-メガソーラー発電・
蓄熱システム-
エネルギー需要が大きく変動する大規模施設では、省エネと安定した電力利用の両立が課題となります。そこで注目されているのが「太陽光発電」と「蓄熱」を組み合わせたシステムです。
昼間に余った電力を熱として蓄え、冷暖房や給湯に活用することで、電力ピークを抑えつつ再生可能エネルギーを効率よく使い切ることができます。本記事では、展示ホールで実装されたメガソーラーと水蓄熱槽の活用事例を交えながら、仕組みや導入効果について解説します。
展示ホールの屋上に1MWのメガソーラー太陽光パネルを実装し、大規模展示場の省エネとデマンドマネジメントに貢献しています。
1MWの太陽光パネル容量は、展示ホール1日の使用電力に対し、平均50%の電力供給を可能としています。(中間期ベース)
太陽光パネルの余剰発電電力と水蓄熱槽による負荷平準化
昼の太陽光パネルの余剰発電電力により、高効率ヒートポンプチラーによる水蓄熱槽への蓄熱運転を行い、冷房空調負荷に利用する運用を可能としました。メガソーラー太陽光発電と蓄熱槽1,000㎥の大規模なコンバインド活用を行っています。
ガス熱源、水蓄熱槽、創エネによる電力デマンド削減
電気・ガスのベストミックス熱源の利用、水蓄熱槽の活用、メガソーラー太陽光による発電により、79%の大幅な電力デマンド削減を実現し負荷平準化に貢献しています。
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熱源システム -
電力負荷平準化効果
光・風・水・熱源の最適運用による省エネルギー計画
イベントの種類やホールの利用率などにより、大きく変動する日毎の負荷パターンに対し、①光,②風,③水,④熱源の最適運用による省エネルギー・負荷平準化を行い、国内外に脱炭素化を展開可能な環境配慮型展示場を実現しました。
大規模展示場における環境性能
大規模展示場の一次エネルギー消費量の計画値は、BEI値0.45(55%削減)、国内展示場初となる「ZEB Ready」を達成しました。また、その後の運用実績(イベント)にてBEI値0.14(86%削減)、実績(2020年全日分)にてBEI値0.07(93%削減)となり、実績値としても国内展示場初となるNearly ZEBに到達しています。
またCASBEE評価結果は、BEE4.7にてSランクを達成しており、環境配慮型の省エネ展示場として、国内トップクラスの省エネ性能を実現しました。
太陽光発電と蓄熱の仕組み
太陽光発電は太陽の光をパネルで受け取り、そのエネルギーを直接電気に変換する仕組みです。発電した電気は照明や家電などにそのまま使えるため、身近でわかりやすい再生可能エネルギーの代表といえます。
一方で蓄熱は、電気をためるのではなく「熱」としてエネルギーを貯める方法です。たとえば、昼間に余った太陽光の電力を熱に変えて水蓄熱槽などに蓄えておけば、夜間や日照が少ないときでも暖房や給湯、冷房にその熱を利用できます。
太陽光発電×蓄熱が注目される理由
太陽光と蓄熱を組み合わせることで、余ったエネルギーを無駄にせず、冷暖房などに活用しながら需要変動を抑えることが可能です。ここでは、太陽光発電×蓄熱が注目される理由を3つの観点から解説します。
昼夜の電力需要ギャップを埋める役割
昼間は日差しが強く、太陽光発電が最大出力に近づくと、その電力だけで建物の需要をまかなえる場合もあります。しかし、日が沈むと発電量は急に落ち込み、電力の供給と需要のバランスが崩れやすくなります。
そこで役立つのが太陽光発電と蓄熱の組み合わせです。昼間に余った電気を熱に変えて蓄えておけば、夜間や天候の悪いときでも冷暖房の熱源として利用できます。電気として貯める蓄電池と比べ、熱として使う方が効率が高い場合もあり、建物の運用に適した方法といえます。
蓄電池との違い
蓄電池は、発電した電気をそのまま貯めておき、必要なときに再び電気として使うための装置です。一方で蓄熱は、一度得た電気を「熱」に変えて蓄え、冷水・温水や冷風・温風などの形で活用できます。電気を直接蓄えるのではなく熱として利用することで、コスト面で有利になる場合があり、特に冷暖房の需要が大きい建物では効率化に役立ちます。
また、蓄熱を用いたシステムは蓄電池と比べて寿命が長く、メンテナンスの負担が少ないこともあります。導入する環境や使い方によっては、蓄電池よりも安定して利用でき、建物運営における省エネやコスト削減の手段としても有効です。
冷暖房負荷の大きい建物に適したソリューション
商業施設や展示ホール、オフィスビルのように、多くの人が集まる建物では、冷暖房の必要量が一日の中で大きく変動します。そのため、ピーク時の電力使用を抑えながら効率的にエネルギーを使う仕組みが求められます。
太陽光発電で生まれた余剰電力を蓄えておき、需要が高まる時間帯に熱エネルギーとして利用すれば、冷暖房に使う電気の量を減らせます。ピーク時の負担を和らげられるだけでなく、建物全体の電力利用を安定させることが可能です。蓄熱で冷暖房の熱需要をまかなえれば、電力インフラへの依存を軽くしつつ、運営コストやエネルギー効率の改善にもつながります。
太陽光発電と蓄熱の導入効果
近年、再生可能エネルギーをただ発電するだけでなく、効率よく使い切る工夫が注目されています。ここでは、太陽光発電と蓄熱の導入効果を、電力ピークの削減、環境貢献、そして長期的なコスト面という視点で解説します。
電力ピークの削減
太陽光発電と蓄熱を組み合わせると、建物で使う電力の「ピーク」を抑えることができます。昼間に発電して余った電力を熱として蓄えておき、夕方以降の需要が高まる時間帯に冷暖房などへ利用すれば、電力使用の集中を防ぐことができます。
こうした工夫によって、契約上の最大電力を下げられる可能性があるでしょう。電力の基本料金は最大電力に基づいて決まるため、ピークを抑えれば基本料金そのものが安くなり、結果的に電気代の削減につながります。
CO₂排出削減と脱炭素への貢献
太陽光発電は、発電時にほとんどCO₂を排出しない点が大きな特徴です。例えば、火力発電では1kWhあたり約690g以上のCO₂を出すのに対し、太陽光発電ではおよそ17〜48gにとどまるとされています。
| 種類 | 温室効果ガス排出原単位 |
|---|---|
| 化石燃料火力発電全体の平均 | 約690g-CO2/kWh |
| 太陽光発電の平均 | 約17~48g-CO2/kWh |
参考:国立研究開発法人産業技術総合研究所|AIST太陽光発電技術開発
さらに、発電した電気をそのまま使うだけでなく、余った分を蓄熱として貯めて活用すれば、無駄を減らし再生可能エネルギーをより有効に利用できます。
長期的なコスト削減(省エネ+光熱費削減)
蓄熱システムを導入すると、太陽光発電で余ったエネルギーを熱として貯め、冷暖房や給湯に有効活用できます。電力を購入する必要がある時間帯を減らせるため、電気料金を抑えることが可能です。
また、蓄電池と比べると、蓄熱設備は導入コストや容量あたりの費用で有利になる場合があります。つまり、初期投資を大きく抑えながらも、長期的な省エネ効果を得られるため、光熱費の節約とともに収支の改善につながります。
まとめ
太陽光発電と蓄熱の組み合わせは、再生可能エネルギーを無駄なく活用し、冷暖房負荷の大きな建物でも電力需要を安定させられる有効な手法です。昼間に余った太陽光を熱として貯め、夜間や需要の高い時間帯に利用することで、電力ピークを抑え、基本料金の削減やCO₂排出の低減にもつながります。
さらに、蓄電池に比べて導入コストや耐久性の面で有利になるケースもあり、長期的な光熱費削減の手段としても注目されています。
