ブックタイトル竹中技術研究報告書No70
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竹中技術研究報告書No70
竹中技術研究報告No.70 2014TAKENAKA TECHNICAL RESEARCH REPORT No.70 20142.3梁貫通孔の耐火性能Fire Resistance of Beams with Holes(Openings)(1)はじめに木造の梁には,意匠的,構造的,耐火的に出来る限り貫通孔を設けないことが望ましいが,空調の冷媒管やスプリンクラー配管など,やむを得ない理由により貫通孔を設ける場合がある。梁に貫通孔を設ける際の耐火上の課題は,貫通孔に熱気が進入し,荷重支持部が加熱されて燃焼することの防止である。そのために貫通孔の外周を被覆6)して荷重支持部を防御する対策を講じ,その耐火性能を試験により確認した。(2)試験内容試験体は2.1節に示した仕様の耐火木造の梁(W370×H985×L8000mm)に内径100mmの貫通孔を設けたものとした。Table 2とFig. 19に表すように,貫通孔の仕様は4種類とし,仕様A~Cはモルタル管(t25mm)の内側に内径100mmの発泡性塩ビパイプ(t7mm)を直接設置し,仕様Dはモルタル管(t25mm)と発泡性塩ビパイプ(t7mm)の間にロックウールブランケット(製品厚さt25mm)を設置した。また,仕様AとCに関しては,モルタル管と燃え止まり層のモルタルバーが接する部分に1成分型変成シリコーン系シーリング(以下,シール)を施し,仕様Aではモルタル管小口にプライマーを塗布した後にシールを施工し,Cはプライマー無しでシールのみ施工した。Table 2梁貫通孔の試験条件Test condition of beams with holes仕様ロックウールシールブランケットプライマー処理AありありBなしなし-CありなしDありなし-Fig. 20に示すように,1本の梁試験体に6か所の貫通孔を設けた。なお,仕様Dは同じ仕様を3ヶ所とした。試験体を多目的耐火炉に設置し,3等分2点載荷により梁中央部に長期許容曲げモーメントが生じる荷重を与えながら,ISO834標準加熱温度曲線で1時間加熱した。加熱終了後も載荷したまま炉内に23時間放置した。Fig. 19に示すように,モルタル管と荷重支持部の間の温度を各孔9点測定(小口4ヶ所×2面,中央上部1ヶ所)した。また,炉内温度と,試験体に加えた荷重および加力点での変位を測定した。なお,判定条件は以下とした。・荷重支持部が260℃未満・脱炉時に表面に赤熱,残炎,発煙がない・荷重支持部に炭化がない・たわみ量δ≦L 2 /400d=156.25[mm]・たわみ速度Vδ≦L 2 /9000d =6.94[mm/分]ここで,L:梁の支点間距離[mm],d:梁せい[mm]。(3)実験結果多目的耐火炉の観測窓から見えた範囲では,加熱開始約2分で試験体表面が燃焼し始め,その後全体が炎に覆われた。1時間で炉の加熱を終了したが,しばらくの間,試験体表面の燃焼が継続し,約78分(炉加熱停止後18分)で試験体表面の炎は消えたが,赤熱が点在した。23時間放置後の試験終了時点では,全ての測定温度が80℃以下に下降し,試験体外観に赤熱や発煙は見られなかった。Fig. 21~24に各仕様の荷重支持部の温度を示す。その結果,仕様A,C,Dは140℃以下であり許容値の260℃と比較して十分に低かったが,仕様Bの1点のみは467℃まで上昇し,不合格となった。仕様Bはモルタル管と燃え代層のモルタルバーの間にシールを施工しておらず,その隙間から熱気が進入したことが原因と推察される。Photo 3に試験後に解体して燃え止まり層を取り除いた状態の試験体を示す。幾つかの写真に見られる木部の汚れは煤交じりの水蒸気や水が進入した跡と推察されるが,仕様A,Cはシールを施工しており,モルタル管の端部が汚れておらずシールの効果は高いと推察される。なお,各仕様において,木部から上下に筋状に汚れが見られるが,これは熱電対配線のための溝に水蒸気や水が進入したためと推察される。10