているのだろうかと考えると疑問符が付きますね。   最後に竹中工務店について、意見や今後のアドバイスを頂ければと思います。小林 他の大手ゼネコンの中での竹中工務店の違いは、株式を公開していないところが特徴的ですね。株式を公開しないことで、設計には直接関係のない、株主の存在を考えずに設計ができる環境です。ゼネコンをめぐる建築界の流れとして、欧米ではコンサルタントは設計を守り、施工者は悪いという構図があったり、主流となりつつあるデザインビルドについても槇さんをはじめ反対の意見もあるなど、建築界において影響力のあるゼネコンの立場というのは色々と試されていると思います。その中で、株式を非公開であり続ける竹中には、設計者としての良心を保持したまま、設計の質を落とすことなく突き進んでもらいたいですね。儲けが第一になると、施工が強くなるなどバランスが崩れ、クオリティに影響がでる。その中で設計部のこだわりがどこまで行き届くか。   設計の品質とともに建築主の視点に立つことも忘れずに取り組んでいくことが大切ですね。小林 丹下事務所に在籍していた頃の話ですが、丹下さんにくる仕事は施主から是非お願いします、とくるものかと思っていたのですが、そうではなくてひたすら腰を低くして施主に説明し、後から自分のデザインを理解させるやり方でした。A、B、Cの3案をつくってどれでもいいですよと、相手の顔を見ながら機能の説明をするんですよ。デザインの話はその間一切しない。どうぞ選んでくださいと。そうして施主の意見をくみ取って、次回までにAとBを合わせた案を持ってきましょうとなる。そうすると施主が感動しちゃうんですよ。威張らず、施主を設計に参加させる人でした。ただ、施主のニーズを理解して、そのまま聞いている訳ではなく、それの数倍返しをする。やはり建築が惹きつける強さ、これは言われた通りやっているだけではダメなんですね。そのしのぎの削りあいが建築の魅力につながるものだと思います。   本日はどうもありがとうございました。(聞き手:関谷和則 ・鎌谷潤・陳小可)小林 正美 (こばやし まさみ)/明治大学教授(工学博士)1977年1979年1979-85年1987-88年1989年2002年現在主な著書  東京大学工学部建築学科卒業同大学院修士課程修了丹下健三・都市建築設計研究所フルブライト奨学金により米国留学ハーバード大学大学院デザイン学部修士課程修了東京大学大学院博士課程修了ハーバード大学客員教授アルキメディア設計研究所主宰明治大学教授(工学博士)『市民が関わるパブリックスペースデザイン』(エクスナレッジ 、2015)『InterventionsⅡ』(鹿島出版会、2003)など※1 微地形人間の観察の範囲には十分入るが普通の地形図では十分表現されない程度の地形を表す。槇文彦が著書「見えがくれする都市」で場所の固有性を浮かび上がらせる手がかりとして提唱した。※2 エリアマネジメント地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み。※3 ツリー構造/セミラティス構造クリストファー・アレグザンダーが考案したシステムモデル。セミラティス構造(互いに関係をもつ物質的要素の集合【セット】の重なり合いを含む構造)のごく特殊なひとつの場合がツリー構造(【セット】の重なり合いをまったく持たない構造)と定義している。

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