2019年入社
学生時代の専門分野:木構造
金澤は、大学で建築を学んでいたものの、木造に触れる機会がほとんどなかった。転機は、とある講義で大規模木造建築を研究されている教授に出会ったことだった。森林資源が豊かな日本だからこそ、その力を生かして環境問題に応え、木造文化を未来へ進化させる、その方向性に強く共感したという。そこから一気に研究の道へと引き込まれていった。
就職活動では、研究成果を社会に還元したいと考え、民間の研究所を強く意識するようになる。インターンシップで竹中工務店の技術研究所と構造設計を経験し、ものづくりの現場に密接した研究環境や、大規模木造建築を切り開く研究に触れた体験は鮮烈だった。研究所の雰囲気はおおらかで、個々の裁量を尊ぶ空気があり、自分らしく挑める場だと感じたという。さらに、フレックスタイム制度やその他福利厚生、育休・産休の取得を後押しする環境など、安心して働ける仕組みも整っていた。
こうした経験が折り重なり、金澤は木造建築の未来に挑む研究者として歩み出した。
金澤の研究の日常は、研究所のチームや設計者・施工現場の技術者とともに仮説を立て、試験体を設計、製作し、想定通りの耐力や壊れ方になるかを確かめる実験の連続だ。大規模木造建築の接合部実験をはじめ、CLT(直交集成板)を鉄骨造やRC造と組み合わせる研究など、新しい構法に果敢に挑んでいる。ときには施工現場から、伝統木造建築の強度調査を依頼されることもある。研究対象は多岐にわたり、一見地道な作業の中に未来の建築の可能性が広がっている。
「自分が行った実験や研究の成果が、未来の建物に適用されるのが一番うれしい」と語る言葉には、研究が社会の役に立っているという実感がこもる。自身の成果が実際のプロジェクトで初めて採用されたとき、胸に込み上げた喜びは大きかった。
壊した試験体の先に、新しい建築の姿を描く。その感覚こそが研究者としての誇り。積み重ねた日々は確かな研究成果となり、未来の景色を変えていく力になる。
働く環境の柔軟さも、金澤が研究に集中できる大きな理由だ。研究所にはフレックスタイム制度が整い、コアタイムを守れば研究の性質や進捗に合わせて自分のリズムで出勤・退勤時間を決定できる。また、ABW(Activity Based Workplace)のため、「データ整理等で集中したいときは静かな環境で、同僚とのコミュニケーションを増やしたいときは開かれた雰囲気のある環境でというように、日によって執務スペースを選べることも魅力です」と語る。
研究所敷地内には、季節ごとに表情を変える研究開発の屋外フィールド「調の森 SHI-RA-BE®」があり、昼休みには仲間と訪れることもある。「季節のいい時期は調の森で過ごすこともあります。すごく気持ちがいいですよ」と声を弾ませる姿に、自然豊かな環境から受け取る力がにじむ。
加えて、産休・育休制度が積極的に活用されていて、将来にわたって安心して研究を続けられる基盤がある。現場経験を持つ社員が研修生として研究所に加わる制度もあり、日常的に多様な視点と触れ合えるのも魅力だ。
個々の裁量を尊重する文化と制度的な安心感。その両方が研究への挑戦を後押ししている。
木造建築の研究に向き合い続けてきた日々は、金澤にとって確かな歩みの軌跡だった。地道な実験の先に、社会に役立つ成果が形となる瞬間がある。だからこそ「研究は続けていくほどに面白さが増す」と実感する。
彼女が目指すのは、「用途や規模を問わず、木造で建てるという選択肢が当たり前になる未来」だ。そのために「社内でも木材を積極的に使ってくれる仲間を増やす架け橋になりたい」と語る。研究成果を広げるだけでなく、人と人をつなぎ、森林資源を生かしながら、木造建築を未来へつなぐ担い手になろうとしている。
一方で、休日には茶道に励み「いつかお茶の先生にもなりたい」と笑う。その言葉には、研究と茶道、どちらも終わりなき学びとして向き合う姿勢がにじんでいた。日常と研究を大切に積み重ねる金澤の姿勢は、やがて木造建築の未来を支える確かな力となるだろう。
2025年8月に行ったインタビューを元に執筆しています。部署名は取材当時(2025年8月)のものです。
金澤 和寿美 かなざわ かずみ
木造建築の研究開発に取り組み、大規模木造建築の接合部試験や、木造と鉄骨造・RC造との混合利用の研究などを推進。施工現場から依頼を受けた伝統木造の強度試験や調査などにも対応し、幅広いテーマに挑戦している。森林資源が豊かな日本ならではの特性を生かし、木造建築技術を次世代にアップデートさせて社会に定着させることを目指している。
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