光・風・緑と共に暮らす
— サステナブルな集合住宅 —

サステナブルデザイン|代々木参宮橋テラス

FEATURES01

都市緑地の再構築と
生物多様性ネットワークの拡大

代々木参宮橋テラスは東京都心の閑静な住宅密集地に建つ賃貸集合住宅の計画です。大樹が生い茂る既存敷地は緑豊かな都市公園にほど近く、周辺に溶け込み良質な環境を提供していました。本計画では、その環境を継承する新たなグリーンスポットを同敷地に再構築することとし、外構から外壁まで連続する植栽計画によって高い緑視率を確保することで住宅地の景観向上に寄与することを意図しました。また、中庭の有機的な緑のデザインが外部まで連続して表出することで、中庭と周辺緑地との視覚的な関係性を持たせると共に、周囲の都市緑地と連携し生物多様性のネットワークを拡大する建築計画としました。

緑のネットワーク

都市公園にほど近い住宅地

エントランス外観 外構→建物外壁→中庭へとつながる緑

FEATURES02

季節の移ろいと、
光・風・緑を取り入れる立体緑道

4つに分節された住棟間より卓越風を導入し、卓越風の気流解析により緩やかなそよ風が中庭に流入する計画としました。生み出された7つの吹抜けに面して四季を感じる植栽を配置し、住民のコミュニケーションを誘発する立体緑道をデザインしました。

2・3階平面図

中庭・吹抜けに沿ってフロアごとに最適な樹種を選定

地域の通風シミュレーション

中庭の通風シミュレーション

中庭の平均照度分布シミュレーション(月別フロア別)

植物を選ぶにあたり、4階建ての建物が作る日陰環境の把握が重要でした。環境に合わせた植物の組み合わせを取り入れるため、社内で開発した照度係数判定プログラムに建物モデルを取り込んで照度係数の分布図を作成、得られた具体的な日照条件を参考に採用する植物を絞り込みました。


植栽配置断面図

FEATURES03

中庭の環境に呼応する明るい住居

各住戸へのアプローチは、中庭の吹抜に沿った有機的な形状の立体緑道を経由することで、住戸の防犯性・プライバシーを確保しました。
一般的に日照を得にくい北向き住戸においても、中庭中央から各住戸に伸びる廊下をやや南側に配置しバルコニー側に大きく開く開口を設け、南面からの十分な光・風・緑を取り入れた明るい住空間を実現しています。
住戸玄関脇には扉閉鎖時も通風が可能な自然通風ガラリを設け、運用面でも快適に脱炭素を図れるよう配慮しています。
木製サッシ+ ダブルLow-E トリプルガラスの高断熱窓の採用と外壁断熱強化により、住戸専有部の平均UA 値(※1)0.25W/ ㎡・K を達成し、HEAT20/C3(※2 )基準を満たす外皮性能を実現しました。

※1 住宅の内部から外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値(外皮平均熱貫流率)

※2 室温が概ね18.5℃を下まわらない水準

中庭の自然環境を最大限にとりこむ住戸

南北外壁に換気窓・ガラリを設けたことにより、交差換気が室内各所の換気量増大に効果があることが各住戸のモニタリング観測により確認できました。

片側・交差換気のモニタリング結果(4月)

FEATURES04

サステナブル建築・環境を支える立体緑道の構造

サステナブルな建築・環境を目指した光と風と緑を取り入れる立体緑道の実現のため、最適なボイド形状と柱配置を模索しました。
各住棟をフラットスラブにより緊結することでエキスパンションジョイントを中止し、シンプルな構造でより安全に方位の異なる住棟が互いに耐震性を補完しあい、中庭部分に地震水平力を入力しない計画にしました。

①通路形状の最適化(ATD)
構造形状の合理化を図り、設計与条件を加味して通路形状(ボイド形状)を決定しました。

②柱の最適化(NASTRAN + MODEfrontier)
柱本数と長期荷重最大変形を最小化する位置に柱を配置しました。

FEATURES05

エネルギーの地産地消を促進する
サステナブルな設備システム

オール電化住宅の企画に加えて一括受電方式を採用することで、屋上の太陽光パネルの発電電力を共用部と専有部で利用可能とし、発電電力の自家消費率を高める計画としました。さらに、集合住宅版エネルギーマネジメントシステム(集合住宅版I.SEMⓇ)により、翌日の建物電力需要と太陽光発電供給量を予測し、通常は深夜に湯沸運転する住戸のヒートポンプ式電気給湯器(各戸バルコニーに実装)を、発電電力の余剰が出る日中の時間に合わせて、住戸群ごとに湯沸運転の時間帯をシフトする制御を行っています。

集合住宅版I.SEMⓇ概念図
集合住宅版エネルギーマネジメントシステム(集合住宅版I.SEMⓇ)により翌日の太陽光発電の余剰電力を予測、給湯器の湯沸運転時間を群制御

住棟 断面模式図

建物電力消費量ピークシフト模式図

竣工後11 か月の実績では、ヒートポンプ給湯器が全て深夜に運転したと仮定した場合(集合住宅版I.SEMⓇなし)と比較すると、計測期間における自家消費率(太陽光発電量に対する自家消費電力量の割合)は約12%向上しており、システムによる効果が確認できました。また、当設備システムに加え、建物全体の高気密高断熱化によりB E I(※3) =0.24 を実現し、オール電化の非分譲大規模集合住宅において国内初のNearly ZEH-M(※4 )の認証を取得しました。

※3 BEI : Building Energy Index(住宅で利用する一年間当たりに消費する一次エネルギー消費量)

※4 ZEH-M : Net Zero Energy House Mansion(年間の一次消費エネルギー量の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする共同住宅)

平岡 麻紀
(建築設計)

松岡 竜也
(設備設計)

中川 浩明
(環境設計)

徐 天舒
(環境設計)

赤岩 麻里子
(ランドスケープ設計)

野間 慎司
(ランドスケープ設計)