ブックタイトル竹中技術研究報告書No70

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概要

竹中技術研究報告書No70

竹中技術研究報告No.70 2014TAKENAKA TECHNICAL RESEARCH REPORT No.70 20143.2梁部材の合理化に伴う構造性能Structural Performance of Beam Elements(1)有孔梁規模の大きな建物を木造とする場合,空間を広く使うために柱を少なくし,スパンを大きく取ることが少なくない。この場合,必然的に梁せいが大きくなり,少しでも天井高を高く取ろうとすれば梁に貫通孔をあけて設備配管を通さざるを得ないことになる。現在までのところ,木造の有孔梁に関しては国内外の研究者によって有孔梁の強度の評価法について研究が進められ,様々な耐力算定法が提案されてきているが,世界的にオーソライズされた設計手法が存在しないのが実情である。更に,これらの既往の研究は有孔梁の基本的な条件に対して行われており,孔の数が多い場合や孔の位置が梁せいの上下に偏る場合等の特殊なケースについては,殆ど手付かずの状況にある。当社では,燃エンウッドのような大スパンに渡す梁を対象として,比較的多くの孔を設けた場合について有孔梁の基礎的なデータを得るための曲げ強度実験を,長さ9mの実大試験体を用いて実施している(Photo 6)。Photo 6有孔梁の曲げ載荷実験Set up of bending testFig. 4有孔梁のFEM解析結果Analytical results of FEMこの実大実験により,有孔梁に独特な破壊性状を把握することができ,孔の配置によっては孔のない梁に比べて耐力が大幅に低下することが確認できた。更にFEM解析を実施し,有孔梁の変形や応力だけではなく,ひび割れが発生する部分を概ね推定できることがわかった。Fig. 4はFEM解析による応力のコンター図である。○印の部分の引張応力が高くなっているのがわかるが,実際の試験体で割れが発生した箇所に対応している。このような新しい知見をもとに,現在,有孔梁の設計手法の構築に向けて検討を進めている。(2)合成梁木構造による大スパン建築を実現するための技術は種々提案されているが,その一つとして集成材の梁とRCのスラブを組み合せてT型断面の合成梁を構成する手法が挙げられる。集成材梁とRCスラブを組み合わせた構造は,構造性能の面から有利になるばかりでなく,遮音性やコンクリートの持つ熱吸収能力により防火性が向上することなど,合理的な複合方法である。特に構造面については,集成材梁の上にRCスラブが単に載っているだけの場合に比べ,両者を金属製の接合具を介して一体化した合成梁とすることで曲げに対する剛性を大幅に向上させることができる。このことは,大スパン化による集成材梁断面せいの増大を抑えることに役立ち,ひいては階高の縮小,施工コストの低減にも寄与しうる特長となる。木材(集成材を含む)の梁とRCスラブを組み合せた合成梁は,海外でも一般的にみられる工法であり,通常は木材梁上面に切り欠きや穴を設けてコンクリートとの勘合を期待するものや,ラグスクリュー等の接合具あるいは切り欠きと接合具を一緒に用いる複合型などの機械的な接合法により接合される。梁には集成材やLVL(単板積層材)などの木質材料が一般に用いられ,木造建築の他,木橋にも適用されている。ヨーロッパでは多くの実験や解析的な研究が行われており,Eurocode 5(木構造)では,付録の技術情報として合成梁の簡易計算法が示されているが,世界的にオーソライズされているとは言い難い。我が国においても若干の研究があるものの成果の蓄積は僅かで,今後合成梁の普及のために設計法の確立が望まれている。当社では合成梁の特長のうち,特に断面の縮小に寄与しうる「剛性の向上」に注目して,集成材梁とRCスラブ21