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人体・環境への影響を考え、殺虫ではなく建築的アプローチで行う防虫対策を実施
~“虫を生かす防虫”でポーラ美術館では、侵入昆虫が対策以前と比べ半減~

2008年10月28日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:竹中統一)は、IPM(Integrated Pest Management)という考え方を取り入れ、殺虫ではなく、各昆虫が侵入しにくい設計や防虫機器の効果的な配置をするといった建築的なアプローチによる“虫を生かす防虫”対策を実施して成果をあげています。

自然豊かな箱根小塚山の麓に立地し、自然環境との調和を図っているポーラ美術館では、2004年より館内への各種昆虫の侵入防止対策を実施し、その効果について検証しました。①外部より侵入する昆虫の種類特定、②侵入しやすい昆虫種類データをもとに建築的な防虫対策を実施、③防虫対策効果の検証、という3段階で取り組みました。検証の結果、対策前に比べ、施設全体で昆虫の侵入が約半分に抑制されていることを確認しました。ポーラ美術館では2008年も継続して更に適切な清掃や昆虫モニタリングを行うことで、最適な展示・収蔵環境を維持していきます。

IPM(Integrated Pest Management)について
主に薬剤を使用した殺虫による昆虫(害を及ぼす昆虫)の根絶を目指すのではなく、多様な防除手段を組み合わせ効果的に用いることによって、薬剤の使用を極力おさえ、害虫の生息数を許容できる範囲内に抑え、維持する管理手法。1960年代にアメリカで提唱された考え方で、農業生産における病害虫防除の分野で発達した。建築分野では、近年の環境保全への世論の関心の高まりとともに、新たな技術群が加えられ、「新しい防除体系」として展開が期待されている。


<美術館の防虫にもIPMの考え方>

ポーラ美術館
ポーラ美術館(2002 神奈川)
設計:日建設計
施工:竹中工務店
延床面積:8,098 m²
構造:鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造/地下3階、地上2階
写真:石黒守

一般的に昆虫が侵入してきたときの対処方法は殺虫ですが、世界的に殺虫剤などの化学薬品による人体への影響や地球環境への配慮から、薬品の使用が極力控えられるようになっています。
海外の美術館では、美術品の変色や変性などの影響や人の健康被害を危惧し、薬剤使用しない病害虫抑制手法、例えば、低酸素処理による美術品の殺虫などが増えてきています。
このような背景から、農業や食品関連の施設などで主流となりつつある、薬剤の使用を最小限とするIPMを美術館でも検討するようになりました。


<ポーラ美術館における昆虫侵入対策の概要>

ポーラ美術館は自然環境に恵まれている一方、人の出入りや物の搬出入が多いため、昆虫が侵入しやすくなっており、その対策が求められました。


■外部より侵入する昆虫の種類特定(第1段階の取り組み)

来館者入口など館内に通じる開口部で侵入昆虫を捕獲し、侵入経路や種類を分析しました。その結果、昆虫の主な侵入経路は搬出入口と通用口であること、侵入昆虫は約90%が飛来性昆虫であると特定しました。


■侵入しやすい昆虫データをもとに各侵入箇所での防虫対策を実施(第2段階の取り組み)

飛来性昆虫が大半であることから、紫外線カットの照明に置き換えることや、紫外線カットフィルムをかぶせるなどして、飛来性昆虫の強い誘引源である照明の紫外線カットを実施しました。搬出入口では、歩行性昆虫の侵入対策として、当社と(株)ニックスとで共同開発した昆虫忌避部材「バグバンパー」(特許申請中)を採用しました。


■防虫対策効果の検証(第3段階の取り組み)

第1段階、第2段階の取り組みの結果、昆虫の侵入が、飛来性昆虫の多い通用口付近ではその約5分の1、歩行性昆虫の多い搬出入口ではその約10分の1、施設全体では約半分に減少しました。周囲の環境に対して殺虫剤などを使わなくとも、建築的な対策でも満足できる結果を得ることが検証されました。

当社では、文化財公開施設の最適な環境の確保に向けて、企画から設計及び施工にわたる総合的なバックアップを行っています。文化財を守るための、汚染物質を出さない技術(材料選定評価技術等)、汚染物質を除去する技術(空気浄化技術)をはじめ、今回の施設内への昆虫侵入を抑制する技術など、多岐にわたってノウハウを蓄積しています。施設内への昆虫侵入対策は美術館だけではなく、食品工場、医薬品工場、病院、研究室などの実績も豊富です。このような当社の取り組みは、防虫エンジニアリングという新しい言葉を生み出し、また、財団法人エンジニアリング振興協会にも評価され、2007年には、「第27回エンジニアリング功労者賞」を受賞しました。

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