ブックタイトル竹中技術研究報告書No70

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概要

竹中技術研究報告書No70

竹中技術研究報告No.70 2014TAKENAKA TECHNICAL RESEARCH REPORT No.70 20142.3培養施設の効率化を考慮した培養条件の検討2.2の検討は,藻体自身による光量子量の低下の影響が少ない培養密度(0.1%)を前提としたが,培養設備を効率よく運用することを考慮すると,藻体自身による光量子量の低下の程度によっては培養密度を上げることで結果的に生産量を向上させることが可能であると考えられる。とくに成長率の大きいミナミアオノリは,培養密度を上げることによる生産量の向上が期待されるため,再度,培養密度と日間成長率の関係を評価するために培養実験を行った。2)Table 4培養設備用の培養実験の条件Factors and levels at cultivation test for cultivation facirity種名項目試験区その他条件光量子量(μmol/m 2 /s)2003005007001000水温:25℃明/暗:12h/12h栄養塩:表層海水+ES培地(3回/日交換)攪拌速度:15s -1CO 2:無添加ミナミアオノリ全炭酸濃度(mmol/kg)10.7無添加---水温:25℃光:1000μmol/m 2 /s明/暗:12h/12h栄養塩:表層海水+ES培地(3回/日交換)攪拌速度:15s-1攪拌速度(s -1)15 28---水温:25℃光:1000μmol/m 2 /s明/暗:12h/12h栄養塩:表層海水+ES培地(3回/日交換)CO 2:無添加2)Fig. 3光量子ごとの藻体密度と成長率の関係Relation between growing ratio and cultivation density under several photonconditions2)Fig. 4 CO 2濃度の成長率への関係Relation between growing ratio and cultivationdensity under deferent CO 2 condition光量子量の違いが成長に与える影響については,光量子量が高くなるにつれて培養初期の成長速度が上昇した。高密度での日間成長率は高く維持され,高密度下における藻体間の光条件に関する競合は緩和された(Fig. 3)。CO 2が成長に与える影響に関しては,藻体密度0.25%前後での比較においては,CO 2添加試験区の日間成長率が対照区を上回り,CO 2添加による成長促進効果が高密度条件下において顕在化した。CO 2添加効果は,CO 2を添加しない場合と比較して日間成長率は1.42倍となった(Fig. 4)。攪拌速度が成長に与える影響に関しては,有意な差は見られなかった。文献調査では大型海藻で最適流速の存在が報告されており,本実験では,設定試験区が2条件のみである点,流れが定量化の困難な攪拌流であった点が課題とされ,流速影響については更なる条件検討を行った上で再検証することが必要であると考えられる。得られた試験結果より,CO 2無添加条件で,光量子量700~1000μmol/m 2 /s,藻体密度0.1%とした際の日間成長率を試算した。その結果,藻体密度0.1%で日間成長率153.14%となり,文献値を大きく上回った。さらに,藻体密度0.5%においては日間成長率46.84%と推定された。CO 2競合緩和効果を考慮した場合,培養条件の最適化により藻体密度0.5%における日間成長率は50%を上回るものと推測される。さらに,上記結果よりミナミアオノリの生産性を簡易的に試算したところ,69.6g-dry/m 2 /dayと見積もられた。この値は,多くの微細藻類の生産性を10-20g/m 2 /dayであることと比較すると非常に高い生産性を有すると言える。64