暮らしと地域に寄り添うみどり

ランドスケープデザイン|あさひの杜国立

FEATURES01

暮らしと地域に寄り添うみどり

生命保険会社の社宅建替えに伴い、地域景観を参照し、みどりに囲まれた暮らしやみどりのつながりをデザインすることで、住民のQOL向上やこの社宅ならではの暮らしの創出を目指しました。
敷地がある国立市は、一橋大学や駅前から伸びる大学通りなど、みどり豊かな街並みが特徴です。東西に細長い敷地に配置された建築隣棟間と前面通り沿いの植栽を、高木の樹冠により連続させることで、敷地内のみどりをネットワーク化し、同時に周辺の街並みと調和した景観を計画しました。
また、社宅建替えと同時に老人ホームの誘致や既存の児童公園の再整備も行われ、みどりを介して世代や属性の異なる人々が自然と交流できる環境を構想しました。
社宅、児童公園、老人ホームをつなぐ緑道を計画し、緑道沿いには交流広場や集会室、菜園スペース、老人ホームのテラスを配置。緑道を常時開放することで地域の回遊性向上に寄与し、新たな交流を促します。目隠しだけを目的とした緑地ではなく、四季の移ろいや緑地を介した住民どうしの交流など、みどりの持つ多機能性を計画に活かしました。
それらを量的根拠に基づき実現するため、当社独自の樹木配置の最適化シミュレーション技術「Optree」や鳥類の生息環境計画技術「Avitat®」を用いて植栽計画を実施。地被類から高木にかけて多様な樹種を配植し、快適な環境創出、生物多様性や地域景観に配慮した空間を創出します。

多世代交流拠点のイメージパース

地域に開放される緑道の出入口

敷地中央に位置する交流広場

FEATURES02

みどりを定量的に計画する

これまでの植栽計画は、設計者の経験的・感覚的な判断に基づいて検討されることが一般的でした。本計画では樹木配置の最適化シミュレーション技術「Optree」をプロジェクト初適用し、定量的な根拠に基づく快適な環境づくりを目指しました。
「Optree」は将来の樹木生長を予測の上で、各種パラメータを設定し、温熱環境シミュレーションによる解析を行い、環境性能を評価・最適化する技術です。今回は敷地内に約1,000か所の樹木の配置候補点を設定し、樹木生長を考慮した複数の樹木モデルを配置して解析を行いました。
みどりに囲まれた暮らしを具現化するため、各動線における良好な暑熱環境・風環境解析だけでなく、建物内からの緑視率を高めつつ天空視率や隣棟間の菜園スペースへの日射率も高くするといった相反する要素をパラメーターを設定し、総合的な最適化を行いました。
約500ケースを自動解析し導き出した樹木配置を採用した結果、最適化を行わない場合と比較して、緑視率15%増、菜園の日射量7%増、植栽コスト2.2%減を同時に達成しました。

FEATURES03

いきものを身近に感じるみどり

緑地の新たな整備により、地域景観の向上に加え、生態系ネットワークを拡充し、周辺の自然や生きものとの新たなつながりを創出しました。
本計画では、都市部の生物多様性の指標となる鳥類の生息環境計画技術Avitat®※1を適用。周辺のまとまった緑地(コア緑地)どうしのつながりを評価し、周辺調査で確認された鳥類45種のうち、アオジやウグイスなど10種を誘致目標種として設定しています。
また、Optreeによって導き出した樹木配置をもとに、目標種が利用する花や実のなる樹種をAvitat®で選定しました。さらに、敷地周辺の潜在自然植生図や迅速測図を参照し、地域性に配慮した約50種に及ぶ植物種を採用しています。鳥の種類によって好む環境
が異なることから、地被類から高木までの階層構造をもつ植栽計画とすることで、いきものの誘致を図っています。
階層構造をもつ植栽を建物外周部や生活動線沿いに配置することで、敷地内のどこにいても多様な植物の表情や四季の移ろいを感じられる暮らしを提供します。

※1 適用技術:都市鳥類に配慮した緑地計画支援技術 Avitat®
https://www.takenaka.co.jp/solution/environment/avitat/

雑木林景観をイメージした植栽の階層構造と誘致目標種

FEATURES04

みどりを活用したコミュニティ形成

良質な緑地を計画、整備するだけでなく、暮らしの中でいかにみどりを活かしていくかについても検討しました。身近なみどりへの興味関心を高めるため、計画段階から建築主とともに緑地をつかったワークショップを企画しました。竣工後には、樹木札づくりや落ち葉アートなどの参加型ワークショップを実施しています。
また、隣棟間には住民が日常的に利用できる芝生広場や菜園スペースを整備しました。菜園スペースは社宅住民へ無償で貸し出ししており、世代を超えた交流の場となっています。今後は老人ホーム入居者への貸し出しも検討されており、さらなるコミュニティ形成が期待されます。
こうした積極的な緑地活用の計画が評価され、社会や環境に貢献する優れた緑地計画として、生命保険会社保有施設として初めてSEGES認証「つくる緑」※2に認定されました。

※2 SEGES認証「つくる緑」:社会・環境貢献緑地評価システム。企業等によって計画された良好な緑地と活動、取り組みを評価し、社会・環境に貢献している緑地計画であると
公益財団法人都市緑化機構が認定する制度。

川添 浩輝

赤岩 麻里子

稲葉 隆太
(建築設計)

技術研究所

佐野 祐士

北野 雅人