CIRCULAR MODEL 2050

01これからの私たちが目指す
建設の未来とは?

街中で騒音や粉塵とともにバラバラに粉砕される役目を終えた建築物、中間処理施設で廃棄物の山から分別される建設廃棄物、最終的に埋め立て地で処分される断熱材や接着剤等が付着した混合廃棄物。
これらは仮囲いの中で人知れず行われ、私たちが身の回りの生活の中で排出しているゴミと同様に、どこでいつ誰が処理してくれているのかを知ることはありません。

私たち設計者は循環の始点に立つ当事者として、設計プロセスの中で、どのように線を引き、⼨法を決め、建材を選定するべきでしょうか?

私たちは、これまでの大量生産・大量消費を前提としていた設計・建設・運用・解体そして建材の流通など、各フェーズの概念と役割を見直し、新しい社会と建築のあり方を追求するサーキュラーデザインビルド® を提唱し、「CIRCULAR DESIGN BUILD vol.1 CONCEPT BOOK※1」をリリースしました。

設計者向けの中間処理施設視察の様子

中間処理施設の建設副産物の山積み状況

CIRCULAR DESIGN BUILD vol.1 CONCEPT BOOK

02時代とともに
変化し続けられる建築を目指して

本プロトタイプでは中規模の生産施設/オフィス/教育施設をモデルとして当社が掲げる資源循環型社会における新しい設計・施工のソリューション「サーキュラーデザインビルド®」を具現化した次世代の建設モデルを提案します。
2050年の未来を想定した「CIRCULAR MODEL 2050」では以下の3点を目指しています。※2
①建物が長く使われ続けるための仕組みをデザインする。
②最小限の資源でデザインする。
③将来に向けて解体しやすく多用途に転用できるようにデザインする。

 
設計・施工・竣工後の運用・解体・解体後の資源の活用に至るまで、全てのプロセスにおいて資源の循環を促進します。
建築・構造・設備を構成する部材の再利用率を高め新規資源投入を最小化することで、廃棄物の最小化とエネルギー消費に配慮した計画としています。
また建築自体を「urban mining=貴重な資源の蓄積」として捉えなおすことで、用途の役目を終えた後も資源が街中で循環できる未来を考えています。

建築計画の視点
・4面からアクセスできる配置計画
・将来対応可能な階高設定
・専有部に入らないメンテナンス動線
・将来的な転用を想定した部材選定

構造計画の視点
・柱、梁、床の乾式化による天井高が可変な構造計画
・鉄・コンクリート・木のあらゆる部材リユースを想定した 解体・再組立可能な構法
・杭まで解体・再利用を想定した乾式基礎架構計画

設備・環境の視点
・用途変更までを見越した余裕のあるスペース計画
・モジュール化による更新しやすい計画
・設備機器の容量・物量を減らす環境計画

都市・まちづくりの視点
・様々なスケールでの転用ができるようなるべく小さな単位で部材を構成
・地域で循環しやすい資源を採用

 
 

竣工時点のテナントフロア内観パース

竣工後に使いながらカスタマイズされていくイメージ

建築の寿命はコンクリートや鉄の物質としての耐用年数を迎えるよりも早く、時代の変化ともに要求が変わる床面積や天井高への対応や設備機器の更新の難しさが主な要因とされています。
そこで本プロトタイプでは、分割方法と設備更新から平面を提案しています。
メンテナンス動線を兼用した外周のテラスに面して設備配管シャフトを配置することで、専有部を経由せずアクセス可能とし外部からの更新を可能とします。これによりテナント分割の変更や上下階の接続、将来的な用途変更への対応が可能となります。
更新や改修を前提とした建築計画を考慮した新築の在り方をデザインすることで、機能的でありながらも、カスタマイズしていくことで魅力が増す新しい価値を提案しています。

①再利用可能なピン接合柱 ②リユース・カスタマイズが可能な構造サーキュラーストラクチャ ③再利用・転用可能なCLT(直交集成板)やDLT(木ダボ積層材)による耐震壁 ④廃材を使用した木製耐火被覆(KIPULS) ⑤フレキシビリティを高める木製乾式スラブ ⑥高さや色の異なるリユースサッシ ⑦必要箇所に着脱可能な冷温水による放射空調パネル ⑧レイアウトの自由度を高める設備インフラ ⑨CLTを使った仕上げのいらないOAフロア

03一度生まれた建材を次の時代や別の建築へ

未来に向けて資源として使われ続けるための再利用・転用可能な構造体の技術開発と仕組みをデザイン


構造躯体のリユース

 
 
柱には、プレキャストコンクリートの中に鋼線を通して緊張させる構造を採用し、プレストレスにより柱部材を一体化させています。梁には鉄骨造(高力ボルト接合)を採用し、柱や梁を容易に組立・解体・再利用ができる構造システムの開発を進めています。※3
 
 
 

接着剤を使用しない木質構造の開発

 
 
天井高さの変更やメゾネット化を想定した、簡易解体可能な乾式スラブ。解体時に躯体を損傷させずに柔軟な空間構成を可能とすることで建築の長寿命化に寄与。乾式化により転用可能とすることで、運用時や次世代の建築物の脱炭素に貢献する開発を進めています。
 
 
 

材料単位での資源の再利用
 
 
基礎や床スラブ等には、コンクリート廃材から製造された再生細骨材を再利用。鉄骨梁には既存建物の解体鉄骨を再利用。これらを実現するための仕組みづくりを進め、環境負環境負荷の少ない資源循環型材料の開発を進めています。

使われ続けるための仕組みと再利用・転用可能な構造体のデザイン
梁と設備配管のレベルを分けた階高の設定や、メンテナンス動線とコア配置、将来対応用の吹き抜け位置の設定など、改修時の更新のしやすさや廃棄物の最小化に配慮した建築計画としています。将来的なテナント区画の変更など、様々な用途への転用が可能な仕組みをデザインしています。

①必要箇所に着脱可能な冷温水による放射空調パネル ②将来のテナント区画や天井高さの変更を想定した簡易解体可能な木製乾式スラブ ③メンテナンス動線を兼用した外周部の共用テラス ④更新性を高める天井設備配管と構造梁の干渉を避けた階高設定 ⑤再利用・転用可能なCLTやDLTの耐震壁 ⑥必要最低限の箇所に敷設できる可動デッキ ⑦リユース・カスタマイズが可能な構造サーキュラーストラクチャ ⑧テラス床のグレーチングを転用した手摺 ⑨着脱可能な多目的に使いまわせる外装パネル ⑩建設残土を再利用した版築家具 ⑪高さや色の異なるリユースサッシ ⑫レイアウトの自由度を高める天井吊りコンセント ⑬CLTを使った仕上げのいらないOAフロア

04「スクラップアンドビルド」から、「サーキュラーデザインビルド®」へ

これまでの建設モデルでは、建築物の資産価値は竣工時が最も高く、経年変化とともに資産価値が低下しながら、延命処置として10-20年のスパンで改修や設備の部分更新が行われいずれ解体される建築物のライフサイクルとなっています。
更新を前提とした新たな建設モデルでは、建物利用者によってカスタマイズが可能なため、数年スパンにおいては家具/設備/内装など軽微な改修が行われ、テナントの社員増加対応等で2フロアで借りたい場合は上下階を繋ぐ吹き抜けをつくったり、一部構造躯体を増築・減築したり、技術革新で最新の設備機器をアタッチメントしたり、姿を変えながらカスタマイズすることが楽しくなる建築を目指しています。
一般的な鉄骨造を基準モデル、本プロトタイプを「第1世代モデル」、将来的に行われる増改築・改修の未来を「第2世代モデル」と定義した場合、基準モデルに対して1世代目ではWLC削減60%、2世代目においては80%削減を達成可能になります。

2050年に向けた新たな設計・施工モデル

建物ホールライフカーボン比較 [kgCO2/㎡年]

※1:DESIGN BUILD vol.1 CONCEPT BOOK
https://www.takenaka.co.jp/library/booklet/pdf/cdb01.pdf

※2:Detail246号の図版をもとに作者が作成
Detail246号「サーキュラーデザイン」彰国社 2025年10月
竹中工務店が企画、編集協力・前説執筆メンバーに日建設計・大成建設・清水建設
https://www.shokokusha.co.jp/?p=18291

※3:PCaアンボンドPC柱S梁接合部架構の耐震性能,コンクリート工学年次論文集,第46巻,第2号,pp.1027-1032,2024.6
掛悟史,高津比呂人,立花弘,島田安章
共同研究 オリエンタル白石株式会社


文責:横山 大貴(設計部)/WEBサイト編集WG

横山 大貴
(建築設計)

海野 玄陽
(環境設計)

森 唯人
(構造設計)

軽部 達也
(設備設計)

高力 雄大
(建築設計)

鹿嶋 渉
(環境設計)