ビッグデータ、AIによりスマートビルを推進するデータ・プラットフォームの新機能を開発~「コモングラウンド・リビングラボ」にて適用し、実証実験を開始~

2021年5月19日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)は、スマートビル実現のため新機能を有したデータ・プラットフォーム※1である「ビルコミュニケーションシステム®」(以下、ビルコミ®)を開発し、「コモングラウンド・リビングラボ※2」(以下、CGLL)にて実証実験を開始しました。ビルコミ®の導入によって、ビッグデータの取り扱いやAI(Artificial Intelligence)適用など、多様な要求を持つスマートビルのユースケースに対応することができます。なお、本開発は、2019年度の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」により実施しました。

  • ※1多様なシステムのデータのやり取りを仲介するとともに、過去のデータ保存を担う
  • ※2人とロボットが共に暮らす未来のプラットフォーム実現を目指す実験場 https://www.cgll.osaka/

ビルコミ®の開発

デジタルトランスフォーメーションが進む中、クラウドやIoT(Internet of Things)などを活用し、高度な建物環境の制御や運用管理等を可能にするスマートビルの実現が求められています。当社はこれまで、自社開発してきたビルコミを用いて、スマートビルを実現するための研究を推進してきました。この度、従来ビルコミが備えていたリアルタイムのモニタリングや遠隔制御機能に加え、ビッグデータへの対応、BIM(Building Information Modeling)で作成された属性データとの連携、インターネットの標準仕様に準拠したAPI※3提供のための機能を開発しました。これにより、多様なユースケースへの対応が可能になるとともに、ビルコミを用いたサービス開発に要するコストを低減することができます。また、ウェブ、ゲーム、ロボットの開発会社など、多くの開発パートナーの参画が容易になるため、スマートビルのサービス開発の可能性を更に広げることができます。
今後は、ビルコミの社会適用を進めることで、省エネと快適性を両立させる高度な建物環境制御の実現、ZEBや複数棟制御をはじめとする高度な電力デマンド制御等の実現や、AI・ロボットなどの多様なシステムとの連携による建物管理の高度化・省人化に取り組んでいきます。まずは、多くのパートナーとこれらのサービスを共同開発し、ニーズの変化に応じたメニューの拡大を進めていきます。並行してお客様への提供体制の整備を進め、2021年度中にサービス提供を開始する予定です。さらに、都市OSなどとの連携によって、スマートビルに留まらない、スマートシティのソリューション展開を進めていくとともに、国際標準化を目指します。

  • ※3Application Programming Interface。ソフトウェア、システム間で連携する際の接続仕様

コモングラウンド・リビングラボへの展開

2020年12月11日にセミオープンを迎えた、CGLLのプラットフォームの一部としてビルコミを適用し、異業種コラボレーションのための実証実験を開始しました。
CGLLは、照明・空調システムなどの設備に加え、施設内のモニタリングが可能なカメラやLiDAR※4といった多くのセンサが予め備えられた空間です。コモングラウンド※5の目的により、物理空間と仮想空間がリアルタイムかつシームレスにつながり、人間とロボットが共通認識を持つことが可能な未来の空間を創りだすことを目指しています。
当社はビルコミを用いて、CGLLにおける設備やIoTなどのデータ取得と保存、ゲームエンジンを用いて構築したデジタルツイン・アプリケーションを介した設備の遠隔設備操作(図1)、ロボット連携などの実証を担います。

図 1 デジタルツイン・アプリケーション
図 1 デジタルツイン・アプリケーション
  • ※4光を用いたセンシング技術の一つ。計測結果として点群データなどが得られる
  • ※5(株)gluonのパートナーの豊田啓介氏が提唱する概念。大阪・関⻄万博が目指す「Society5.0」実現に向けた汎用的なインフラとなりえるプラットフォーム。「人とロボットが共通認識を持つ未来社会をつくる」ことを目的としている

ビルコミの構成要素

ビルコミを用いたスマートビルは以下に示す3つの要素から構成されます。PaaS※6を用いて構築されており、ランニング費用を抑えながら、高い可用性を実現しています。なお、ゲートウェイや、API接続のためのサンプル・ソースコードは開発パートナーに提供開始しており、ビルコミを利用した開発を容易に始めることができます。

  1. ゲートウェイ
    建物内で発生した設備システムやIoTのデータをビルコミのデータ受信部に送信、またはビルコミからの指示を受けて、建物内のサブシステムに伝達します。
  2. データ・プラットフォーム
    データにアクセスするためのAPIを提供しており、WoT(Web of Things)※7をはじめとするオープンな技術仕様に基づいて設計と実装を行っている。APIを利用するにあたっての、細かな認証の設定も可能です。
  3. アプリケーション(サービス)
    スマートビルの機能を提供するソフトウェア。ゲームエンジンを用いたデジタルツインや、AIによる設備制御などがあり、開発パートナーにより提供されます。
図2 ビルコミのシステム・アーキテクチャ
図2 ビルコミのシステム・アーキテクチャ
  • ※6クラウドのサービスプロバイダーがサービス提供しているシステムのインフラ機能。データベースやウェブサーバなどのサービスがあり、利用した時間毎、データ量毎に従量課金となることが多い
  • ※7W3Cで標準化が進められているIoT機器の相互運用のための接続仕様