TCFD提言に沿った情報開示

気候変動に関連する当社グループ事業への影響

竹中グループは、「竹中グループCSRビジョン」に基づいて社会課題を解決し、サステナブル社会を実現するため、重要課題(マテリアリティ)を2022年に見直して5つのカテゴリーで設定しています。その1つが「環境との調和」であり、脱炭素・資源循環・自然共生を統合的に進めることで、環境に配慮した建築・サービスの提供や環境負荷低減に取り組み、サステナブルな社会の実現を目指しています。

当社グループは、2019年に気候変動による事業影響、リスク・機会の分析、および戦略への反映の検討を開始しました。2021年1月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」 の提言に賛同し、関連情報開示を行っています。

緒言

近年の日本では、気候変動による異常気象で大型台風や集中豪雨が頻発しています。竹中グループは超高層建物や大規模地下施設を多く手がけており、これらの気象変動による影響を重大なリスクと認識しています。気温上昇や自然災害の激甚化は、建設現場での熱中症リスクや工期遅延などの問題を引き起こす可能性があります。
また、建築物省エネ法の改正によって、建築物の省エネルギー性能向上が強く求められています。建物の運用段階における温室効果ガス排出量は、建物の耐用年数を通じてお客様の事業における温室効果ガス排出量に大きく影響します。
さらに、建設資材の製造時の温室効果ガス排出量も大きく、建物のライフサイクル全体での環境負荷を考慮する必要があります。自社事業においても、建設重機の燃料や電力使用による温室効果ガスの削減が課題となっています。
当社グループは、2019年に気候変動による事業影響(リスク・機会の分析)・戦略への反映の検討を開始しました。2021年1月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しています。気候変動に関連する事業への影響の分析を行い、環境・サステナビリティ情報開示を進めています。

ガバナンス

気候変動対応に関するガバナンス・リスク管理体制は図1に示す通りです。社長が委員長であるサステナビリティ中央委員会は経営幹部で構成されており、下部に設置されている地球環境専門委員会からの上程に基づいて気候変動に関わる事項について審議し、グループ全体の戦略策定や実施状況の確認を行っています。地球環境専門委員会はサステナビリティ分担役員を委員長としています。それぞれの委員会は年3~4回開催されます。経営計画に関連する重要事項は、経営計画中央委員会での審議を経て取締役会で意思決定し、その執行を社長に委ねています。
また、サステナビリティ全般を網羅的に検討するため、地球環境専門委員会の下部に、本社の室・本部と主要本支店・事業本部及び主要グループ会社のメンバーで構成する全社・グループ横断ワーキンググループが設置されています。

当社グループの気候変動対応に関するガバナンス・リスク管理体制図
当社グループの気候変動対応に関するガバナンス・リスク管理体制図

戦略

2019年に、地球環境推進ワーキンググループにおいて、外部有識者の意見も参考にしながらシナリオ分析を検討し、サステナビリティ中央委員会での審議を経てリスク・機会を特定しました。シナリオ分析は2024年にあらためて見直しています。分析にあたって、IEA(国際エネルギー機関)NZEを参照シナリオとした1.5℃シナリオ、及びIPCC(気候変動に関する政府間パネル)SSP5-8.5を参照シナリオとした4℃シナリオの2つのシナリオを設定しました。
分析にあたって、2024~2026年を短期、2027~2030年を中期、2031~2050年を長期とする時間軸を設定しています。 シナリオ分析の結果、7つのリスクと5つの機会を特定し、その財務的影響について表1の通り分析しています。


シナリオ分析の結果特定したリスク・機会の項目、その財務影響の時期とレベル、及び対応策の一覧
シナリオ分析の結果特定したリスク・機会の項目、その財務影響の時期とレベル、及び対応策の一覧

リスク管理

気候変動対応に関する目標値と具体的な対応策を「環境戦略2050」として設定しています。本戦略は、サステナビリティ中央委員会で審議し、中期経営計画2030に組み込まれ、経営計画中央委員会での審議を経て取締役会で決定しています。また、その決定によって、対応策と目標値は各部門の3か年計画に展開され、取り組みの進捗は地球環境専門委員会の傘下に設置している全社・グループ横断ワーキンググループの活動を通じて管理されています。
全社的なリスク管理のため危機管理委員会が定常的に年2回、及び重大リスクの発生時など必要に応じて臨時で開催されています。気候変動に関するリスクや機会をはじめ、事業に関連する品質、安全などのリスクを中心に審議しており、重要事項は取締役会に報告して意思決定しています。


指標と目標

2019年12月にCO2削減長期目標を設定、2021年3月には目標値を引き上げ、2050年にCO2排出量100%削減を目指しています。また、2022年12月に竹中グループ(連結)全体を対象とした目標に拡大し、さらに、Scope1,2の2030年目標について、2024年3月にSBTiの認定を取得しました。表1に目標値と2023年の実績を示します。


竹中グループCО2削減目標と実績
竹中グループCО2削減目標と実績
  • 注)排出量全体としてはロケーション基準で算定しています。今後は、マーケット基準での算定をおこなっていく予定です。