「開かれた美術館」を実現する架構のデザイン
構造設計|鳥取県立美術館
FEATURES01
立体的な回遊性をもつ「開かれた美術館」
鳥取県立美術館は、「開かれた美術館」がコンセプトの公立美術館です。南側にある大御堂廃寺跡歴史公園に面する開放的な「ひろま」を中心に、展示室やホール、スタジオなどの諸室を立体的に配置し、3階の展望テラスへと回遊できる施設構成としています。
美術品を収集・保存する収蔵庫と安定した環境の中で展示・鑑賞する展示室は、美術品を湿気や万が一の水害から守るため、2階以上に配置しました。
また、地域に永く親しまれる文化施設として、白壁土蔵群や打吹山の長谷寺、三徳山三佛寺の投入堂といった地域の伝統的な日本建築を想起させる外観デザインとしています。
これらの実現には多くの技術的課題がありましたが、槇総合計画事務所との密な対話を重ね、解決を図ることができました。
『ひろま』を中心に立体的回遊性を有する『開かれた美術館』
FEATURES02
「守る」と「開く」を両立する構造計画
美術館の主な機能は、美術品を収集・保存し、それらを安全に展示し、快適に鑑賞できる空間であることです。それに加えて地域への開放性が求められた本作品では、これらの機能をそのまま構造要素として表現しました。
収蔵庫や展示室は鉄筋コンクリート(RC)造の耐力壁で構成し、蔵のような『守る』機能を表現する一方で、『開放性』が求められる「ひろま」は、鉄骨造の繊細な柱梁で計画し、南側の大きな開口部を実現しています。
この『守る』と『開く』を両立させるため、南側の吹抜け空間と対になるように、構造的に重要な東西に延びる2本の主軸を配置しています。この上下に連続した壁柱群と耐震壁によって、建物全体の安定性を確保しています。
3層吹き抜けの「ひろま」に面した主軸上には、RC造の壁柱群を連続的に配置しました。この壁柱群は、「ふすま」のように空間を分節しながら開放性を保ち、展示エリアとひろまを適度につなぐ中間領域をつくり出しています。
空間の分節と連続を実現する壁柱群
壁柱群を介してつながる蔵のような『守る』展示室と開かれた「ひろま」空間
3層吹き抜けの開かれた「ひろま」空間
FEATURES03
複雑な立体構成を
シンプルな構造要素で実現
「ひろま」の吹抜けを囲むように分散配置された展示室と、3階の屋外テラスまでつながる回遊性の高い複雑な立体構成を、シンプルな構造要素で実現しています。鉄筋コンクリート(RC)造の壁・壁柱と鉄骨造の柱・梁という従来の構造材料をそれぞれの特性に合わせて使い分け、空間のコンセプトと構造要素の配置を合致させることで実現しました。
『整形で柱の無い展示室』を合理的に配置するため、上階の壁を壁・壁柱で支持する明快な架構配置とし、床組にはロングスパンに適した鉄骨小梁とデッキスラブを組み合わせることで、壁部材への長期曲げモーメントを抑制し、必要壁厚を最小限に抑えています。
「ひろま」の上部を覆う大屋根は、鉄骨柱を7.5mピッチに配置し、スパン17.2mの軽快な空間を実現しています。2階に張り出した展示室は、RC壁を跳出し架構として利用することで、7.5mピッチの柱配置を維持しながら、上階の展示室と屋根の支持を両立しています。
架構アクソメ
エントランスの吹抜けに面して積層された展示室
3階の屋外テラスまでつながる立体的な空間構成
FEATURES04
見えないディテールが支える
美術館の表情
外観は、複数の機能が立体的につながる内部空間を1つの大屋根で統合することにより、地域の歴史的建造物を想起させる、永く親しまれる姿としています。
大屋根先端は水平線を際立たせたデザインとし、先端をプレキャスト化することで仕上げの取り付け精度を確保しました。

建物前面では、展示室を2階に配置し1階を開放的な空間とするため、細い鉄骨柱の上に展示室を囲うRC壁を積層した特徴的な構成としています。この条件に対して、下部鉄骨造柱と上部RC壁の力の伝達を完結できる混構造の仕口で解決しました。これにより展示室は柱型の無い整形な空間とすることができ、美術品保全への配慮と「ひろま」の解放感を兼ね備えた、「開かれた美術館」を実現しました。

南側外観:軒の水平性と柱の細い垂直性が表れている
1階平面図
| 設計 | 建築 槇総合計画事務所 構造・設備 竹中工務店 |
| 施工 | 竹中・懸樋・丹青共同企業体 |
| 主要用途 | 美術館 |
| 階数 | 地上3階・塔屋1階 |
| 主構造 | 鉄筋コンクリート造 一部、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造 |
| 基礎形式 | 杭基礎 |
| 構造形式 | 耐震構造 |
| 架構形式 | 耐力壁を有するラーメン構造 |

⼭﨑 和宏

岡本 純

川嶋 浩太