DESIGNWORKS_No52
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Interview05ピクサーオフィス写真:Worker’s Resort(https://www.workersresort.com)より転載は難しいですが、建築から変わることは可能だし、有効だと思います。スティーブ・ジョブズは、トイ・ストーリー2をつくるときに新しいオフィスを作りました。トイ・ストーリー1のように部署ごとにオフィスが分断するのではなく、センターに大きな広場をつくって、すべての部署を広場に面するように配置し、交流せざるをえない空間構成にしました。クリエーションとはピンポイントで狙うものではなく、無駄にも思える膨大なコミュニケーションを発生させて、そのなかの100個あるいは1000個に1個だけでも、アイデアが創造されたら成功です。偶発的なコミュニケーションを起こすために、ジョブズは建物から変えようとしたのです。「一緒に働く」ことの意味(聞き手:米正太郎・原康隆・藤原健太・浮田長志・奥村崇芳)   最後に、ワークプレイスという観点から、竹中工務店設計部に今後期待することを教えてください。   本日はどうもありがとうございました。ために会社の中のあまり深くないけど繋がりのある人たちの出会いの場所なのだと。定型化したワークはどこにいても粛々と進むので、在宅でもオンラインでもよくて、でもそれだけではクリエイションは生まれない。一方でクリエイションは大事になってきているので、「仲間がいる場所にいく」という気持ちだったり、ガッツリぶつかりあえる施設があるということだったり、ちょっとした出会いがあるということです。仕事じゃない行為がもっとオフィス内に生まれたらいい。竹中工務店設計部に期待するもの仲 従来のワークプレイスでは、業務マネジメントやデザインをオフィス家具メーカーが主導することが多かったが、創造的空間という点からは物足りないと感じていました。一方で、建築の設計者は、建物という箱だけを作って中は関与しないことが多かったと思います。設計者が家具ではなく建築の次元で多様性を生み出している事例が日本で増えてくると、更に状況は面白いものになると思う。竹中工務店はワークプレイスプロデュース本部も擁しており、その点でも非常に期待しています。※1  ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターオーストラリアの経済学者(1883-1950)。イノベーション理論を確立した。イノベーションの理論を軸として経済活動における新陳代謝を「創造的破壊」という言葉で表している。仲 隆介(なか りゅうすけ)/京都工芸繊維大学デザイン・建築学系教授1983年1983年1994年1997年東京理科大学大学院修士課程修了PALインターナショナル一級建築士事務所勤務マサチューセッツ工科大学建築学部客員研究員宮城大学事業構想学部デザイン情報学科専任講師同大学助教授京都工芸繊維大学デザイン経営工学科 助教授同大学教授1998-02年2002-07年2007年-主な著書 『知識創造のワークスタイル』(共著)(東洋経済新報社、2004)『Post Office』(共著)(TOTO出版、2006)『オフィスの夢』(共著)(新世代オフィス研究センター、2009)   在宅勤務やフレックス勤務など、同じ場所で同じ時間に働くのではない選択肢が、コロナ禍により加速しています。オフィスに「一緒に働く」ことの意味をどのようにお考えでしょうか。仲 「弱い紐帯」という言葉があります。強いつながりの人より、普段それほど接点のないような人との間にこそ、ブレイクスルーが起きやすい。がっつり議論してアイデアを生み出すこともありますが、久々に会った知人と会話したら、新たなヒントが生まれたりする。そういう「弱い紐帯」がいっぱいあったほうがよいし、その人たちをどう出合わせるか、ということも大事です。一緒に働くという意味では、仲間とクリエイションするため、そして、何かしら新しい発想を得る

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