DESIGNWORKS_57号
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Interview05小堀設計事務所ビッグテーブルでのミーティングの様子写真:小堀哲夫建築設計事務所みんなで学ぼうというもので、例えば国語算数理科社会って科目ごとに分けるんじゃなくて、これをつくろうっていうときに数学の知識も物理も化学もすべて入っているというのが理想なんです。いまはアトリエや企業などにおいて、プロジェクトプレイスワーキング(PPW)っていうものを継承しています。どういうことかというと、オフィスとはプロジェクトの仲間に会いに行く場所なので、一人で働く場所っていうのはオフィスにはいらないと思っています。一人で働く場所はコワーキングスペースとか、都市のなかに移行したんです。唯一プロジェクトチームに会う場所というのは都市ではつくれない凄く重要なもので、PPW型のワークスペースが島になっているというオフィスをいま考えています。ABWは収納スペースとして一回ロッカーにいれるので、研究者や我々設計者には不向きで、僕はPPW的なものに入れ替える余地があるのかなって思っています。たとえば我々のオフィスでは、プロジェクトチームと構造チーム、設備チームそれぞれに席があります。1つのプロジェクトを担当する新人は、その席で仕事をするのですが、プロジェクトをいくつかかけ持ちしているような人は、じっと席で仕事をするのではなく、各プロジェクトの打ち合わせをしている場所を渡り歩くことになります。ただ、プロジェクトの話を聞きたいときはそれぞれのところへ行けばいい。そこには模型があって、やりっぱなしが可能なスペースがあるんです。プロジェクトが常駐できるような、簡単にいうと現場事務所がいっぱいあるみたいな、そういう方が使いやすいだろうなと思います。そこに行けば、常に出会え、状況が把握できる。小堀設計事務所ビッグテーブルでの食事の様子写真:小堀哲夫建築設計事務所所長はすべてをつなげるコーディネーターなので、渡り歩いていろいろな情報を得て、ポテンシャルを引き出したり、指示をしたりもする。その意味でも、やりっぱなしができる場所っていうのは重要だと思っています。僕の会社はまだ小さいから、ロの字型に個人デスクがあって、真ん中にビッグテーブルがあって、全員座れるようになっているんですけど、そこでご飯食べたり、自分がかかわってないプロジェクトのミーティングとかを見たり聞いたりできるんです。でも不思議なもので、スタッフによっては個人デスクじゃなくてビッグテーブルで仕事してるんです。個人デスクのように横並びだとすぐ打ち合わせができないので、ビッグテーブルをプロジェクトチームが占拠し始めるってことが起こります。でも、ご飯とかもそこで食べるんです。室町以来、会所という場所がありましたが、そこはみんなで連歌という和歌を続けて詠むクリエイティブな場所でした。我々は設計事務所も会所的であると思っていて、構造、設備、電気、家具、それぞれの設計担当が一つの会所にいて連歌を詠いあうようなクリエイティブなオフィスでありたいと思っています。   最後に、設計施工に取り組む竹中工務店に対してコメントをお願いします。小堀 今回、三菱ケミカル研究所を拝見し、竹中工務店には他社にはない魅力や強みがあると改めて実感しました。合理的かつ創造的な設計戦法のなかに、コンピューターの技術をうまくリンクしてゆらぎを取り込むことで、新たなデザインを生み出していると思いました。設計施工でここまで(聞き手:関谷和則・米正太郎・浮田長志・藤原健太・岡本圭介)小堀 哲夫 (こぼり てつお)/建築家、法政大学教授1971年1997年岐阜県生まれ法政大学大学院工学研究科建設工学専攻修士課程修了株式会社 久米設計株式会社小堀哲夫建築設計事務所設立名古屋工業大学 非常勤講師法政大学デザイン工学部建築学科教授梅光学院大学 客員教授1997年2008年2018年2020年受賞歴2015年BCS賞、中部建築賞、日事連建築賞「国土交通大臣賞」、AACA(日本建築美術工芸協会)賞優秀賞 日本建築学会賞、JIA日本建築大賞ABB LEAF Awards 2018 Shortlist、中部建築賞、RIBA INTERNATIONAL Prize 2018's LonglistJIA日本建築大賞、Dedalo MinosseInternational Prize, 2019 Special PrizeGerman Design Award 2021 winnerSKY DESIGN AWARD 2020 Shortlist、BCS賞他多数受賞2017年2018年2019年2020年主な作品 べにや旅館「光風湯圃」CIC Tokyo梅光学院大学「The Learning Station CROSSLIGHT」NICCA INNOVATION CENTERROKI Global Innovation Center ‒ROGIC‒昭和学園高等学校南相馬市消防防災センター実現されているとなると、実現できることの可能性が広がりますね。難しい課題に取り組むモチベーションや、社内の気運がどのように醸成されているのかということが気になりました。そしてそこが竹中工務店の強みなのではないかと思いました。建築はいろんな意味でのエンジニアリングの集積ですから。旅をして一瞬日常から離れると、ちょっと違和感とか異常さみたいなのを相対的に見ることができます。そうすると、今みなさんが置かれている状況で考えていることに疑問が生まれることがあって、そういう気づきが設計者には求められていると思います。自らどうやって建築の可能性を広げてチャレンジしていくかが大事です。挑戦していってもらいたいですね。   本日はどうもありがとうございました。

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