04Interviewスペースに子供がたまに遊びに来たり。そういうワークとライフの混ざり方を許容したい。一般的にはセキュリティの問題があり、事務所にも家族が来たらいいのに来れない。世界的にはダイバーシティの重要性が高まりつつあり、その転換も生じつつあります。しかし、日本人はセキュリティという規則に固執しようとするため、そのセキュリティが様々な機会を奪っています。例えばアメリカでは最後は自分たちで判断するが、日本ではルールで判断しようとする。人かルールか、最後にどちらを根拠にするかというときにルールを信じてしまう。私自身が様々なワークプレイス構築に関わる中で、日本人は今後も変われないのではと絶望することも多々あります。ルール通りにやることが成功体験となっている人にとっては、それをやめることは自己否定になりかねないですから。役所なんか特にそうで、上司が前例主義で、新しいことやろうとしても最後はつぶされてしまいまい、仕事場に新しいことがやれない空気ができてしまいます。けれども、なんとかしないといけないと思っている人は増えている。例えば、ルールが浸透していない若い人の場合だと、かえって生産性の高いクリエイションが生まれやすいのは事実です。仲 仕事に遊びを混ぜた方が、面白い発想は生まれやすいですね。そもそもアイデアとは、別の視点から自分を見つめなおしたときに浮かぶものですね。「メタ認知」という心理学的概念がありますが、メタレベルで自分の状況を認知することで、見える世界がガラッと 業務において人を管理する側が、変わることも必要ということでしょうか。変わります。メタ認知は、緊張状態ではなくリラックスしなければ生じません。一般的なオフィスは緊張状態を前提としています。単純作業なら緊張しているほうが効率がよいでしょうが、緊張していたら創造はできません。上司が近くにいて常に部下を管理できる状況だと、作業は進むけれども創造は進みません。あるいは作業も創造も進まない。ですから、企業が創造性を重視するのなら、管理する側が意識を変えなければいけません。具体的な例をあげましょう。ふつうオフィスは働く場所ですから遊んではいけない、昼休み以外は寝てはいけない。しかしどうしても眠くなった時に寝なければ、効率性は落ちてしまう。眠いのを我慢して仕事が進まないよりは、短時間でも仮眠した方が結果的に仕事は進みますよね。自分が眠い時に寝る方がよいことは分かっていても、社内や制度など様々な問題が阻んで実行できないのが現実でしょう。経済学者のシュンペーター※1は「イノベーションとは、功利性ではなく、人間として最も根源的な能力を集中して行う行為だ」と言っています。好きな仕事をしている人はこのような集中ができると思います。しかし、仕事が好きな人ばかりであれば管理する必要はないが、そうでない人もいます。そのような人も含めて、全体としてクリエイションしなければならない。そこのバランスの見極めが難しい。仕事に自由を見出せることができればよいが、それができる人ばかりではありません。新しいアイデアが出なくなって停滞したら、企業としては致命的です。インプットを絞り切れなくても、それ以上のアウトプットが生まれるならば、企業として、経営者も従業員も共に幸福ですよね。企業としては、結果的に 働き方というソフトに対し、建築というハードができることは何でしょうか。仲 建築の力を借りることによって、その困難を少しずつ変えられると思います。建築とは、人間の行為をデザインすることです。52号掲載プロジェクトの多くが、自然の力も借りながら人間の行為をデザインしています。様々な行為を促すような建築的な仕掛けを随所に仕込んで、その結果、オフィスでの働き方が少しずつ変わっていきます。そして、そのような建築があちこちにできれば、社会も組織も徐々に変わっていきます。社会を変えることアウトプットの質や量が上がればよい、そのことに気付き始めている経営者は増えています。けれども一方で、長年続けてきた管理体制を変えられない企業の方が多いことも現実です。その現実を変えるための具体的な手法のひとつが「チェンジマネジメント」です。マネジメントを変革することをサポートします。どういう風に変わったほうがハッピーなのかを従業員みんなで議論する。オフィス空間というハード面を計画する前に、働き方というソフト面でワークショップを行います。オフィス空間が変わっても、働き方が変わらなければ、組織全体で生産性が向上しなければ意味がない。働き方をとことん議論してみんなで決めます。これは実に地道で時間のかかる作業です。半年から1年かけてやります。自分たちがどう変えていくのかを明確にし、障壁となるハードルを明確にし、どう乗り越えるかをワークショップを通じて一緒に模索する。建築が創造性を誘発する
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