まちと人に
木のぬくもりを届ける

建築設計|タクマビル新館(研修センター)

FEATURES01

都市にも木のぬくもりを届ける木造オフィス

ボイラー・プラントメーカーの本社研修・事務所です。建築主のバイオマスプラント事業は木との関連性もあり、環境配慮事業を推進しているという背景も踏まえ、木をふんだんに活用するオフィスを計画しました。木に囲まれた心地良いワークプレイスを生み出すとともに、まちに対して木を表出することで建築主の理念を体現しながら、都市型木造建築のひとつのモデルとして波及していくことを目指しました。

FEATURES02

内と外にも木を表出する
集成材ダブルスキン

今回のオフィスは全周を集成材によるダブルスキンで構成しました。これにより室内全体が木で囲まれ、光を取り入れた明るい空間となります。

集成材ダブルスキンの架構は、1つのマリオンにアウター側とインナー側の無目を取り付け、その接合は外見には見えない金物で接合する納まりとしました。
すべての接合部位ごとに強度試験を行い、意匠性・施工性も加味して接合方式を決定しています。
また、ダブルスキンの構成は内側をLow-E複層ガラス、外側を透明度の高いフロートガラスとすることで断熱性能を確保しつつ、周囲へと木部が表出するよう工夫しました。
外装二次部材までも木質化することにより、木のぬくもりを表出 する前例のない建築デザインを目指しました。

ダブルスキンは跳ね出した1階の軒天から屋上までの重力換気方式で、中間期にはメンテナンス用の窓を開放することで建物内に自然換気を取り込める計画としました。
重力換気方式のダブルスキンは、熱負荷が最も高い西側において、シングルスキンの場合に比べ、単位面積あたりの外皮熱負荷が77%低減するという結果になっています。
また、ガラス種別やブラインドの設備計算上の数値を採用した場合、日射到達量を97%削減することが可能であり、ブラインドを開放した場合でも集成材無目の庇効果により
73%削減し、室内環境の向上に寄与しています。
木による視覚的な和みと、光と風による身体的な心地よさを感じられるワークプレイスを創出しました。

FEATURES03

耐火集成材柱とCLT耐震パネルによるハイブリッド構造

構造形式は鉄骨造をベースとし、主要な柱を耐火集成材、耐震要素としてCLTパネルを導入したハイブリッド構造としています。耐火集成材柱はファサードとなる北面に立ち並び、建物内外からよく見ることができます。

基準階のプランはアイランドコア型の平面計画としており、コアの鉄骨のフレームにCLT耐震パネルを集約し、その周囲に仕上げとして90mmのCLTを取り付けています。これによりシームレスに繋がった木のコアが全階をつないでいく構成としました。
事務室内部にはCLTが全面に表れ、コア南側のスペースはホワイエとして、利用者のリフレッシュや歓談などに使用され、CLTのコアを中心に様々な使い方が可能となっています。南面は既存本社から外装を通して利用者の活動やCLTのコアが全面に見え、視線的に新旧の建物が一体となることにも配慮しています。

FEATURES04

木を美しく見せることにこだわったディテール

耐火集成材柱はスリムさを強調するため、通し柱に見せる納まりとしました。通常の納まりではX方向・Y方向の梁と取り合い、接合部はRC等で被覆することとなるが、今回の納まりでは大梁を外観から見えない位置にセットバックさせ、接合部は木の化粧型枠に石膏系材料を充填させることで意匠性と耐火性能・耐震性能を両立させています。

※燃エンウッド®:独自の燃え止まり機構により代表的な国産木材を“現し(あらわし)”で 用いることが可能な、国土交通大臣による耐火構造の認定受けた技術

コア周りに配置した耐震CLTパネルは、鉄骨梁とのハイブリッドにすることで木が本来持っている強さを最大限活用できる構造となっています。
CLT耐震パネルの周囲をCLTや木質部材で構成した場合、CLTが高い強度を発揮する前に周辺の弱い部材が負けて破壊してしまうこととなりますが、CLTの周囲を鉄骨架構とする事で鉄骨部材がCLTの高い強度にも耐え、CLTの強さが従来の2倍近く発揮されることとなります。
また、従来の納まりから、引張力を負担する引きボルト及び孔あけを廃止し、CLTの両脇に引張材または柱を設けることにより、CLTの加工を減らすと同時に現しで使用できるよう意匠性にも配慮しました。
※KiPLUS®:従来のRC造やS造の主架構に「木を付加」(キプラス)することで遮音・耐震などの性能を補完する新架構システム

FEATURES05

ウッドチェンジによる脱炭素社会への貢献

今回の計画においては、主要な構造部材は国産材を利用しました。
内装制限適合のために不燃化処理された木は再利用時に有毒ガスの発生が懸念され、リサイクルに向かないことから、内装制限の適用除外を活用し木部は不燃化処理をしていない現し仕上としました。金物を中心に組み上げるハイブリッド木造形式により解体時の木材再利用率にも配慮しました。
構造関係部材、仕上部材あわせて393㎥の木材を使用し、木材の炭素貯蔵量は約285t-CO2分となり、製造時の脱炭素効果については、これまで鉄やアルミで構成されていた部分を積極的に木に置き換えたことにより、約126.5tの鉄骨を木材に転換することができました。これらのウッドチェンジにより、製造時CO2排出量を380t-CO2削減しています。

神田 泰宏

松下 和輝

木南 達也