ブックタイトル竹中技術研究報告書No70

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概要

竹中技術研究報告書No70

竹中技術研究報告No.70 2014TAKENAKA TECHNICAL RESEARCH REPORT No.70 2014特集大規模木造建築の開発Development of Large Scale Wooden Buildings1はじめにIntroduction木村秀樹Hideki Kimura*1長岡勉Tsutomu Nagaoka*2宇佐美徹Tetsu Usami*3五十嵐信哉Shinya Igarashi*4関東大震災をはじめとする地震時における広範囲に及ぶ木造建築の火災,大型台風による木造建築の被害,戦後枯渇した国内林産資源保護などを理由に,我が国は1950年の建築基準法制定によって一定規模を超える建築物の木造化を禁止してきた。しかし,2000年に建築基準法が性能規定化に向けて改正され,所定の耐火性能を満足した木構造を耐火構造として取り扱うことが可能となった。一方,木材の活用は近年の環境意識の高まりとともに大きく注目されるようになった。なかでも森林のCO 2固定化による温室効果ガスの削減,森林や里山の荒廃を一因とした自然災害の防止などに向けた森と人間が共生できるサスティナブルな社会の実現,すなわち“植林~育林~伐採~木材活用”を繰り返す「森林サイクル」の活性化が強く求められるようになった(Fig. 1参照)。特に伐採した木材かFig. 1森林サイクルと建築の関係らのCO 2の放出を抑制するという点で,木材を建築物に活Relation of forest cycle and buildings用することが重要とされている。そのため,我が国では2010年に「公共建築物等の木材利用促進法」を制定し,建築分野における木材利用を高めることで「森林サイクル」の活性化を推進している。このような背景のもと,当社では2001年より木造化が困難であった市街地において木材現しの大規模木造建築を実現するため,これまでに類をみない独創的な3層構造の燃え止まり耐火集成材「燃エンウッドR」の研究開発に取り組んできた。開発初期段階の2008年までは“自燃性と耐火の相反する性能の確保”,2010年からはこの新たな耐火集成材をプロジェクトに適用するための多くの技術開発等を進めてきた。この研究開発の実績としては,2013年に国内初となる市街地の大規模木造建築3件を実現し,これ以外にも何件かのプロジェクトへの適用も進めている。また,本技術およびこのプロジェクト適用は,新たな木造建築の可能性を社会に広くアピールし,市街地の大規模木造建築という新たな分野の先導および「森林サイクル」活性化に向けた環境意識の高揚に対して大きく貢献した。その結果,2014年には「三層構造の燃え止まり耐火集成材の開発」で社団法人日本建築学会賞(技術)を受賞した。比較対象となる技術としては,集成材の表面を石膏ボードで被覆したメンブレン型,鉄骨の表面を木材で被覆した鉄骨ハイブリッドタイプなどがある。前者は戸建て住宅などで実績が多いものの,市街地の大規模木造建築への適用に至っていない。後者は大規模木造建築に数件の適用実績はあるものの構造体を鉄骨とする点で本技術とは異なる。本報告では,市街地での大規模木造建築の実現を目的として行った技術開発について,防耐火関連の技術開発,構造関連の技術開発について説明するとともに適用事例を紹介する。*1技術研究所構造部長博士(工学)General Manager, Research & Development Institute, Dr. Eng.*2技術研究所構造部防火グループ長博士(工学)Group Leader, Research and Development Institute, Dr. Eng.*3技術研究所構造部架構システムグループ長博士(工学)Group Leader, Research & Development Institute, Dr. Eng.*4先進構造エンジニアリング本部特殊架構グループ長Group Leader, Advanced Structural Engineering Department3