月に人が滞在を開始する際の拠点を目指し、東京大学・九州大学・JAXAと共同研究で、⽉⾯の「縦孔」および「極域」を建設候補地とした最少構築物のベースキャンプを開発中。「滞在モジュール」は内部に空気を充填して気圧で膨らむインフレータブル形式とし、竹中工務店は内部建築計画・設備計画ならびに高密度緑化計画のレイアウト検討を行った。
縦孔へのセットアップでは、「滞在モジュール」を孔底へ着床させ、「昇降リフト」とそれを吊る「オーバーハング」「ソーラー発電モジュール」を配備する。4人の宇宙飛行士が最長約6ヵ月間を無補給で居住できる想定とし、スライドレールと接地脚とが同時展開する機構となっている。
極域へのセットアップでは、2人の宇宙飛行士が最長2週間程度の極短期滞在可能な「小型一体モジュール」とし、1度の輸送で「滞在モジュール」と「太陽光発電部」「桟橋部」の全てを同時に月に送り込めるよう小型軽量化を図り、予め滞在に必要な最小限の物資・機材を組み込んだ機構となっている。

4人用滞在モジュール:「縦孔」への設営イメージ

2人用滞在モジュール:「極域」への設営イメージ
国土交通省、文部科学省令和7年度 「月面等での建設活動に資する無人建設革新技術開発推進プロジェクト」の委託
上記2枚は東京大学佐藤淳研究室作成

展開後の枕型外皮胴部の大きさは幅約11m、長さ約18mである。内部は2層の構成とし、上階は活動エリアとして研究室、寝室、水廻り等を配置し、下階は高密度緑化スペースとして可動式ラック等を用いた設計としている。4人が最長6ヶ月滞在するための食料のうち、6割を植物栽培で賄い、必要な栄養素のバランスを考慮してダイズ、サツマイモ、リーフレタスの3種類を育てる。植物により人の呼吸で生成するCO2をほぼ全て吸収し、必要なO2を生成する。生命維持装置として、空気についてはフェイルセーフとしての酸素生成とCO2除去、水については乗員の尿や湿度から得られる凝縮水をリサイクルする機能を実装する。



統一したサイズのラックを段数を変えながら有機的な建築形状の狭隘な余りスペースを利用して高密度に配置した。ラックの一部を可動にすることで全てのラックにアクセス可能としている。


展開後の外皮胴部の大きさは幅約7m×長さ約10mである。インフレータブル部ではないエアロック等を内側へ延長したシリンダー部分(直径約2m、長さ約7m、内積が約22m3)に、物資と機器を全て装填する設計としている。外皮を空気圧により展開させると内部空間が拡がり、エアロックより入室した宇宙飛行士がシリンダー中央に通路を確保するように移動可能な物資を押し出し、内部空間にレイアウトする。2人が最長14日間滞在するための食料は全て持ち込み、水・空気の循環再利用は最小限にとどめ、生命維持装置としては、CO2除去と汚染除去装置のみとしている。

居住エリアと植栽エリアで求められる温熱環境が異なる。居住エリアでは人がO2を取り込んでCO2を排出し、植栽エリアでは植物がCO2を吸収してO2を供給する。両エリアを区画し、空調機により温湿度制御を行いながら空気を交換し、CO2とO2が循環する空調計画としている。

持ち込んだ水をポンプで水廻りや植物に供給し、循環させる。生活排水と尿などは水回収システムにより処理し、再びタンクに戻して供給する。植物については植物用水タンクから各パレットに水を供給し、排水は活性炭により濾過して植物用水タンクに戻して循環させる。

設備機器やダクト類を詳細に計画するため設備専用BIMソフトを用いて作図し、建築モデル上で外皮や可動部との干渉がないかを確認するサイクルを繰り返し、納まりの精度を高めた。