水を巡らせ、命を育む
~サステナブルアクアリウムへの挑戦~

設備設計|水族館技術

FEATURES01

生き物ファースト、それが水族館

生き物を水槽で飼育することは、その生き物の生命を維持するための万全の対策が求められます。
水族館では、生物を育む海水・淡水を、その生物に合わせて24時間365日休むことなく供給し続ける必要があり、求められる水質や水温は多種多様で、生命維持には膨大なエネルギーを消費します。また、災害時でも生物を守るために、生命維持に必要な設備を継続運転させる仕組みや機械の故障時への対策を構築することが重要です。
そこで神戸須磨シーワールドでは、水質・エネルギー・防災の観点から従前の水族館で見過ごされていた問題点や課題を再発見し、これからの水族館にふさわしい設備計画を行いました。どんなときにも生き物の生命を維持し、そのうえで従来の水族館に比べ、大幅な水資源やエネルギーを削減できる「サステナブルアクアリウム」を目指しました。

適用した建物(神戸須磨シーワールド)

FEATURES02

水族館は、水が命

水族館の水槽がいつもキレイで透明なのは、ろ過器により生物の食べ残しや排泄物を取り除いているからです。ただし、ろ過により水の透明度を上げるだけでは、生物に必要な水質を維持することができません。バクテリアによる環境浄化技術等や、新鮮な海水の供給が必要です。
国内の水族館の多くが海岸沿いに立地しているのは、海水の取水がし易いためですが、海水資源を大切にしなければなりません。また、新鮮な海水を大量に供給すれば下水インフラへの排水量も増加し、下水処理にかかるエネルギーが増大します。生物の環境を維持しつつ、いかに海水資源の使用量を削減するかが重要となります。
多種多様な生物を飼育する大規模水族館では、生物により求められる水質も異なるため、それを逆手にとって、水質の良い水槽からのオーバーフロー排水等を他の水槽に再利用することで、海水使用量の大幅な削減が可能となりました。また、超節水型のろ過器導入※1や井水利用を組み合わせて運用することで、既存水族館と比較して約50%の節水が可能なシステムを構築しました。

※1 超節水型ろ過器:水より比重の軽い浮上型のろ材を用いたろ過器で、定期的に自動で行う。逆洗水※2の排水量が、通常のろ過器の5~7割程度と節水で運用できる。
※2 逆洗水:ろ過器内部の洗浄時の為の水。

FEATURES03

熱を無駄にしない水族館

水温の維持も生命維持に欠かすことのできない重要な要素ですが、一方で水の加熱・冷却には膨大なエネルギーを必要とします。
多種多様な生物を飼育する水族館では、人の居住環境とは大きく異なり様々な水温の設定が必要です。水槽には冷却が必要なものと加熱が必要なものが混在しますが、それらを個別に行うのではなく、お互いの熱を活用するための「熱源水※3ネットワーク」を構築して、各棟をつなぐ専用の配管で熱を回収・融通することとしました。これにより、最小のエネルギーで水槽の環境維持を行うことが可能となりました。
また、今回のように複数棟で構成される水族館の場合、冷却・加熱のための冷温水を広大な範囲にポンプで搬送するエネルギーも無視できるほど小さくありません。そこで、各棟で冷水・温水を製造して搬送動力を最小化しました。

※3 熱源水:冷水・温水の製造時に、熱源機器の排熱・吸熱に必要な冷却水・加熱源水の総称。冷水製造時は熱源機器から排熱(温熱)、温水製造時は吸熱(冷熱)として排出されるが、熱源機器間での熱回収・熱融通を行う。

FEATURES04

災害から生物を守る

水族館は生物の生命維持のため、災害などによるインフラ途絶時も施設稼働が求められます。また、水族館は海浜地域の立地が多く、台風などによる水害リスクも高いことが特徴です。
海からの新鮮な海水の供給は、水族館にとって生命線です。海水の取水方法は複数ありますが、従来から採用されている海面近くの海水を取水する方式だと、台風による漂流物や津波による被害を受けやすくなります。
そこで、災害時も安定して取水を継続するための方法として、沖合自然導入方式を採用しました。この方式は、海底近くの海水を自然に流入させる方式で、海底から敷地内の竪坑まで海水のトンネルをつくることで、災害時も安定した取水が可能なことが特徴です。
また、生き物の命を守るために電力供給も欠かせません。常用・非常用兼用のガスコージェネレーション発電機を設け、万が一の電力インフラ停止時(停電時)には、重要な電源供給源として機能します。
発電時の排熱は施設内で再利用し、省エネルギー化も図りました。さらに電力会社からの給電を特別高圧受電方式、ガス会社からの供給を中圧ガス対応とすることでインフラ供給の信頼性を向上しています。

「サステナブルアクアリウム」は、これらの様々な工夫を取り入れることで、水族館の様々な生き物への快適性を保ちながら地球の資源や環境への配慮を実現しています。