ブックタイトル竹中技術研究報告書No70

ページ
63/86

このページは 竹中技術研究報告書No70 の電子ブックに掲載されている63ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

竹中技術研究報告書No70

竹中技術研究報告No.70 2014TAKENAKA TECHNICAL RESEARCH REPORT No.70 2014は100mm程度と限定された。そこで次善の策として,オーケストラのほぼ全音域を吸音する方針とした。このように広帯域にわたって効率的に吸音するために,多孔質材を裏打ちした薄膜により低周波数域を吸音する膜振動型吸音材と,その上に設置し中高音域を吸音する多孔質型吸音材とを組み合わせた複合構造を考案した(Fig. 7)。これにより,100Hzから5kHzまでの吸音率がほぼ0.8以上(Fig. 8)となる吸音構造が,厚さ110mm程度,面密度約7kg/m 2で実現した。この吸音パネルは移動間仕切壁の舞台側の面に固定された。なお,後日その上には意匠を目的としたカーテンが設けられた。2.4 PRD拡散体天井Aについては後壁と同様に,集中エコーを抑制するために,広帯域にわたり高度に吸音または拡散する音響的措置が不可欠である。当然ながら室の残響が短くなり過ぎないために,拡散措置が求められた。近年,音楽ホールを対象にした音響拡散体として1)QRD(Quadratic Residue Diffuser)拡散体が用いられている。一方,今回のように著しい音の集中が生じる場合にはさらに高い拡散性能が必要と考えられた。そこで2)PRD(Primitive Root Diffuser)拡散体を採用することにした。しかし無響室内で反射実験を行った3)結果,既往理論によるPRD拡散体は一部の周波数域で拡散性が不十分であることが判明したため,FDTD法による数値解析に基づいてさらなる改良を加えた。Fig. 9およびFig. 10は最終的に設置したPRD拡散体の断面構成及び反射率である。さらにPRD拡散体の実施工に際しては,縦型3周期ごとに横型を挟むことで,同一構造の繰り返しによって生じる余剰な拡散反射音の発生を抑制した(Photo 2)。このPRD拡散体の実ホールへの導入は世界初の試みであり,竣工後良好に機能していることを付記しておきたい。なお,天井Bについては,有害な反射音が舞台や客席へ直接返らないよう天井面の角度を調整し,拡散体等の設置によらない対応とした(Fig. 2)。Fig. 8広帯域薄型吸音パネルの残響室法吸音率(赤)。破線はグラスウールのみ,実線はグラスウール裏打+薄膜。Sound absorption coefficient of the developed soundabsorber(in red)compared with that of glass wool board(black broken line), that of PVC sheet backed with glasswool board(black solid line).Fig. 9 PRD拡散体の断面構成Cross-section structure of PRD diffuserFig. 10 PRD拡散体の鏡面反射方向における反射率Reflection ratio of the PRD diffuser at specular reflectionPhoto 2 PRD拡散体(左:無響室実験,右:実物)PRD diffuser(left: scale model experiment at anechoic chamber, right: attached in real hall)55