伝統建築における設計施工一貫BIM~薬師寺食堂(じきどう)復興事業~

2017年3月3日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:宮下正裕)は、設計施工一貫BIMを薬師寺食堂(じきどう)復興事業(2017年5月竣工予定)に適用しました。
僧侶の食事の場であった食堂(じきどう)は、白鳳時代の木造寺院建築の外観を復元し、布教活動の場とする内部は伝統木造建築の意匠と伊東豊雄氏による現代的な意匠が融合した大空間になります。

図1 BIMモデル 鉄骨造による伝統建築の復元イメージ
図1 BIMモデル 鉄骨造による伝統建築の復元イメージ

「設計施工一貫BIM」の活用

堂宮大工が培ってきた伝統的な技法と鉄骨造という現代技術を「設計施工一貫BIM」で融合させました。
遺構調査や国宝薬師寺東塔など現存する同時期の建造物を参考に作成された復元図を基に、大工の作図技法である規矩術(きくじゅつ)をBIMモデルの作成プロセスに組み込み、寺院建築特有の曲面屋根の反りや各部材の細部に至るまでモデル化しました。意匠・構造骨組・設備を細部までモデル化した「設計施工一貫BIM」によって、建築主、監修者、設計者、堂宮大工、施工者協力会社(鉄骨ファブリケーターなど)が、設計意図や施工確認などについて、活発なコミュニケーションを行ったことで「伝統技術」と「現代技術」を融合させた本プロジェクトの実現に繋がり、生産性向上にも効果を上げました。

図2 規矩術による伝統的な大工の図面
図2 規矩術による伝統的な大工の図面
図3 規矩術による伝統建築のBIMモデル
図3 規矩術による伝統建築のBIMモデル
図4 BIMモデルを投影した作業所での打合せ
図4 BIMモデルを投影した作業所での打合せ
(建築主・監修者・設計者・工事担当者・堂宮大工・鉄骨ファブリケーター)
図5 BIMモデルによる納まりと現物
図5 BIMモデルによる納まりと現物

内部の大空間は鉄骨造により実現できました。白鳳時代の寺院建築の優美な屋根は、構造上軒の懐が狭いため、寺院建築の伝統様式と鉄骨部材との新しい納まりを考える必要がありました。
BIMモデルを用いることにより、狭い軒の懐に鉄骨を納めることができ、木造寺院建築の曲面屋根も再現できました。

図6 鉄骨で再現した曲面屋根の反り
図6 鉄骨で再現した曲面屋根の反り

本プロジェクトのBIMの取組みは、韓国で開催されたBIMの国際会議buildingSMART Standards Summit 2016にて紹介し、繊細な伝統建築を復元する新しい手法として、多くの関心を集めました。

プロジェクト概要

建物名称 薬師寺食堂
建築主 宗教法人 薬師寺
建築地 奈良県奈良市西ノ京460番地
建物用途 寺院
階数 地上 1階
構造種別 波形鋼板耐震壁を有する鉄骨造
延床面積 649.79 m2
建物高さ 14.36 m
監修 鈴木嘉吉氏(元 奈良文化財研究所所長)
食堂内仏画 田渕俊夫氏(東京藝術大学名誉教授)
復元基本設計/実施設計監修/監理監修 株式会社 文化財保存計画協会
内部基本設計/実施設計監修/監理監修 株式会社 伊東豊雄建築設計事務所
構造・設備設計/実施設計/監理 株式会社 竹中工務店
施工 株式会社 竹中工務店
竣工年月日 2017.5(予定)
完成予想パース(外観)

完成予想パース(外観)

完成予想パース(内観)(伊東豊雄建築設計事務所)

完成予想パース(内観)
(伊東豊雄建築設計事務所)