中山視覚福祉財団 神戸ライトセンター

オフィス然としてつくる視覚障がい者支援ボランティア団体の拠点
-視力を失いかけている人々の感情に寄り添う提案・障がい者支援拠点の新たなかたち-

  1. 兵庫県の視覚障がい者支援ボランティア団体の拠点となり、就労支援や盲導犬による歩行訓練、点字、朗読などの社会参加のための支援を行うオフィスです。
  2. 病気などで視力を失いかけている人が、まだ見えているうちに相談に来てもらいたいという建築主の希望をもとに、建築に出来ることは何かを模索したプロジェクト。
  3. 一般的なオフィスではなく、いわゆる障がい者のための福祉施設でもない。オフィス然としていることが特長です。
  4. 建築主の想いと、支援団体・当事者の感情を汲み取り、対話を繰り返すことで支援拠点の新たなかたちが実現しました。
設計担当者のコメント

この建物が、訪れる人にとって最後の景色になるかもしれない。空間の形状や色づかいを心に留めたい。

大阪本店設計部 野村直毅

成長するオフィス
~利用者の状況に応じて必要なものを付加・重要な機能はデザインに溶け込ませる

視覚に対する基本性能を備え、オフィス然とし、利用者によって異なるニーズは運用しながら必要なものを足していく建物となりました。

就労支援の場であるガラス張りの1階カフェは、これまで目に触れないよう計画することが当たり前であった障がい者の活動の場を、まちに開き、オープンな場として実現しました。

光に向かう帆船をイメージした印象的な外観をつくる1周120mの回遊バルコニーは、歩行練習ができるだけでなく、手すりが庇としてバルコニーの足元に落ちる光と室内に入る直射日光を制御。シミュレーションを行い、視覚に入る明るさをコントロールする機能をもたせました。

サインは、視認性を高めるため、色覚異常の見え方をとらえた配色を選択。違和感なくオフィス然を保てるよう、単純に文字を大きくするのではなく自然モチーフのなかに数字をデザインしました。

対話により実現したオフィス然とした基準階(2階ロービジョンフロア)

・視力を失いつつある人、またその家族などが、最初に訪れる場所。見えない、見えにくい状態になると、歩行や読み書きが難しくなったり、仕事を続けることができなくなったり、生活を支援する機器の紹介よりも心のケアが重要なケースもあります。
・設計者は、はじめて相談に訪れた人が、ここで何をするのか、何ができるのかを見渡せることで様々な不安を軽減する計画を提案しました。

中央は壁を立てず低い本棚などの家具で空間を仕切り、見通しがよい計画。ボランティア団体同士のコミュニケーションをデザインしました。

所在地:兵庫県神戸市
竣工年:2021年
延床面積:約5,700m2
建築主:中山視覚福祉財団
設計:竹中工務店
施工:竹中工務店