DESIGNWORKS_51号
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Interview03パビリオンとして制作したgathering(2010)写真:杉田宗  当社だけでなく現在業界全体でBIMを促進している理由は「新しい働き方」の側面だと思います。本日見学いただいた三栄建設はその両方を獲得しているといえるのではないでしょうか。混ぜ合わせていると思いますが、パビリオンやインスタレーションから本格的な建築にシフトしている段階だと見ています。そこで必要になってくるのが奇跡のコラボレーションだと思います。それが起きた瞬間、急に混ざり合い、新しいものを獲得できるのだと今日まさに実感しました。ETHのような技術も、研究していることが世に生まれる道筋ができたときに爆発的に広がっていくのではないかと感じます。最終的なツールがロボットではなかったとしても、現時点で使われている技術や方法を最大限に生かす必要があります。そのためには分化された関係者の間をつないでいくことが必要になり、最大限に情報の共有を行うことが重要だと感じています。それは翻訳家のような役割かもしれません。大学での基礎教育杉田私の研究室で学生と行った実践として、地場の住宅メーカーと協業しデジタルファブリケーションを活用した木組みのパーティションの製作をしたプロジェクトがあります。3軸のCNCでつくれるものを前提として、ライノセラス・グラスホッパーでデザインしながら、木材メーカーのプレカット工場でうまく加工できることやミスを減らすことも念頭にデザインに落とし込みました。その中で、生産側はいつも決まったかたちで加工しているため、1個1個違うかたちを提示すると困ってしまう状況が生まれましたが、そこを学生が自ら組んだプログラムで生成できることを提示し、会話をすることで製作が可能だという認識を共有して、実際の作成に進んでいきました。このように今は繋がって山根木材福山支店写真:杉田宗いないところを繋げていく作業が非常に重要です。学生にとっても自分のコンピューテーショナルデザインやデジタルファブリケーションのスキルがそれらを繋いでいくと実感することで、より熱中して作業ができることがわかりました。このように繋ぐ役割を重視しているため、コンピューターの技術を設計者全体で上げるべきだと思っています。今自らが行おうとしている作業は、実はコンピューターで代替できるのではないか、という感覚を養うためにも、1年生の最初からグラスホッパーを教えているんですよ。  まるで言語を習得するように、プログラミングを学ぶ。という感覚に近いように感じます。杉田ライノセラスのようなモデリングソフトを教える前にグラスホッパーを教える。プログラミング的な思考を先に入れることで、モデリングソフトでひとつずつ立ち上げる前に、グラスホッパーだったらもっと効率良く立ち上げられるのではないか、と気づいてほしいと思っています。例えば極端な例ですが、先ほどのエージェントベースデザインのように、1000個、2000個のエージェントが自らの位置を毎秒60回チェックする状態は、膨大な時間の効率化につながっています。そのパワーがコンピューターにはあるのだということを知っておくことが大切だと感じています。また、講義を実践して感じたことは、学生にとっての課題は提出してその場で完結してしまうため、グラスホッパーを用いた多様な検討の価値が根付きにくいことです。そのため、先にグラスホッパーのような「新しい建築」をつくるための「新しい働き方」杉田私が近年、コンピューテーショナルデザインという言葉でお話しする際に意識していることは、コンピューテーショナルデザインやデジタルファブリケーションを使って「新しい建築」をつくるアプローチと、「新しい働き方」を見つけ出すアプローチの2つを明確に分けるべきだということです。BIMはほとんどの場合が「新しい働き方」を議論していると思っています。一方、SANAAの作品や伊東豊雄さんの仙台メディアテークなどは「新しい建築」です。これからの時代は、これら2つを同時に獲得できるようなアプローチじゃないとこれまでにない新しい建築は生まれない様になってきていると思います。両方を獲得しているわかりやすい事例はETH※2とかMX3D※3によるコンピュテーショナルデザインとロボットを使って建築をつくっていく方向だと思っています。もちろんこの裏には泥臭い今まで通りのアナログのものがあるんですけれども、ただ今までの泥臭さとは違う、まったく新しい働き方を獲得しようする姿勢も見られます。杉田いい塩梅に混ざり合っていると思います。さらにこれが混ざりあわないとすごいものはできないんじゃないかなという風に思います。例えば前段のETHでの研究はうまくGramazio Kohler ResearchによるR-O-B写真:Gramazio Kohler Research

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