建物設計のための将来気象データセット

01過去ではなく将来気象に基づく設計へ

これまでの建物は過去に観測された気象データに基づいて計画されることが一般的であり、気候変動を定量的に捉え、その対策を建物の設計に反映するために十分なデータは存在していなかった。そこで、日本全国の2090年までの気象変化をIPCC※1の気候変動シナリオに基づき予測した建物設計用の将来気象データセット「Met.box®(メットボックス)」を開発した。 Met.boxには将来の標準的な気温や湿度のデータのみならず、熱波や豪雨などの数十年から数百年に一度発生する極端現象のデータも含まれている。これまで一般的だった過去の気象観測値に基づく建物計画から、気候変動の緩和・適応・レジリエンスを考慮し、将来に渡って環境性能、快適性、安全性の高い建物を提案することが可能となった。

※1:国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)

02将来の気候変動を定量的に予測し、
対応の精度を高める

気候変動対策の3本柱として緩和(温室効果ガス排出削減により進行を遅らせる)、適応(気温上昇等の気象変化に順応する対策を行う)、レジリエンス(激甚化する自然災害に備え、回復力を高める)を一体的に進めることの重要性が高まっている。Met.boxは建物設計における緩和・適応・レジリエンスの向上に貢献する。

緩和(Mitigation)
― 温室効果ガス排出量削減で気候変動の進行を遅らせる ―

気候の将来変化を予測するために、IPCCによりいくつかの気候変動シナリオが定義されている。過去の気象観測値に基づいた建物計画では、気候変動を考慮できず、経年変化する建物運用時のCO2排出量を正しく評価できない。信頼性の高い気候変動シナリオに基づくことで、建物運用時の実態に沿った温室効果ガス排出量を評価し、脱炭素目標を達成する建物計画の提案につなげる。

適応(Adaptation)
― 気象変化に順応するための対策を行う ―

気候変動に伴う気温や湿度等の変化により、建物の熱負荷は変化する。過去の気象観測値に基づいた建物計画では、その将来変化を予測できず、建物設備が気候変動に適応できない可能性がある。気候変動による将来変化を予測しておくことで、空調機器の選定や増設用スペースの確保、必要な外皮性能などを評価することができる。

レジリエンス(Resilience)
― 激甚化する自然災害に備え、回復力を高める ―

気候変動により、熱波や台風、豪雨、豪雪などの極端現象が激化すると予測されている。過去の気象観測値に基づいた事業継続計画では、過去にないレベルの極端現象が起こる可能性を予測できない。このような気候変動リスクを適切に評価することで、想定外の被害を軽減することができる。

03身の回りの自然環境の変化を定量的に把握し、そこから都市の未来を考える

Met.boxにより、私たちの身の回りで将来起こりえる気候変動の影響を定量的にとらえることが可能になった。夏日、真夏日、猛暑日の増加に伴う熱中症への影響や桜の開花予測日に代表される植生の変化を地域、年代、気候変動シナリオごとに分析することができる。気候変動が建物に与える直接的な影響に加えて、都市で生活する人々や自然環境への影響も考慮し、気候変動を乗り越える未来の建築、都市の在り方について考えていく。


年間の夏日日数の変化

 


400℃理論※2による桜の開花予測日の変化

※2:2月1日以降の日平均気温を積算していき、合計が400℃を超えた日付けを開花予想日とする法則

04将来気象データセット「Met.box」を公開し、
人類共通の社会課題として皆で考える

気候変動シナリオ数・予測期間・地点数の観点で、建物設計のライフサイクル評価に適した将来気象データは、これまで一般に入手できなかった。当社は社会課題である気候変動対策に貢献することを目的とし、「Met.box」やその分析結果を広く公開している。今後の開発と活用に対し、様々な方との連携や協業を目指していく。

データへのアクセス
Met.box利用規約

文責:伊勢田 元、新田 竜(設計本部環境デザイン部)/WEBサイト編集WG