ブックタイトル竹中技術研究報告書No70

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概要

竹中技術研究報告書No70

竹中技術研究報告No.70 2014TAKENAKA TECHNICAL RESEARCH REPORT No.70 20142.5樹種拡大への取り組みApplicability of Other Wood Types(1)はじめに木現し耐火木造部材(柱・梁)は,国土交通大臣認定を取得して,実際の建築物に適用されているが,いずれの認定条件も木材が単一樹種に限定されている。これにより,国内の多様な樹種による木造建築物の普及拡大の障害となっている。これは,現在のところ木材種類の違いによる耐火性能の有利・不利を判断する際の客観的な知見が不足しているためである。8),9)また,木材の着火,燃焼および温度等と木材密度の関係を論じた既往の研究があるが,これらは材料素材を対象としており,集成材を組み合わせた構造部材を対象とはしていない。構造部材を対象とした研究では燃え代設計に寄与したもの10),11)や,耐火構造部材を扱ったもの12)はあるが木材密度と耐火性能の関連を扱ったものはない。そこで,荷重支持部に用いる木材種類(樹種)の違いによる耐火性能への影響を把握し,今後の耐火認定におけ13)る樹種拡大に資することを目的として,実験的研究を行った。(2)耐火性能実験試験体はFig. 30の断面の柱状の試験体とし,燃え代層と燃え止まり層はカラマツとし,荷重支持部の樹種をパラメータとした。荷重支持部の樹種は,国産針葉樹の中から低密度のスギ,高密度のスギ,ヒノキ,カラマツの4種類とし,n=2で計8体とした。Table 5に試験体の一覧を示す。なお,これらの木材の密度は359~522kg/m 3の範囲であった。また,2体の試験体を上下に積み,それらを試験炉に2セット設置することにより,一度の加熱で4体の試験体を同時に実験した。Table 6に加熱時の試験体の組み合わせを示す。Table 5試験体一覧Specimen試験体荷重支持部の樹種密度(kg/m 3)含水率(%)繰返し数スギ(密度小)杉集成材3739.92スギ(密度大)杉集成材47711.82ヒノキ檜集成材46210.32カラマツ唐松集成材51510.32Table 6試験体の組み合わせCombination of specimen1回目の加熱実験2回目の加熱実験上スギ(密度大)スギ(密度小)カラマツヒノキ下カラマツヒノキスギ(密度大)スギ(密度小)ISO834標準加熱温度曲線で1時間加熱した後,炉内に24時間放置した。実験終了時に目視で燃え止まりを確認して実験を終了した。試験体内部温度をFig. 31に示すように各試験体の2断面で,Fig. 30に示す10点で,K型熱電対φ0.32を用いて測定した。(3)実験結果と考察Fig. 32に各試験体の6時間までの内部温度を示す。さらに,Table 7に荷重支持部表面の到達温度を表す。ここで到達温度とは,荷重支持部表面であればFig. 30に示す10ヶ所の計測点が達した最高温度の平均値である。耐火認定試験において合否の鍵を握る荷重支持部表面の到達温度について,樹種による違いは10℃以下であり,樹種による影響は小さいといえる。さらに,荷重支持部表面の到達温度と荷重支持部の木材密度の関係をFig. 33に示す。前述の通り木材密度は到達温度に対して大きく影響を与えるパラメータでないが,若干の負の相関を持っていることが分かる。すなわち木現し耐火木造部材の耐火試験において,荷重支持部については密度が小さな木材を試験体として試験すれば,安全側の試験(危険側の条件設定)が行えると言える。(4)まとめこれまで,木現し耐火木造部材の国土交通大臣認定は,単一樹種に限定されていたが,今後は荷重支持部については密度を条件にして多樹種の耐火性能を評価できることが分かった。なお,今回の実験範囲は,国産針葉樹で木材密度が359~522kg/m 3である。16