ブックタイトル竹中技術研究報告書No70

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概要

竹中技術研究報告書No70

竹中技術研究報告No.70 2014TAKENAKA TECHNICAL RESEARCH REPORT No.70 20142防耐火関連の技術開発Development of Fire Safety Technology長岡勉Tsutomu Nagaoka*1大橋宏和Hirokazu Ohashi*2永盛洋樹Hiroki Nagamori*3本章では,耐火木造建築の基盤技術となる1時間耐火の柱と梁の開発や,その柱と梁の接合部の開発,さらに建物を構成する上で必要となる周辺技術として梁の配管貫通孔の開発,耐火壁の開発について記述する。また,現在,燃エンウッドなどの木現し耐火木造部材は,樹種を限定した上で耐火認定を取得しているが,多様な樹種でも建物を建てたいという社会ニーズが強く,この課題に対しても現在取り組んでおり,それらの内容も合わせて記述する。2.1耐火木造部材(柱・梁)の開発Development of Fire Resisting Wood Elements(Column, Beam)(1)はじめに耐火木造部材の開発は,2000年に建築基準法が改正され,木造による耐火構造に道が作られた直後に開始した。当初は失敗の連続であったが,2006年に「カラマツとジャラ(高密度の木材)」の構成で初めて1時間の耐火認定を取得した。この認定は,木現しの耐火木造部材としては国内初であり,当時,不可能と思われていた木現しの耐火木造の可能性を実証できたという意味で大きな出来事であった。さらに2008年には「スギとモルタル」で1時間の耐火認定を取得し,ジャラといった希少材を用いない木現しの耐火木造部材を開発した。その後,2010年に「公共建築物等における木材の利用促進に関する法律」が施行したことをきっかけとして,実用化研究に移行した。2008年までの認定条件では建物のスパンとしては構造的に5mが限界であったが,大規模建築物を実現する上では9m程度のスパンが望ましく,スパンの拡大が実用化に向けた最大の課題となった。そこで,構造的に優位なカラマツに焦点を絞り,さらに量産を視野に入れ,初期に開発した2仕様の耐火木造部材の長所を合わせて「カラマツとモルタル」による1時間耐火木造部材(Fig. 1)を開発した。本節では,実用化した「カラマツとモルタル」による耐火木造部材を中心に述べる。なお,初期段階の研究につ1~3)いては,文献を参照していただきたい。(2)木現し耐火木造部材の概要耐火木造部材の構成は,外層に集成材からなる「燃え代層」,中層に燃焼を食い止める「燃え止まり層」,内層に集成材からなる「荷重支持部」に層別し,それぞれの機能を明確化した断面構成とした(Fig. 2)。外層の「燃え代層」は,加熱中に炭化することで遮熱効果を発揮し,内部への熱エネルギーの流入を低減する層とした。中層の「燃え止まり層」は,熱容量の大きな材料を用いて加熱終了後の自己燃焼を続ける燃え代層の熱エネルギーを吸収することで燃焼を止める,もしくは断熱性能に優れた材料を用いて荷重支持部への熱の侵入を抑制する役割を持つ。外層の厚さは,加熱終了時に炭化部分が燃え止まり層まで到達しない最適な厚さとした。(3)1時間耐火性能の確認4)5)竹中工務店技術研究所の大型耐火試験炉を用いて,認定試験と同様の方法で1時間の載荷加熱試験を実施し,耐火性能を確認した。試験体はTable 1,Fig. 3に示すように,柱小:W470×D470mm,柱大:W670×D1220mm,梁小:W320×H535,梁大:W670×H1135の4体とした。試験体の長さは,柱は木部h=2670mm,梁は支持点間距離L=7500mmとした。柱はFig. 4に示すように耐火試験炉に設置し,柱中心に載荷した。梁はFig. 5に示すように耐火試験炉に設置し,3Table 1試験体一覧Test specimen部材柱小470×470300×3000.482.05柱大670×1220500×10500.462.18梁小320×H535150×H4500.472.28梁大670×H1135500×H10500.502.19*1技術研究所構造部防火グループ長博士(工学)Group Leader, Research & Development Institute, Dr. Eng.*2技術研究所主任研究員Chief Researcher, Research & Development Institute*3技術研究所研究員Researcher, Research & Development Institute4