自然と交感し、人を育む住まいと庭

ランドスケープデザイン|竹中育英会学生寮

公益財団法人竹中育英会が建設・運営する学生寮です。建替に際し、生物多様性に配慮したランドスケープをデザインしました。東京・練馬区の敷地は、都市型内水氾濫リスクの高い妙正寺川・江古田川の流域に位置するため、健全な水循環に資する有機的な形状の大屋根をもつ雨水建築とし、それに囲まれた中庭を一体的に整備しました。 
光、風、雨、鳥、花、木など、自然との交感を通して、多感な学生時代を有意義に過ごせる住まいと庭を目指しました。

FEATURES01

地域の生態系に配慮した緑地計画

敷地は、都心に近い練馬区で、豊かなみどりに恵まれているものの、みどりのネットワーク形成には課題がありました。
本計画を通して、地域のみどりのネットワーク形成に寄与することを目指し、地域生態系に配慮した在来種を主とした植栽計画としました。
設計に先立って区内の大規模緑地および敷地近傍の小規模緑地を対象に生きもの調査(鳥類および昆虫類)を実施。
これまでの当社の研究でストックされた情報を用い、確認された鳥類ごとの「生息確率」を推定し、8種の誘致目標種を設定。
誘致目標種が好む植物(食餌植物)を加味して植栽計画に反映しています。

※適用技術:都市鳥類に配慮した緑地計画支援技術 Avitat®

FEATURES02

グリーンインフラの実装:内水氾濫低減のための雨庭

本建物が建つ練馬区中村橋は、江古田川流域の上流部にあたり、地形的には洪水氾濫のリスクは小さいエリアです。しかし、同流域の下流部は、豪雨による氾濫発生リスクの高い地域です。上流域の敷地内で雨水の流出を抑制することは、下流域の災害リスク低減に寄与します。

そこで大きな屋根に降った雨が樋のない軒先をへて中庭に落ちるようにしました。
雨が落ちる先は、レインスケープ®(当社の雨水貯留浸透技術)を用いて、雨水を地中浸透させ地中間隙に貯留と同時に地上にも貯留し、地域下水道への流出を抑制しています。

※適用技術:雨水貯留浸透技術 レインスケープ®

FEATURES03

居住者の感性と行動変容に働きかける建築とみどり

自然と触れ合える屋外空間と木造・木質建築が居住者の空間満足度、リラックス、コミュニケーション、学習意欲などにどのような影響を与えているか、アンケート調査を行いました。
その結果、建替え事業の前後で寮生の満足度と快適性が大幅に向上。併せて主観的健康感も向上がみられました。
また、共用部(ライブラリ、ラウンジ、屋外)の建替え前後の印象評価を比較すると、“あたたかい”、“落ち着く”といったポジティブな印象へと大きく変化していることが明らかになっています。
屋外(中庭)については、「眺めがよく、癒される」、「花壇や養蜂箱などがあり、東京にいても自然を感じることができる」といったコメントがありました。

FEATURES04

屋外活動を通じた課題解決力の醸成

2023年9月、竣工に合わせて寮生・奨学生を対象とした「バイオネスト・エコスタックづくりワークショップ」を企画・実施しました。生物多様性保全の意義やグリーンインフラを学ぶ機会を提供することで、自然に関わる課題を解決し得る人材育成に寄与しています。
また、寮生による自主的な花壇づくり、NPOや技術研究所と協業したニホンミツバチの自然入居による養蜂活動も始まり、庭との“関わりしろ”が大きくなっています。

写真提供:竹中育英会

FEATURES05

地域とのつながりづくり

建替え事業を通じて関係を強化した地元自治体(練馬区)から地域イベント “アート de ねりまち” への出展要請を受け、整備時に発生した伐採木を活用した「樹名札・名札づくりワークショップ」を企画しました。寮生、竹中育英会、施設設計・施工者のチームで参画。(2024年1月、9月、2025年9月)
イベントを通じて建替え事業における脱炭素や生物多様性保全の取組みを地域住民にアピールしました。
また、敷地の北側は「コミュニティコート」として地域との交流拠点としての活用を想定しています。地域と寮生による新しい使われ方が展開されることを期待しています。

写真提供:竹中育英会

写真提供:竹中育英会

ランドスケープ関連受賞歴
第5回グリーンインフラ大賞 特別優秀賞
第24回緑化技術コンクール 日本経済新聞社賞

鈴木 康平
(ランドスケープ設計)
グリーンインフラ実装計画

熊谷 雄
(建築設計)

北野 雅人
(技術研究所)
グリーンインフラ実装計画

野村 佳緒里
(エンジニアリング本部)
快適性評価